2015年5月25日月曜日

弱い季節




水曜日は気温が上昇したが、夜に激しい雨が降り、外はかなり寒くなった。すごい雷が鳴って、一旦止んでまた大粒の雨がボタボタッと断続的に降り、外に出ていた身としては、うっとうしいことこの上ない。天候と気温の急激な変化に頭痛がした。ヘロヘロで帰ってきて何か腹に入れようとチロリアン食べて、バファリンを飲んだ。博多生まれの友・チロリアン。いや頭が痛かった。

そもそも私は、カーッと暑くなる季節がひどく苦手である。まず汗をかき始めると、鼻がおかしくなる。アレルギー性鼻炎でくしゃんくしゃんいうし、まだ気温が30度を超えないのに屋内には冷房が入るので余計である。だから、外に出るにも半袖だけでは身体が冷えそうで不安になり、つい下着のTシャツを着てしまうので、出来る格好が限られる。(笑)

次に、夏バテがやってくる。食欲が無くなる。身体が慣れるのに時間がかかるのだ。飲料も多く飲んでしまうから、腹具合も変になる。

長くても2週間くらいあれば身体が慣れてまたモリモリ食べられるようになるのだが・・それまでが結構辛い。今日のように、頭痛も多くなる。

九州生まれだけど、福岡は日本海側で冬は関西より気温が低く雪も降るから、どちらかというと寒い方が耐性がある。トシとってだーいぶ寒がりにはなっているが。まだ夜なんかは湿度が低く半袖では肌寒いくらいだが、これが6月に入るとムシムシしてくるんだなあ。ああ夏はどちらかというと嫌い。マリネラのような常春か常秋の国に行きたい。

話変わってハリルホジッチ。日本代表監督のヴァヒド・ハリルホジッチのことである。

ものすごいエネルギッシュに動き、ブラジルW杯の敗因から始め、日本に何が足りないかを分析し、体脂肪まで管理する。選手をポジション別に解析したかと思ったら、ついに「Jリーグはレベルが低い」と断じた。

スカッとした感じである。よくぞ言ってくれた。ドイツで成功したり、ビッグクラブに行く選手が出て来たことから、また歴代監督の、アジリティーと献身性に溢れる日本選手、というイメージを聞いていたから、日本人がほのあったかい自信を持っていたところを、バッサリと斬った。その通り!

興業もファイナンスフェアプレーもとても大事だが、なによりサッカーのレベル向上が大事なのである。議論はいつも活発化させておかねばならない。ザッツオール。

息子が4泊の自然学校から帰ってきた。アニメもゲームも自分のベッドもない生活。食事は好きでないものばかり出た、とこぼしていたが、家に帰ってパパの身体の上に身を横たえる。おいおい、重い。自分はこんなことしてなかったと思うのだが、普段憎まれ口をきいていても、やっぱ小学生はまだまだかわいいもんなんだな。ご飯食べて、ソファで寝てしまったので、毛布と布団かけて、そのままにしておいたら朝までコースだったようだ。

翌日は朝から風呂入って、好きなだけアニメゲームしていた。私も完全休養。夜はなでしこジャパンの試合を観た。噛み合わない部分もあり少々心配だが、取りこぼす事なくまずは確実にグループリーグを突破してほしい。

前回は決勝戦が本当にものすごいゲームだった。私は準々決勝から見始めて、初めて澤以外のなでしこジャパンメンバーの名前を覚えた。ついに4年。実績では男子より強い、なんてったってワールドカップのディフェンディングチャンピオンなんだから、胸を張って今回も戦って欲しい。

さて、久々の連休も終了。いよいよ蒸し暑くなるかな。

2015年5月18日月曜日

甘く見ていた





火曜日は台風6号が近畿をかすめて通り抜けた日。日中から雨が降り出し、近畿は20時ごろ最接近。しかし雨のピークは18時。残業もあったので19時に会社を出た。確かに弱くはない雨だけど、電車もバスも遅れていないし、バス乗るときは雨足も弱まってるように感じたので、バスを降りるまで、台風、拍子抜け、とか思っていたら、激しい雨。おまけに山道は強風。嵐である。
 
傘を持って行かれないように風に向けて傘をさすが、信じられないくらいビニール傘のビニール部分が内側に膨らむ。上空では冬によく聞かれるゴウゴウという音が鳴ってるし、雨は叩きつけるし、こりゃ台風だ。そのうちに傘の骨が風の圧力に耐えかねくにゃんと折れてしまった。まだ傘自体の形は崩れてなくて、なんとか雨を凌ぎながら、あと少し、もう少しと歩き、濡れねずみになって家に着く。台風は湿った空気を運んできたようで暑い。いやー大変な目に遭った。甘く見てた。完全に。
 
晩御飯の際、汗をやけに多めにかくし、呼吸も苦しくなって過呼吸っぼい感じがした。どうも息が上手く出来ない。何回汗をバスタオルで拭いても額にはすぐ滲んでくる。息子は長袖のパジャマを着ていてまったく暑くないという。あれ、と晩御飯食べるのをやめて涼しいソファでじっとすることにした。我が家で、パパが晩御飯を食べないどころか、残さず完食しないことは大変珍しい事なので、息子はちょっとびっくりしていた。

しばらくしたら身体が冷えてきて落ち着いた。まだ家の中が涼しい季節で助かる。晩御飯を完食。食べながら考えた。おそらく、予想外の事態に必死半泣きになって帰ってきて、緊張状態が続いていたのと、身体が熱くなっていて体温調節がうまく出来なかったのが重なったんだろう。正直息が出来ない、と思い小パニックを起こしそうになったので、落ち着いて対処できて良かった。甘く見ていた。

風が冷たい季節も過ぎつつあり、金曜日には半袖デビュー。ちょうど心地いい。木曜日は晴れの予報が突然の雨にびっくりした。夏にはありがちな天候。ぼちぼちだな、と思う。

雫井脩介「つばさものがたり」読了。面白かったし、男の子を持つ身、昔を思い出したが、主人公が余命わずかなガンで、自分まで身体のどこかが悪いような、そんな気分になった。私は影響されやすい。(笑)

翌朝も雨。お仕事で、車で伊賀上野へ向かう。西名阪道は山中なので白くけぶっている。午後には晴れる予報だったが、時折小雨がぱらつく、厚い雲がかかっている。なにより寒い!4月に戻ったような寒さ。山間部だからかな。甘く見ていた。(笑)一杯飲んで、酔っ払って帰る。速攻で風呂入って上がったら、もう目蓋が自然と降りてくる。22時30分就寝。

翌日曜日は5時30分起き。晴れてよく照ったが、湿度がかなり低く風がさわやか。一日中外仕事でやっぱちょっと疲れる。車で爆睡。帰るともう眠い。ご飯食べてすぐベッドで寝る。

まだこの季節の出張は気持ち良く楽しい。まあ今回は日程に余裕もあったし。これ以上暑くなるな〜!ムリだっちゅうの。

2015年5月11日月曜日

忙土日





土曜日朝早く起きて東京行。朝早いとバスが無いのでよくタクシーを頼むが、タクシー会社も土日のその時間帯は出ている車が無くて、頼みは某アルファベット2文字のタクシーだけ。ここも、その時配車出来ない可能性もあります、という注釈付き。これまで1回しかキャンセルされたことが無いので安心していたら、今回も当たってしまった。

早めに連絡してくれ、と言ってあり、約束時刻の15分前にキャンセルの知らせ。早々に出て歩く。最寄りの駅まで普通に歩いて40分のところをチョー早足で24分で到着した。やれやれ一服、と思ったらプルルル・・という発車音が。さらに走った。急がないと新幹線が出てしまう。よたよたとホームをなんとか早足で歩く。この時間は昇降客が少ないから待ってくれている。

ところで阪神間には北から阪急、JR、阪神の各電車が東西ほぼ平行に走っているが、最寄り駅は阪急で、唯一会社の近くに駅が無い。途中乗換駅も無いので、一番近い駅で降りて10分歩いてJRへ。歩いて歩いてようやく人心地。一旦会社に寄って相方と待ち合わせの時間ギリギリである。駅から会社へまた早歩き。着いてすぐ出発、であった。

最悪相方に、先に新大阪行っとくわ〜という方法はあるが、間に合っちゃったから仕方がない。なんとか面目も保てるし。

で、東京でひと仕事。行き慣れたところ。涼しくて助かる。上着はそろそろ暑い。帰りに遅めの昼ご飯を駅前で食べようとしたら行列。しかし喫煙席希望の客は少なく、早く入れてラッキー。ナスのナポリタンセット食べて、この日は帰る。早めだったし、土曜日の新大阪止まりの新幹線はガラガラだった。カトリーヌ・アルレー「疑惑の果て」読了。ドロドロだった。

帰りのJR。私が若い頃、ある駅の近くに、「中華料理 ちゅー」という目立つ看板の店があった。毎日通勤の車中でその看板を目にしていた。いつか寄ってみたいもんだと思ってたが、入社10年目くらいに、会社のバスケット同好会の活動がたまたまその駅の近くであり、初めて皆で行った。普通の中華屋さんだったけど、ちょっとだけ感慨もあった。東京へ転勤して帰ってきて完全に忘れていたが、きょうふと思い出して見ると、焼肉屋に変わっていた。目立つ看板は、ネオンがグレードアップされてそのまま活用されていた。まあ、初めて見てからもう20ウン年だもんなあ。そりゃそうだ、と少し寂しくなった。それだけ。

朝早いから、と昨夜は私は息子と別の部屋にあるベッドで寝たが、夜中に起きて潜り込んでくる。ま、結局一緒なんだよね。

日曜日は写真の伊賀上野。大阪から大和路快速で賀茂まで、そこから関西本線で伊賀上野駅まで2時間半の旅。途中笠置という、山間の河原の広い谷川があるところでたくさん降りて行った。ハイキングかな。

雲ひとつない青空とはいえ、風が吹くと寒い。途中の鍋屋でにぎりうどん定食を食べて現地へ。仕事場も日陰でとても寒かった。帰りの列車に間に合わせるためちょっと急ぐ。乗り逃したら1時間後。空いてる店もないのでなかなかである。で、またしばらくの旅。薄めの本2冊持ってったけど楽勝で完読してしまった。近藤史恵「ヴァン・ショーをあなたに」森絵都「リズム」読了。

大阪に着くと、事故で大幅に遅れていたため、ちょっと遅くなつた。空気が冷たい。明日の朝は寒いだろう。まあ寝やすくて吉ではある。台風6号、接近中。

2015年5月6日水曜日

ダイヤのGW





今年は5月3日から6日まで4日間休んだ。連休自体けっこう久々だった。

3日憲法記念日は家に居て、子供が観るアニメを横から鑑賞。「暗殺教室」意外に面白い。コロ先生なかなかいい。また、スマホに入れている野球ゲームのパワプロが最近マンガの「ダイヤのA」とコラボしているのだが、たまたまやっていて、これも面白かった。ちょっとだけ外出したがすぐ帰る。涼しめ。

4日みどりの日は奈良に行こうと思ったが、息子が長い移動は嫌だと言い張るので、急遽近場のバッティングセンターに変更。
 
バッティング、息子にさせたが、ボールが手に当たって次からはパス。キックターゲットやストラックアウトもあってなかなか楽しい。上には卓球場もあり、これに息子ハマる。チョー初心者ながら楽しい様子。オート卓球ゲームもあって、あまり長い時間は居ないが、面白かった。また駅前まで歩いて帰る途中に中古ゲームカード屋さんがあるのも魅力みたいで、また行こう、となった。マック食べて帰る。

読む本はここ最近潤沢にあるのであまり本屋には用がない。珍しいことである。最近購入と人に貸してもらう本で、しばらくは買わなくて良さそうだ。

5日こどもの日は「名探偵コナン 業火のひまわり」を観に行く。やっぱ映画は面白い。絵画ものだし。息子メロンソーダと私アイスコーヒーで塩とキャラメルのポップコーンLサイズがおとも。息子は喉が渇いたとメロンソーダを沢山飲んで、映画途中でトイレに行ってた。いつもポップコーンあまるからもっないない。映画終わったのはお昼だが、ご飯食べる気はせずまたバッティングセンターへ。

卓球得点つけたら、上手くいかない息子が拗ねる。わかりやすいやつ。オート卓球とキックターゲット。オート卓球は、そこそこ早く強い球が来て、練習にはちょうどいい。息子はちゃんと返せていないがすごい楽しいみたいだ。バッティングはパパだけ打つ。マシンを間違えて、スローカーブも織り交ぜるブースへ。ストレートは昨日で慣れもあったから打ち返したが、カーブの打ちにくいこと。またアウトローのいいコースに決まること。

私が野球をやってたのは少年野球のみ。当時も今も小学生は変化球禁止。なので本格的に変化球に触れたことはない。それにしてもカーブってあんなに打ちにくいものだったのね。さっぱり前に飛ばなかった。2日続けてバッティングで左の二の腕が悲鳴を上げ中。やはりトシである。

近くにあるガストで遅めの昼食。ハンバーグ定食を美味しいと食べていた。帰り道に、ママが好きなダックスフント形のオブジェがついた時計を母の日の・・と買う。

4日は雨で、5日は晴れ。どちらももう暑くて半袖だ。運動した後外の風が気持ちいい。まだいまだから風が涼しいが、もう少しすればカンカン照りで熱風か、などと思った。

6日は休養で、麓にクリーニングを取りに下っただけ。短い時間で缶コーヒー飲んで煙草を2本吸う。社会活動。真夏になると、この程度すら嫌になるかなあ。

帰ってきて息子と公園で野球。柔らかいボールを使うのだが、息子ちゃんと足を上げて投げる姿が様になって来て、ボールにもいい回転がかかるようになって成長を感じる。バッティングはまだまだみたいなのでちょっと指導。いままでは左オンリーだったがきょうは右でも打っていた。1時間半ほど野球遊び。キャッチャーの真似もする。パームボールを投げてやると、回転がかかってない球の不思議な変化にびっくりしてたようだった。最後にブランコしたが、やはり山の夕方はまだ涼しい。半袖では寒いくらいだ。汗も乾いて、気持ち良い感じだった。晩御飯はピザにコーラだった。

もう46巻も出てるというが、「ダイヤのA」はキャラもゲームで覚えたし、息子がマンガを読みたいと言っている。取り敢えずブックオフで買ってみよかな。DVDも興味ある。この4日間で阿部和重&伊坂幸太郎合作の「キャプテンサンダーボルト」読了。まあその、伊坂世界で、それなりに面白く読んだが、新たな発見は全くなかった。
 
さて、GW明けは忙しい。次に息子と遊ぶ日を楽しみに、仕事しよう。

2015年5月1日金曜日

4月書評の2




だいたい、月に1冊は洋書を読んでいる。同じようなテイストの作品は続けて読まないことにしている。たまに時代ものを読むように心掛けている。日本の名作や、世界の名作もたくさん読めれば。洋書は、どうしても感性が違うからすらすらと読めないし、外れると、ひどく時間がかかってしまうリスクがあるのだが。充実したブックライフを目指して。

上橋菜穂子「精霊の守り人」

「鹿の王」で本屋大賞を獲った上橋菜穂子。文化人類学者が描く異世界ファンタジーヒットシリーズ。面白かった。

短槍使いの女用心棒・バルサは、偶然川に落ちた新ヨゴ皇国の第二皇子・チャグムを救うが、母親であるニノ妃に、この子を連れて逃げてほしい、と頼まれる。第二皇子の身体には何か別の生き物が宿っており、父である帝に命を狙われている、という。

上橋菜穂子は、本屋大賞の前に、児童文学のノーベル賞と言われる国際アンデルセン賞を受賞していて、興味を持った。ちなみに、日本人では、「ぞうさん」「やぎさんゆうびん」「一ねんせいになったら」の作詞者、まどみちお氏が受賞している。

中央アジアの民族に影響を受けているというこの物語は、非常に手際よくストーリーが展開されていく。この世界のシンプルな説明、皇子の身体には宿っているもの、伝承、怪物、戦い、人間関係・・概ねがアジア的、日本的というイメージで新鮮だ。

ミステリー界も、男性の好感度が高いヒロインの「ビブリア古書堂」がヒットしてから亜流が沢山出たが、異世界ファンタジーもハリー・ボッター以降世界にあふれたという。確かに、様々な本の情報に触れていると、昨今SFやヒロイン・ファンタジーの多さにちょっとびっくりする。日本の場合はまた得意技というか、ドラクエなんかも関係あるのかとも思うが・・。その多くは欧米的な、印象である。

児童文学でもあるので、複雑すぎることはなく、エグさや冷たさも無いが、私は楽しく面白く読んだ。この作品は人気を呼び、野間児童文学新人賞他を受賞、注目された。10作あるというシリーズ作にもちょっと興味あるし、日本古代をテーマとした氏の他の作品にも惹かれている。

解説で恩田陸が異世界ファンタジーの御三家として、「指輪物語」「ゲド戦記」「ナルニア国ものがたり」を挙げているが、いっこも読んでない。今後の楽しみだな。

米澤穂信「氷菓」

ミステリー界では今をときめく米澤穂信を初読み。謎でなく作風にほお、だった。

省エネをモットーにしている折木奉太郎は、海外に居る姉からの指示により、入学した高校で「古典部」に入る。部員はいないと聞いていたが、部室には同じ1年の千反田えるが居た。千反田は33年前古典部にいた伯父との謎を解いて欲しいと折木に頼む。

「折れた竜骨」で日本推理作家協会賞、「満願」で山本周五郎賞、2015年このミス!第1位。今注目のミステリー作家、米澤穂信のデビュー作。「古典部」シリーズの第一作である。

さてどんなもんだろうな、と読んでみたが、なかなか面白かった。よくあるようなライトノベルの体でありながら、会話、文章の流れともに少しひねり、一歩奥へ踏み込んでいる感じだ。主人公が省エネ主義、というのも、魔法のように謎を解き明かす探偵小説本道の隠れ蓑になっていて、なおかつ共感を得やすいのではと思わせる。取り巻く人々のキャラも面白い。

私的には、北村薫に影響を受けただけあって、日常の謎を解き明かすところがそっくりだな、と思った。北村薫のさらにライトノベル版といったところか。だから、ほお、だった。

予備知識なく読み出したので、ごっついむごい小説だったりホラーだったらどうしよう、と思ったが、このテイストなら次にも興味が湧く。それにしても、北村薫も、15年、20年前はこのように、若年層、女性層にウケるミステリー作家として登場したんだろうか、とちょっと思ってしまった。

アーネスト・トンプソン・シートン
「シートン動物記  ぎざ耳ウサギの冒険」

ほやっとしたものが読みたくなって購入。面白く、もの悲しさもある動物物語。

生まれて間もない頃、蛇に噛み裂かれ耳がぎざぎざになった、綿尾ウサギの通称「ぎざ坊」は、モリー母さんに危険の避け方を教え込まれ、一人前になっていく。

シートンもファーブルも読んだことが無く、興味だけ持っていた。今回たまたま読んだが、こんなに面白いとは思わなかった。「オオカミ王ロボ」も買ってしまいそうである。 

イギリスに生まれたシートンは、幼い時、カナダの森林地帯へ移住する。そこで動物たちと触れ合いながら絵を描き、その才能が認められてロンドン・パリへ留学。1898年、30代後半に発表した野生動物についての著書が大ベストセラーとなり、その後ボーイスカウト創生にも力を尽くした。

「ぎざ耳ウサギの冒険」は最初の著作にも入っていた物語である。ウサギ親子にはどれほど外敵が多く、いかに危険と対峙し避け続けているかが丁寧に、生き生きと描いてある。こんなに観察できるもんなのかと、舌を巻いてしまうし、ところどころ出てくる自然についての断定的な表現がこちらの意表を突く。

65ページほどの表題作のほか、馬を描いた「黒いくり毛」、130ページ以上のイノシシもの「あぶく坊や」、飼い犬の話、「ビリー」が収録されている。

作中にもあるが、野生動物は老衰で死ぬのではなく、遅かれ早かれ、悲劇的な最期を迎えて終わるものだ。物語として読むと物悲しいが、だから作品が説得力を持つのだろう。

東野圭吾「ナミヤ雑貨店の奇蹟」

物語・ファンタジーだね。比較対象が頭に浮かぶ設定。

敦也・翔太・幸平は、盗みをやった後逃亡用の車が動かなくなったため、廃屋に潜むことにした。しかし忍び込んだ「ナミヤ雑貨店」には、おかしな相談の手紙が届いた。3人は、返事を出すことにする。

私は韓国映画の「イル・マーレ」を思い出した。夢のあるファンタジーで、同じ仕掛けがあり、出逢えない男女が手紙によるやり取りをし、ついに会う約束をする。

悩み相談に答える店主をはじめ、ナミヤ雑貨店に関わった者たちの様々な人生を描く一連の話は確かに読み応えを感じる。薄く交差させるのもセオリーである。

時間は確かに魅力的なファンタジーの仕掛けだが、ある程度以上のものを感じるようにするのは難しい。まあまず、だったかな。

皆川博子「開かせていただき光栄ですーDILATED  TO MEET  YOUー」

評判のいいミステリー。解剖教室というので暗いハードボイルドかと思いきや、ドタバタコメディーの要素も併せ持つ。皆川博子さんはなんとOVER  80tyの作家さん!

時代は18世紀末のロンドン。シャーロック・ホームズ活躍の約100年前。ダニエル・バートン主催の解剖学教室は、公に実験用の遺体を入手出来ないため、墓暴きから買っていた。官憲に踏み込まれた時は慌てて遺体を隠すが、治安判事の女性助手らが来た際、隠し場所から、新たに2つの異常な死体が発見される。

本格ミステリ大賞を受賞した、2011年の作品。最初は、解剖、というのと、知らない時代のロンドン、とさわりを読んで、イメージ的に暗い難しい小説かなと敬遠していたが、評判が良いので興味は持って持っていた。たまたまブックオフに出ていたので入手、読むこととなった。

先に書いたように、理想に燃えるダニエル先生と、気が良く楽しい5人の助手たちが絡むコメディーの面を持つ。最初が上手いと思ったのだが、隠し場所を示しておいて、そこからいきなり謎が謎を呼ぶ2つの死体が転がり出る。

物語は時代の酷さや政治、妖しさ、不完全な社会など様々な要素を含み、なおかつ謎の方は二転三転の展開である。そして、さらに最後に「へっ?」という鮮やかな謎解きの仕掛けが用意されている。

直木賞作家でもある皆川博子は今回初めて読んだが、感じるのはエネルギー。小説を面白くしようという気概が感じられる。とても80歳を越えているとは思えない。ややこしい部分もあるし、ラストはなにか消化不良ではあるが、なかなか夢中にさせる作品だった。

氏はクリスチアナ・ブランドのファンだという。私もかねがね聞いていた「招かれざる客たちのビュッフェ」でも読んでみようかな。

4月書評の1




4月は多忙の月だった。で、大作をいくつか読んだ。面白い読書だったと思う。10作品10冊。では行ってみましょう!


須田桃子「捏造の科学者 STAP細胞事件」

いや〜興味はあったし、久々に時間をかけて読んだ、という気になった。

素晴らしい成果と謳われ、リケジョの星となった小保方晴子女史の登場で、世間の注目を集めた万能細胞、STAP細胞の発見。だからこそそこに多くの疑惑が生まれた時に、さらに騒ぎは大きくなった。一般レベルではあまり経験のない「論文不正」は、社会的事件になった。

この本は、毎日新聞の科学者環境部の、記者として一部始終の取材に当たった著者が、ドキュメント風に当時を振り返り、まとめ、改めて問題点を提起したもの。

私も含め、小保方さんが積極的な悪意を持って論文不正を行ったとは印象的に思えず、問題がどこにあるのか分からないまま、という人が多いかもしれない。

この作品を読むと問題の経緯と成り行きがよく分かる。要は、実験や論文へ、周囲の指導や査読のシステムは、そもそも働かないものであること、小保方氏が、意図を持って行動しない限り出ないであろう現象がある、ということ。論文は不正でもSTAP細胞という成果は無いとはいえない、という、科学の世界ならではの堂々巡りがまた特徴的だ。

指導者は、その責任から小保方氏をかばうが、本書を読む限り、論文作成の常識について、かなりの疑念が残る。身内の論文と、商業科学誌の違いもあるのか、とも思ってしまう。確かに、誰か教えてやっとけよ、ではあるが、それ以上に非常識に見える。才能ある人に遠慮があったのだろうか。

捏造というと、成果を否定するもの、という響きが強い。だからおそらく小保方さんもこだわっていた。でも論文の明らかな不正=論文の捏造=成果はあっても証明の体を成してない=成果の捏造、で、あろう。世界の科学界に発表しちゃったんだから。でも、不正への動機は、研究者によって明らかにされてはいない。詳細に関係科学者とのやりとりが記されている中で、諸状況はあろうが、そこが物足りないと思った。でも認めないだろうな。

いただいた本で、多忙な時期だったが、通勤や移動の合間に少しずつ読み進んだ。過去つまらなくて読み進まない本は数あれど、こんなに集中して読めるのに、内容が難しくてページが進まない、というのは珍しいかも。

面白かったよー。ありがとう。

桜庭一樹「砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない」

不思議で極端で悲しい話。胸を刺す、少女たちの1カ月。ちょっとグロかな。

鳥取県境港市。中学2年、13才の山田なぎさは、父を早くに亡くし、兄はニートで、母は夜遅くまでスーパーで働いていて、中学を卒業したら収入のため自衛隊に入ろうと考えている。2学期が始まって間もなく、有名芸能人の娘だという海野藻屑が同じクラスに転入してくる。

桜庭一樹は最近それなりによく読んでるな。2004年の作品で、この本や「推定少女」などがきっかけで世に認められた。ちなみに鳥取県出身である。

「少女には向かない職業」でもまったくそうだったが、設定が暗く、そこでもがく女子中学生の姿が描かれている。桜庭一樹は、欧米の古典的推理作品をかなり読み込んでいて、挿話や話の展開になんとなくそれが伺える。不思議さ加減とグロテスクさ、暴力、死の印象など、感情的な部分で、文章がみずみずしく全体として不思議なまとまりを示している物語だ。

「弾丸」の解釈も要素の一つだが、秀逸だったと思う。やっぱこの年代を描かせると魅力的だな。

山本兼一「花鳥の夢」

苛烈で「働きもの」の筆致は変わらないが、今回はまあまずか。狩野永徳の話。

安土桃山の時代、絵師の名門狩野家に、類稀なる画才を持って生まれた永徳。10代のころ、永徳は写生用に生きた緋連雀(ヒレンジャク)が欲しいと、頼んで鷹匠に捕えてきてもらうが、鷹匠が持って来た、とりもちを外している時の、もがく緋連雀を描いた絵に魅了される。聞けば見ていた女絵師が描いたものだという事だった。

狩野永徳は安土桃山の時代を代表する絵師で、狩野一門を率い、織田信長にも豊臣秀吉にも目を掛けられた。戦国時期を苦悩しながら駆け抜けた永徳の生涯、永遠のライバル、長谷川等伯への激しい嫉妬などを余すところなく書いた作品。

山本兼一は、直木賞受賞作の「利休にたずねよ」を読んで感嘆し、松本清張賞の「火天の城」を読んで、その迫力と、安土城を建てる大工の責任者の作業の一部始終を丹念に描いて見せる手法にまた感心した。宮部みゆきの「働きものの作家さん」という表現には納得するものがあった。

ただ今回は、総合的に信長秀吉の時代のお定まりのドラマを描いたり、創作の時の苦悩、等伯への嫉妬ほかもろもろがパターンづいており、表現したいことは分かる気がするのだが、もうひとつ、という感じだった。

たまたま同時期に物されたという、直木賞受賞作品、安部龍太郎「等伯」を読むのが楽しみになった。

ロアルド・ダール「あなたに似た人」

今月の洋書。冷たくて、ちょっとクセのある短編集。もはや定番、古典である。

刑事である夫から別れを切り出された妻は、衝動的に冷凍のもも肉で夫を撲殺する。その後の行動は・・「おとなしい凶器」より。

私が社会に出た頃、「ハヤカワ・ミステリベスト100」という企画があった。感化された私は、第1位だった、ウィリアム・アイリッシュ「幻の女」から、ギャビン・ライアル「深夜プラス1」からF.Wクロフツ「樽」からピーター・ラヴセイ「偽のデュー警部」から読みまくったものだ。しかし実は「幻の女」以外はさして面白くなかった。もちろん読み漏らした本もたくさんあって、この作品もそのひとつである。

1957年に日本で出版された短編集。冒頭で取り挙げた一作は有名な短編である。その他、尋常ではない賭けを扱ったものが数編、思い込みの妙を悲喜劇にしてものもある。どれも、結末は冷たくて現実的で、シニカルだ。

ロアルド・ダールは児童向けの作品も多く、ヒットした「チャーリーとチョコレート工場」なども書いている。

まあその、先が読めたりもするのだが、サクサクと結末をつける短編集。余暇にいかが?てな感じの作品だった。

万城目学「偉大なる、しゅららぼん」

今度は琵琶湖をめぐる超能力もの。舞台やその描写は好きだが、んー、ちょっと、かなあ。

琵琶湖の湖西に住む日出(ひので)涼介は、中学卒業後、湖東と湖北の間、石走(いわばしり)にある、日出本家に預けられ、「力」の修行に励むことになる。当地で絶大な権勢と財力を誇る日出家。同い年の、まさに若殿様、淡十郎、その姉で強い力を持つ清子、また同じクラスになった、日出家のライバル棗(なつめ)家の長男広海、元藩主の子孫・速瀬校長らとの間で、「力」を巡る騒動が起きる。

万城目学は、京都が舞台の「鴨川ホルモー」、奈良が舞台の「鹿男あをによし」と読んで、次が滋賀・琵琶湖が舞台の本作ときた。冒頭にも書いた通り、相変わらず土地の描写がうまく、行ってみたいな、という気分がかきたてられる。琵琶湖、いいなあ、と今回も思った。

とはいえ、キャラクターの造形はまずまずだが、ちょっとあまりにマンガチックであり、また力の中身がまったくはっきり見えず、スケールが壮大すぎ、またどこか緊張しきれないような空気があって、締まらないエンタテインメントのように感じてしまった。長すぎると思うし。

例えば主人公やサブキャラが大金持ちだったり、都合のいいヤクザの家だったりするのは、ちょっと都合が良すぎて鼻白むものだ。それだけではないが、今回なにか安易さを感じてしまった。