2013年8月1日木曜日

7月書評の2

最近、そんなに数読むなんて、並行して3、4冊読んでるでしょう?という質問を受けた。実のところ2冊は並行して読んだ事があるが、自分はそんなに器用ではないと気付いてからやめている。

通勤と、夜間に読んでるだけだ。なんというか、あまりその他の余暇の過ごし方をしてないからかな。では第2弾。

村山斉
「宇宙はなぜこんなにうまくできているのか」

東京大学数物連携宇宙研究機構の機構長が書いた、宇宙についての本である。太陽、地球といった身近なものから、ブラックホール、ダークマター、ダークエネルギーや素粒子、マルチバース理論など最新の理論まで、重力やエネルギーをキーワードに語られている。

非常に興味深く、優しい本である。かつての著名な学者の、発見の歴史もひもといているので、コペルニクス、ガリレオからケプラー、ニュートン、アインシュタイン、シュバルツシルド、ガモフ、ハッブルらの「発見」について紐解かれているのも、宇宙好きには面白い。

夢中で、あっという間に読了した。やっぱ夏は宇宙だな。

西加奈子「通天閣」

孤独のまま、一生を終えようと考えている男。ゲテ物揃いのスナックのチーフをしている、振られた女。同時進行の物語に、やがて・・。

西加奈子は3作め。暗くも明るくもなく、大阪テイストを過剰なばかりに敷き詰めている部分もある、いつもの感じ、いつもよりかなり淡々としたストーリーが進行する。

まあこれは、最後の仕掛けの物語だ。明るい色が途中からほの見えるのが微笑ましい。女の方は、店が過剰すぎるな、やっぱ。ちょっと大阪を強調し過ぎのような気がする。でも、振られた気持ちの描写は、すごく良かったと思う。仕掛けも、オモロイ。

百田尚樹「モンスター」

人並外れて醜い顔の和子は、高校生の時に、好きな男に対して事件を起こし、家族にも疎まれて故郷を出る。しかし整形手術をきっかけにその人生は大きく変わり、やがて故郷の街に帰って来る。彼女の最終目的はー。

ある意味単純なストーリーの流れだし、すらすら読める。しかし中身は、整形の施術のリアルさや、男の浅はかさが満載で、考えさせられる内容である。

解説にもあるように、女性にとって美醜は大変な問題だろうな、と思う。また社会的にも、女性が独りで生きて行くのは大変で、それらは現実だ。

結の部分はうーんと難しいものがあるが、和子の人生、また生活、男というもの、は、うーん、と唸るところの多い作品だった。

星新一「きまぐれロボット」

小学生向けショートショートの本である。夏休み用に、息子が借りて来ている本の中にあった。1969年、私2歳のころの発行。

星新一は、1000以上の作品を書き、さらに時代の様相と共に、改稿を重ねていたそうだ。おかげて、今でも、特に違和感なくヒョイヒョイ読めた。

植物学者のエス博士、動物学者のエイ博士、エス氏、エヌ氏、お金持ちのアール氏など、固有名詞が出て来ないのはいつもの事だそうだ。

中学の頃友人が持っていて、読んだ以来の星新一か。感想は、新鮮で、不思議と納得できて、平易で面白かった。長編も、読んでみたいな。

星新一の他、小学生に流行っている科学漫画「サバイバルシリーズ」も読んでいる。今回は原子力のお話で、結構難しい。そういうと、皆読んでるよーと軽く言われた。

スコット・フィッツジェラルド
「グレート・ギャツビー」
村上春樹訳

最近も映画になった、スコット・フィッツジェラルドの代表作である。最初に記しておくが、この本には時間がかかった。なにせ、表現がどの方向を目指しているか、さっぱり分からなかった。

東海岸、ニューヨーク近くのウエスト・エッグに引っ越して来たニック・キャラウェイは、隣の、とてつもなく大きな屋敷に住み、頻繁にパーティーを開くジェイ・ギャツビーという青年と仲良くなる。謎めいた魅力を持つ彼は、ニックの友人と古いつながりがあった。

正直言って、不意を衝かれたようなストーリーだった。もっともっと、いろんな意味でスマートな話かと思った。

訳者の村上春樹は、この作品が自己のベストワンだと書く。私はその他大勢と同じくうーむ、である。欧米の小説の、よくある無軌道な会話や行動の描き方は苦手だな。それによって、主人公のまともさを浮かび上がらせるのは、ひとつの手法と思われるとはいえ。

いいなと思えるのは、村上春樹の作品は、影響を受けたとはいえ、全く違うものと思われる事だ。それにしても、世界の名作には憧れるが、まだまだ修行が足りないようである。

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