2011年8月31日水曜日

8月書評

いま小池真理子「午後の音楽」を読んでいる。少なくとも明日までかかるであろうから、8月はもはや打ち止めだ。

という訳で、8月読んだ本は、「ルパンの告白」横山秀夫、「甲子園が割れた日 松井秀喜5連続敬遠の真実」中村計、「無人島に生きる十六人」須川邦彦、「告白」湊かなえ、「流れ星が消えないうちに」橋本紡、「大橋巨泉の美術鑑賞ノート」、「高い城の男」フィリップ・K・ディック、「日輪の遺産」浅田次郎、「季節風 夏」重松清、「神様のカルテ」夏川草助、以上10冊。おお、ふた桁乗ったぞ。人生初めてだ。愛用のブックカバーは本から本へと移り住んでいる。

それなりに濃いひと月だった。ルパンは筋が面白かったし、松井は過去の体験と考え方を問い直したし、無人島も面白く、当時の様子が見て取れた。小笠原には、白人の帰化人が少なくない数いたというのはちょっと驚いた。告白は、合わないような気もしたが、それぞれの不完全さの噛み合いを考えたし、流れ星は面映かった。美術はにわかルネサンスかぶれになれたし、「絵の上手さ」というのを考えたし、1963年のヒューゴー賞、高い城の男は、アメリカ人が日本をどう見ていたのか、日本の気高さを見る気もした。日輪はキャラクター設定の妙を感じたし、季節風は、相変わらずの甘酸っぱさで、神様のカルテには3回泣かされた。あるはずの無い、幸せな、ある意味安直な設定とストーリーなのだが、それでも泣かされた。

よって押し並べて星は2つ、☆☆だ。逆に、飛び出して、いつまでも残る作品は、残念ながら無かった。よって、今年最高の作品は、相変わらず「対岸の彼女」そのままだ。7月以降の、今年後半ということになると、これも「パレード」の鮮烈さに勝るものはない。今月の末の方は読み過ぎか、目がチラチラしてペースが落ちた。

数を読むと、やはりエンターテインメントが非常に多いことに、改めて気付く。設定が面白く、キャラクターにも個性があって、筋が不自然でなく、引き込まれるような面白さで、時に刺さるような、タイミング抜群のエピソードが差し挟まれ、結論もしくは真実へと行き着く。

それはそれで、まとまった、プロの作品なのだが、一方で文学とは何か、という事も大いに考えた。傲慢だが、本として筋が通っていたり、まとまっていたりするのは当たり前で、ストーリーを超えた、心への残滓が無いと、優れた文学作品とは言えないのでは、などと思った。自分の読書に芯がない、とも感じている。なので、近現代の日本文学史を多少なぞることもしてみたい。

何が文学、という問いに対して明確な答えは無いであろう。文学、というものが、いったい求められてなぞ居るのだろうか、いまやせいぜい、海外からもっと大きな視点で見た時に日本人の習俗や感性は細やかだ、と思われるくらいのものではないだろうか。でも、だから今、文学を求めてみたいのだけれど。笑ってしまう。

てな感じで、とにもかくにも、8月終了。年間通算38作品41冊。今年もあと4カ月。目標は60作品だ。こんな年も、いいな。

2011年8月27日土曜日

余裕と芸術

余裕の、無い週だった。月曜前日入りで火曜は葬儀で出張。その際に子供の頃から通った、平和台球場の跡地を見に行った。福岡城跡のお堀端に、平和台球場とライオンズの記念プレートがあった。そして、城跡への道を上った、球場の跡地は・・フェンスに囲まれて、草茫々の空き地だった。向こうの方に、球場が取り壊される原因となった、平安時代の迎賓館、鴻臚館(こうろかん)の展示施設があった。うまく整備すれば、素晴らしい公園になりそうな気もするのに、球場の跡だけが形そのまま放置されていた。数々の思い出がある身としては、淋しかった。

帰った夜は、文学がテーマの定例飲み会。少々遅かったが、家に荷物置いて出掛ける。ここのところ、また暑さが戻り、また東京の仮葬儀に出てから、ちょっとショックがあったのか寝付きがひどく悪かったので、この飲み会はタイミング的にも有り難かった。しかし、この夜仕事にトラブルが発生して翌日バタバタ。それでもなんとか定時に上がり、コンサートに行く。

小林研一郎指揮、pf金子三勇士で、リストの前奏曲、ピアノ協奏曲に、マーラーの交響曲1番。小林研一郎は、走って出て来て、にこやかで、キビキビと指揮をする。そのメリハリが実に素晴らしく、オケの集中が伝わって来て、決めも最後ホルン隊が立ったりするサービスの良さで、美しく決まって、盛り上がった。皆に握手をして、全部の奏者を個別に称えた後、なんと指揮者挨拶。予定されてはいなかったのだろう。マイクなしだった。いや充実のコンサートだった。

翌夜は接待をこなし、金曜半休で帰る。名古屋くらいで、東京は記録的豪雨だと知る。えーっ、よかったー。家族とイタリアンに舌鼓を打ち、きょうは息子がガンバライドしたいというので連れて行く。帰ってからは、ポケモンカードゲームに、神経衰弱。どちらも勝てない。神経衰弱は、ほんの2ヵ月前くらいには手加減してやってたのに、本気でも1勝2敗。オセロは正直楽勝だったが、これとて気を抜けない。

こちらに来てからは、ぐっすりと眠れる。最高気温は高いが、東京と違い、午後決まったように夕立があり、涼しくなる。それもあと一泊。週末は早いな。息子はなぜいま離ればなれなの?とか寝入り際に訊いてくる。次は9月だ。待ってろよ。

2011年8月14日日曜日

ルネサンスかぶれ

この週、というか昨日までの週は、「無人島に生きる十六人」須川邦彦、「告白」湊かなえを読んでしまう。前者は昭和初期に書かれた、明治の漂流話。朴訥とした感じが良かった。「告白」は、本屋大賞にしては・・が正直なところ。

さらに、金曜夜遅くまで起きて、「流れ星が消えないうちに」橋本紡を読了。恋人を亡くした女は、その親友と付き合っている。どちらにとっても亡くなった彼は大きな存在だった。そこから立ち直るまでの、ちょっとコミカルな部分もある人間讃歌的恋愛小説で、高校がベースになっている、青春ものでもある。やたらと書店でもブックオフでもいまお薦め本として取り挙げてある。

私も全く知らなかったが、同僚の机の上にあったのを、いらないならくれない?と持って来ただけのものだ。その同僚には響かなかったようだが、正直これでは、大人の心には、物足りないだろう。「夜のピクニック」と同じく、10代から20代前半の間に読むものかと思う。読後感はいい。

土曜は暑いというのにその中正午までノークーラーで寝ていた。もともとこの土日は外出するつもりはさらさらなく、ひたすら家で読書三昧、と決めていた。昼はお弁当買って食べ、高校野球つけっ放しで「大橋巨泉の美術鑑賞ノート」を読む。主にルネサンス期を中心に扱ったものだ。

私の西洋美術的関心と言えば、やはり印象派以降に限られていたということもあり、かなり面白く読めた。リッピ、ボッティチェリ、ラファエロ、ティツィアーノにブリューゲル。ラファエロとティツィアーノは本当に上手い。印象派の、いわばぼかした色彩と対象的な、絵画の本質を見るようだ。陰影と遠近法、やわらかな光の中創作と写実・・逆にだからこそ、印象派は革命的だったのだろう。もっと西洋絵画は体系的に理解したいし、また勉強の機会を持ちたい。

ヤン・ファン・エイク「ロランの聖母」、フラ・フィリッポ・リッピの「聖母子と二天使」、サンドロ・ボッティチェリの「ヴィーナスの誕生」「春(プリマヴェーラ)」、ラファエロの「小椅子の聖母」、コレッジョの「イオ」、ティツィアーノ・ヴェチェリオの「ウルビーノのヴィーナス」「聖母被昇天」、ヤコボ・ティントレットの「スザンナと老人達」、ヒエロニムス・ボス(ボッシュ)の「最後の審判」、ピーテル・ブリューゲルの「雪中の狩人」、エル・グレコの「オルガス伯の埋葬」「胸に手を置く騎士の肖像」などなど。

彼らの筆致は、精密で、生き生きとして動き出しそうだ。また、ボッティチェリの2作は余りに有名だし、コレッジョの「イオ」は抜群にエロく強い印象である。いつか生で見たいものだ。これ以降のオランダ絵画なども興味がある。とにかく、中世のものはとかく暗く宗教的過ぎる、という呪縛からは完全に逃れた。

夕方に完読し、パスタ茹でる。インスタントのカルボナーラに買って来たサラダにギョーザ。食べ終わってブックオフへ。本当は恩田陸を買うつもりだったが無く、なぜか辻仁成の芥川賞受賞作「海峡の光」に宮部みゆきの直木賞受賞作「理由」を買う。インバルのマーラー1番「巨人」DVD見て、寝る。

日曜は朝8時に起きるが、ずーっと家に居た。ちょっと活字にも食傷気味になり、高校野球見て、昨日のルネサンス絵画を見返していた。面白い本だった。これで8月は6冊読了。

金曜に、ブックオフで探していた本を見つけて買った。「高い城の男」第二次大戦は、枢軸国が勝っていた、という設定で展開される物語だ。そういえば、この手の話は無かった。1963年のヒューゴー賞、まだ戦後が消えて居なかった頃書かれた話、だからこそ期待しないし、逆に興味深い。先に読んだ「ユダヤ警官同盟」はイスラエル建国が失敗した、という架空の設定となっていたが、そんな作品の例として解説で触れられていて、興味を覚えていた。

これと、「理由」と「海峡の光」今月ここまで読み終えられたら上出来ってところか。晩ご飯の買い物に出たら、なぜかエンジンがかかる感覚がして、夜家を整理しようか、という気になる。遅いっつーの。まあ、読書三昧の、いい週末でした。はい。

2011年8月8日月曜日

夏休み・後編

8/4 午前から、「カーズ2」全員で見る。スパイもので、前回の素朴さと比べると、もう出来ること全てやっちゃったというくらい派手だった。ちょっと小学1年生には難しかったようだ。遅めの昼をフードコートで食べて帰る。買って帰った桃のロールケーキが美味かった。

8/5 パパ日中家だった。夏休みの宿題で、ママと息子は雨の中植物園へ。クラシックを聴きながら「甲子園が割れた日 松井秀喜5連続敬遠の真実」を読み切った。

かなり多く深く取材をしてあって、好感が持てた。若干明徳側に贔屓目のような気もしたが、これだけ厚みがあると説得力も有るというものだ。

私は、もう19年前のこの日、甲子園球場にいた。詳細は端折るが、件の、星稜ー明徳戦の次の試合に用があって、松井の5打席めの敬遠の時に3塁側寄り、つまり星稜応援席の近くに入って行ったら物凄い怒号で、ぎっしり埋まったスタンドからは「高校野球やろが!」「帰れ!」という声が飛び、メガホンなど、物がそれこそシャワーのように投げ込まれていて唖然とした。それだけに、感慨深く読んだ。面白かった。

8/6 お昼に仮面ライダーとゴーカイジャーの映画観た後、出張のプラネタリウムが来ていたのでそれを息子と観た。ビニールドームで、まああまりスケールも大きくなかったのだが、息子は、10秒目を瞑ってみて〜、はい開けて!で真っ暗な星空になっていたのにびっくりしていた。ひと通りきょう旧暦七夕の星空説明で終了。しばらく時間が空いたので、ミドリ電化にガンバライドをしに行った。さらにオムライスの晩ご飯を食べて、ショッピングセンター屋上の広場にて、天体望遠鏡を出しての観望会。口径が25センチの望遠鏡もあり、月がきれいだった。また、久々に土星も、はっきりと見えた。屋上からは淀川の花火大会も見え、楽しく帰って寝かせる。いやーやっぱあれくらい口径が大きいといいなあー。

8/7 昨日買ってあげたポケモンカードを使いたくてしょうがない息子と朝からポケモンカードゲーム。新キャラは、なかなか楽しい。

妻が体調不良なようで、昼からは、2人で神戸市立青少年科学館に行ってみる。ポートライナーの一番前にすわった息子はのっけからご機嫌。着いて中に入ると、広いわ涼しいわ面白いわで息子大ハッスル。10秒間でボタン何回押せるかゲームやったり、アスレチックぽい滑り台で遊んだり、ペットボトルロケット発射とか、空気で浮く発泡スチロール球ほか、なかなか面白い。人もそんなに多くないし。

ロボットコーナーなどは回り切れなかったが、飛行機操縦シミュレータ(そこまでいいものでもないが)やポートライナー運転をして、また先着15名のハンググライダーシミュレータも出来た。

それから、プラネタリウム子供用番組を観に行った。これが、ここのはホリゾントが大きくて立体的で、申し訳ないが前日とは大違いで、大いに楽しめた。やっぱこれくらいのスケールで観なきゃあね。番組も有名な「リリィの冒険」で、息子はじっと見入っていた。小学校に、リリィのポスターが貼っている、らしい。終わった後、すぐ上映のHAYABUSA帰還編がどうしても観たくなり、息子に頼んで(笑)観る事にする。この時点で息子のノリは不思議に良かったのだが、始まって見て「新幹線のはやぶさと思ったのに」と寝始めた(爆笑)。だからという訳ではないが、JAXA相模原キャンパスの横のプラネタリウムで観たものにさらに手を入れてある帰還編、ちょっと言葉を飾り過ぎで、あまり面白くなかった。

終わってかき氷を食べて、もう1回遊んで帰る。息子は「傾いた家」にハマり、もう1回、もう1回と行くが、パパはかなり気持ち悪かった。面白いのはよく分かるが。この季節は7時まで開館で、6時半ごろ出る。帰りにご飯食べて、2日続けて真っ暗な中到着。あーあ、夏休みもついに終了。長く感じたけど終わってみればあっという間。まだ息子には20日以上夏休み残っているのに、その殆ど相手をしてやれない。しょうがないけど、嫌だなあ。

夏休み・前編

7/29 会社は午前までで、いよいよ夏休み。帰りの新幹線も、帰省のパパや学生ぽい女性、また家族連れで賑わい、いつもとは違う雰囲気が漂っていた。

車中はモーニング読んで少し寝て、「火車」読み込んで過ごす。着いたら凄い夕立ちで驚いた。晩は回転寿し、帰って北島の銀メダル見て、子供を寝かし付けてまたひたすら「火車」を読む。暑いベッドルームで首巻きアイスノンして読み進み、ついに完読。夢中になった。推理小説だが、クレジットカードや破産を詳しく取り扱っていて、その心情にまで迫っている。どれかというと社会派、そして心情派の小説だろうか。ただ、どうも情報が都合よく出てき過ぎるなあ、という感想は持った。それと、本格ミステリファンとしては、やっぱり、真相を聞かせて〜。そこで終わらないで〜。で、ある。まあしゃあないか・・。これで7月に読んだ本は8作品となった。
「パレード」「四度目の氷河期」「長い家の殺人」「ドミノ」「聞いてヴァイオリンの詩」「ユダヤ警官同盟」「図書室の海」「火車」である。もう打ち止めだ。次は「ルパンの消息」読もうと持って帰って来た。

7/30 ゆっくり起きて、犬の散歩。昼家で焼きそば食べた後、三宮へ。人出が少ない。GWとはえらい違いだ。息子とママは、INACの練習見に行って、なでしこにたくさんボールにサインをもらってきていた。それもあり、小学生のボールを買う。Jリーグ公式球のスピードセル格好良かったが、ナイキのにする。また、マックィーンのレゴ買ってあげる。中華街も人少ない。餃子食って帰ったが、あまり美味しくなかった。

7/31 のんびり、だらだらして、買い出しに出掛ける。特に何もしない日、だった。

8/1 早朝から近くに釣りに出掛ける。サビキだが、なにせ久しぶり。3本の竿に3つの仕掛け、が早々に3回根掛りして即撤退。参った。午后はみんなして寝る。夕方私と息子は起き出し、麓の駅前までお散歩。てれびくん買ってあげて、なじみのドッグカフェで涼みつついちごシェイク。あまり来ない割には息子はここの店員さんには心を開く。帰りは川沿いを歩き、冷たい水に足浸けながら楽しく上った。

8/2 この日は家族付き合いの同僚の奥様とその子供達と三宮で映画。ミントビル、というから何かと思ったら、旧神戸新聞ビル。まあえらいおしゃれになって、と感心する。息子とママはポケモン。1人残った先方の中1のお姉ちゃんと私は、「カーズ2」が始まる時間までソファで読書。「ルパンの消息」横山秀夫を読み込む。コナンを読んでいたお姉ちゃんを見送って、隣のビルの広いジュンク堂へ。2冊購入。「甲子園が割れた日 松井秀喜5連続敬遠の真実」と、須川邦彦「無人島に生きる十六人」である。前者は季節柄もあろう。後者は明治時代の漂流の話で、昭和初期発行の書物を再発行したものである。面白そうだ。もとから冒険もの好きな方なので。

てな風にしているとあっという間に皆帰って来て、お洒落なお茶屋さんでお食事し、そのビルをぶらぶらして帰った。

8/3 池田市にある、日清食品のカップラーメン記念館へ行く。みんなして、自分だけのカップヌードルを作る。カップに絵を書いて、スープの味を決め、具材を4種類選んでパッケージしてもらう。息子はしょうゆ、ママはシーフード、パパはカレー味。楽しみだ。お土産ショップがもう少し充実していれば言うこと無しだった。でも楽しかった。午后は映画の席を予約しに行き、もうすぐ閉店のステショナリーで地球儀、オセロゲームにヨーヨーを買って帰る。息子はオセロに興味津々で、早速やるが、トランプと違ってまだ手の抜き方が掴めないので楽勝してしまう。ママは上手く負けてあげていたようだった。でもポケモンカードゲームや神経衰弱では勝てないのだからまあいいか。ヨーヨーも、「犬の散歩」や「ブランコ」をやって見せてやる。私もまあ、ひと通り通じてるな、と改めて思う。アクティブな1日だった。パパはこの夜「ルパンの消息」を完読。引き込まれて、面白かった。書評はまたの機会に。