という訳で、8月読んだ本は、「ルパンの告白」横山秀夫、「甲子園が割れた日 松井秀喜5連続敬遠の真実」中村計、「無人島に生きる十六人」須川邦彦、「告白」湊かなえ、「流れ星が消えないうちに」橋本紡、「大橋巨泉の美術鑑賞ノート」、「高い城の男」フィリップ・K・ディック、「日輪の遺産」浅田次郎、「季節風 夏」重松清、「神様のカルテ」夏川草助、以上10冊。おお、ふた桁乗ったぞ。人生初めてだ。愛用のブックカバーは本から本へと移り住んでいる。
それなりに濃いひと月だった。ルパンは筋が面白かったし、松井は過去の体験と考え方を問い直したし、無人島も面白く、当時の様子が見て取れた。小笠原には、白人の帰化人が少なくない数いたというのはちょっと驚いた。告白は、合わないような気もしたが、それぞれの不完全さの噛み合いを考えたし、流れ星は面映かった。美術はにわかルネサンスかぶれになれたし、「絵の上手さ」というのを考えたし、1963年のヒューゴー賞、高い城の男は、アメリカ人が日本をどう見ていたのか、日本の気高さを見る気もした。日輪はキャラクター設定の妙を感じたし、季節風は、相変わらずの甘酸っぱさで、神様のカルテには3回泣かされた。あるはずの無い、幸せな、ある意味安直な設定とストーリーなのだが、それでも泣かされた。
よって押し並べて星は2つ、☆☆だ。逆に、飛び出して、いつまでも残る作品は、残念ながら無かった。よって、今年最高の作品は、相変わらず「対岸の彼女」そのままだ。7月以降の、今年後半ということになると、これも「パレード」の鮮烈さに勝るものはない。今月の末の方は読み過ぎか、目がチラチラしてペースが落ちた。
数を読むと、やはりエンターテインメントが非常に多いことに、改めて気付く。設定が面白く、キャラクターにも個性があって、筋が不自然でなく、引き込まれるような面白さで、時に刺さるような、タイミング抜群のエピソードが差し挟まれ、結論もしくは真実へと行き着く。
それはそれで、まとまった、プロの作品なのだが、一方で文学とは何か、という事も大いに考えた。傲慢だが、本として筋が通っていたり、まとまっていたりするのは当たり前で、ストーリーを超えた、心への残滓が無いと、優れた文学作品とは言えないのでは、などと思った。自分の読書に芯がない、とも感じている。なので、近現代の日本文学史を多少なぞることもしてみたい。
何が文学、という問いに対して明確な答えは無いであろう。文学、というものが、いったい求められてなぞ居るのだろうか、いまやせいぜい、海外からもっと大きな視点で見た時に日本人の習俗や感性は細やかだ、と思われるくらいのものではないだろうか。でも、だから今、文学を求めてみたいのだけれど。笑ってしまう。
てな感じで、とにもかくにも、8月終了。年間通算38作品41冊。今年もあと4カ月。目標は60作品だ。こんな年も、いいな。