2025年8月31日日曜日

原画展③

国際アンデルセン賞受賞、カナダ🇨🇦のシドニー・スミスは絵を何種類か使い分け、ストーリーも少し深みがあってなかなか楽しかった。

原画展②

印象に残ったものを

例年の原画展

3年か4年連続で、イタリア・ボローニャ国際絵本原画展。10月までやってるけども、例年9月から年末までは何かと予定が多くて行けなかった経験あり、毎年夏の終わりの週末に行くことにしている。

今年も楽しんだ。絵本は確立した1つのメディアで、ストーリー、タッチ、色彩、構図などさまざま。イタリア、イランなど比較的多くもちろん南米や他のヨーロッパ諸国、カナダもあった。青黒系と赤の対比、細かく描きこんであるもの、わざと歪ませてヘタウマな感じにしてあるものなどバリエーション豊か。1枚目のインドの作品は夜を母親と娘がタンデムでぶっ飛ばすというもの。印象に残った。

去年までは会場の喫茶店で庭を見ながらスイーツをいただくのが楽しみだったのに、今年は喫茶が無くなっててショック😨帰り道の喫茶店でチーズケーキをたっぷりのアイスコーヒーで😋この展覧会の間は人を増やしてるとか。

目と頭を楽しませて夏も終わり。
名残惜しくないよ、早く涼しくなってくれー😎

本屋めぐりの結末

ヒグラシが帰り道鳴いていた。お盆あたりに緑深い山に響くカナカナ・・という声は夏の風情をしみじみと醸し出す。私はこの声を聞くとお盆に親戚、いとこたちと、お寺の本堂・納骨堂に行った迎え火、送り火の夜の暗さを思い出す。

若い頃住んでいた隣の駅の大型書店となじみの古書店さん。JR⇆阪急と暑い中歩く。山手幹線が開通して当時とは様相が変わっている。川沿いの、地下に喫茶店のある生地屋さんでアイスキャンデー。金柑味で、中にキンカンの果実が入ってました。しばらく食べてなかったな、と。

古書店さんは、当たり😆の日。読みたい作家さんの本を廉価で。よくある、他古書店の本棚をいくつか設けていて、値付けは出店社さんがしているので価値観の違いがダイレクトに見えるというか。今日は店主さんの方が、「なんてお得なお買い物・・」と絶句してはりました😅😎皆川博子、須賀敦子、佐藤泰志、ピーター・ラビットのビアトリクス・ポターと好きな作家ばかり&がっちりした買い物だったかな👍

もともとこの外出はインスタで繋がっているブックカバー屋さんが、マンガ「しろくまカフェ」読んでくすくす笑っていたという記事から無性に読みたくなったから。

本屋に在庫があるかをネットで調べ
(ポチッとそのままwebで買わないの?せめて取り置きしてもらわないの?という疑問もあるやもですが、本読みは本屋に行って探すのが楽しみなのです)
隣の市まで行ったものの結局見つからず
(もとは少女マンガということもあり店員さんにもちょっと恥ずかしくて聞かず)

この後、アイスと古書の当たりで気をよくして地元に帰って、スーパーで買い物してから同じビルに入っている古書店さん(きょう行った2店はどちらも常連になってしまってます)で話をしたらなんと「ウチにありますよ」と。マジかー!と即買うという。最後にオチが付いた感じで、帰ってお昼ごはん食べて、涼しいところで寝転がって読んでるうちに、幸せに落ちました。午睡はサイコー😴😊「しろくまカフェ」たしかにおもしろい。

いまジャンプコミックス買うとステッカー6枚ももらえるそうです。こないだ「キャプテン2」の最新刊買って、でも6枚といっても知らないしワンピースは読んでないしと、唯一アニメは観てた「SPY×FAMILY」だけ選んだけど、さて、どこに貼ろうかな。

過ぎた昔は帰ってこない。でも30数年経っても、なじみある土地は、形を変えながら生きている。当時の雰囲気をそのままに、迎えてくれる。やっぱり好きだな。

10月書評の10

◼️ 早川茉莉編「なんたってドーナツ」

ドーナツは味や形状のほかに、言葉の響きそのものに魅力があると思う・・のは私だけ?

君とならドーナッツ♪以前、某有名歌手の某大手ドーナツチェーンのCMソングを聴くと無性にドーナツが食べたくなったもの。

ドーナツをテーマに様々なエッセイや小説風の文を41篇を収録した作品集。書き下ろしも多いとか。画家の岸田劉生や歌人の俵万智ら知ってる文化人の文章は興味を惹く。武田百合子「富士日記」の一部、東海林さだお、江國香織もある。

ドーナツは食べなかったけども文人の香り漂うカフェー・パウリスタにはたまに行っていた。また京都在住の方の有名店紹介の篇もあり、思わずメモる😎ドーナツって、おいしいと聞くと食べたくなるなやっぱり。六曜社のハードめのドーナツってどんなんだろう。

なかなかおもしろいのが
「お湯で一度溶いたような出がらし風コーヒーとの取り合わせも嫌いではなかった」
「濃くてまずいコーヒー、もしくは薄くてまずいコーヒー、あるいは味のしないコーヒーと一緒にもぐもぐ食べる」

なんて、おいしくないコーヒーとドーナツ、と書き方が2、3被ってて、その方がドーナツのおいしさが引き立つような気にさせられること。文章としてもなんか出来がいい感じがする。当たり前だがやっぱりコーヒーもうまいほうがいいですね。それこそパウリスタとか並みに。

お店のドーナツもさることながら、やはり母親らが作ってくれたり、一緒に作ったりした思い出話も多い。家庭で作る揚げドーナツ、遊びに行く時持たされたりした。砂糖の付きは悪いし、冷めると固い。お店のフワフワのものとは似ても似つかないが腹持ちはとてもいい。懐かしい味。

「穴を食べる」とは?🙄ふむふむ。ニューヨーク中のドーナツを記者が食べ歩いてみた記事、役得のお仕事!最後の方にはさまざまなドーナツのレシピが入っている。

ドーナツというのはやはり独特な形状が、愛らしいと言うか子どもにも大人にも好かれるというか、かぶりついて、空いたところから指でちぎる時の独特の動きであるとか、少し丸みがあって両側にちぎり跡が残る形も、愛嬌があって目にも楽しい。いやそうだ。

高校3年の時、ラグビー部が県で優勝した。その花園戦士の1人がラグビーボールのだ円形の魅力を綴った作文が良かったと先生が言っていた。形は大事。ドーナツは形重要。

もうひとつ、ドーナツの語源はdough(生地)とnut(木の実)だそうだが、意味はともかく、ドーナッツ、という響きが気に入っている。この名称が魅力的だからよけい人気なのかもと。しかしこの本に語源以外の言及はなかった。

ミスドも嫌いじゃない。某サッカー日本代表選手が作った地元のドーナツ屋さん、原宿で並んで買った人気店の一品など、特別感のあるドーナツもたまに食べたい。取り急ぎ京都買うか食べるかしよう😋

千早茜のエッセイのタネがおもしろい。村上春樹の篇も入っている。いわく

「揚げたてのドーナッツって(中略)何かしら人を励ますような善意に満ちていますよね。どんどん食べて元気になりましょう。ダイエットなんて、そんなの明日からやればいいじゃないですか」

全面同意。GOOD、いやEXCELLENT!

2025年8月24日日曜日

おやすみ週末

今週はいわばお休み週。さっと病院買い物行ってすぐ撤退の土日でした。

きょうなんか起きた時から熱中症アラート最高レベルで朝から確かに暑かった。で、地元の大型ショッピングモール行ってみたら、開店前からけっこうな人が(映画館は朝早くからやってるから10時の開店前でも中に入れるのです)若い女子中心で浴衣姿がゾロゾロ。ん?と

6人組ボーイズグループ「Lienel」(リエネル)というのがミニライブして、撮影会なぞあるそうで、たぶん夏祭りの装いだから浴衣が多かったのかな。それにしてもまったく知らないな😅

帰ってスポーツ観戦。高校野球⚾️は連日の熱戦で今年は魅力的なチームが多い大会だった。沖縄尚学も日大三も、攻守ともにガッチリして腰が強い感じ。決勝戦もがっぷりのロースコアゲームになった。沖縄に深紅の優勝旗が渡ることにはやはり感慨がある。日大三高が応援団への挨拶の後、観衆に向かって礼、甲子園球場の満員の観客から大きな拍手を浴びたシーンには感動した。今年も終わった。

バスケ🏀は高校の強豪チームをセレクトしたリーグ戦、日清トップリーグが開幕、オープニングゲームで福大大濠が新潟の帝京長岡を破り、きょうは福岡第一が持ち味のしつこいディフェンスを展開、インターハイ準優勝校、八王子学園八王子を大差で下した。今年は神戸にも来るから楽しみだ。

バレーボール🏐世界選手権が女子からスタート。日本🇯🇵は初戦のカメルーン戦、キャプテン石川真佑の対角のレフトアタッカーに21歳の北窓絢音、オポジットには高卒1年めの秋本美空を起用した。成長を促すスタメンで、ローテーションなのだろう。おもしろい。結果的に3-0でカメルーンを退けたが、課題も残った。大型化を促し、選手層をも厚くする、このトライはGOODだと思う。

プロ野球⚾️はライオンズがひさびさの連勝で気分が良い。最近沈んでいるからなんとか巻き返して5割を目指す途上。とにかく打て打て打て、やね🔥

8月書評の9

◼️ Authur  Conan  Doyle

"The Adventure of the Abbey Grange"

「アビィ屋敷」


ホームズ短編原文読み51作め。第3短編集「The Return of Sherlock Holmes (シャーロック・ホームズの帰還)」より。


ホームズが独自の判断により官憲に犯人を逮捕させなかった、という物語は「青いガーネット」をはじめいくつもありますが、このお話もその1つ。警察の見方は偏っていて、それをホームズが崩す、というパターンにも乗っ取っています。が、珍しくもだいぶ迷います。端折っても、ちょっとややこしい物語、なんとかスピードアップさせて書きます。


1897年、「帰還」の後ですね、の凍てついた冬の夜、ホームズが寝室までやってきてワトスンを起こします。


"Come, Watson, come!"

 "The game is afoot. Not a word! Into your clothes and come!"


「起きろワトスン!獲物が飛び出したぞ!黙って服を着ろ、すぐ行くぞ!」


これって、シャーロッキアンには有名なセリフなのです。The game is afootはホームズらしく、事件だぞ!にしてもいいかもしれませんが、長年触れている身にしてはこの訳がしっくりきますね。シェイクスピアの「ヘンリー5世」にも出てくる言葉だとか。シェイクスピア好きのドイル、そしてホームズだからなるほど、です。


さて、というわけで2人、10分後には馬車の中。ロンドンの南東ケント州、チズルハースト駅までショートトリップとなりました。


今回は邸宅での殺人事件で、ホームズのやり方を敬愛しているスタンリー・ホプキンズ警部からの呼び出しでした。


ところが、敷地内を通って邸宅までいくと、ホプキンズの言うことには、意識を取り戻した婦人が事件の次第を語ってくれました。親父と息子2人の強盗団、ランダル一家の仕業ですよ、最近も近くでひと仕事してます。もうほとんど片付いたも同然です、とのこと。ともかくも婦人の話を聞くことになりました。


このお屋敷は、ケント州の富裕な准男爵であるサー・ユースタス・ブラッケンストール卿のものでした。妻であるメアリー・ブラッケンストール夫人は金髪に青い瞳の麗しい女性で、ワトスンは


Seldom have I seen so graceful a figure, so womanly a presence


こんなに優雅な容姿、たおやかな物腰、美しい顔はこれまでほとんど見たことがない、


と形容しています。彼女は今の長椅子に横たわり、やつれた様子で片目の上に紫色のこぶが痛々しく、背が高くいかめしそうなお付きのメイドがせっせと手当をしていました。


ホプキンズにすでにした話をもう一度、と言われ、身震いし両手に顔を埋めます。その時、青と銀のガウンの腕の袖から見えた腕に2つの赤い斑点がありました。別の傷もありますね、と驚いて尋ねるホームズに、メアリは、今回の件とは関係ないです、と慌てて傷を隠します。


南オーストリアから初めてイギリスに来たメアリはユースタス卿と知り合い、1年前に結婚した。しかし堅苦しいイギリス社会の中、ひどいアルコール中毒の夫との暮らしはまったく幸せではなかった。


加えて、イギリスの法律では一旦結婚したら離婚というのはかなり難しいことだった、というのは他のホームズシリーズにも出てきた気がします。メアリはこの国の呪わしい法律、と少し興奮しますが、すぐに家政婦になだめられ、今度はすすり泣き始めます。


屋敷では使用人は全員今我々がいる家屋ではなく新しい棟で就寝する。だからこの家屋での物音はまず聞こえない。強盗は家の内情を知っていたのだろう。自分はここの上の階が寝室で、私のメイドのテリーザだけは、はさらに上の階、私の寝室の上の部屋で休む。


ユースタス卿は10時半ごろ自分の寝室へ行った。私とテリーザだけが起きていて、テリーザは自室にいた。私は11時ごろまでこの居間で本を読み耽っていた。その後習慣で部屋の見回りをした。台所、食器室、銃器が置いてある部屋、ビリヤードルーム、応接間、最後に食堂と。出入りのできるフランス窓のある食堂で風を感じ、分厚いカーテンをめくると目の前にランダル一味の姿が。すぐに私に襲いかかり、目の上を拳で殴りつけた。意識を失っている間にベルの紐で椅子に縛りつけられ、口も封じられていた。


そこへサー・ユースタスが入ってきた。物音を聞きつけたのか手には棍棒、ランダルの親父に殴りかかろうとしたところ、逆に火かき棒でしたたかに頭を打ち据えられた。私はまた気を失い、次に目が覚めた時に、一味は銀食器を集め、棚に入っていたワインを開けて、それぞれグラスを手にしていた。しばらく相談していたが、私がしっかり縛られているのを確認すると何もせず出て行った。


15分くらいかかってようやく口のいましめを解き叫び声を上げるとテリーザが駆けつけて家の者に知らせ、警察を呼びにやったー。


ホームズはテリーザに質問し、テリーザが自室の窓から3人の男がうろついているのを見たこと、メアリの叫び声で走って降り、サー・ユースタスの血や脳がメアリの服まで飛び散っているのを見たことなどを確認しました。テリーザはメアリの乳母で長年仕えているメイドだとはホプキンズの話、一行は食堂の調査に向かいます。


ワトスンいわく、ホームズの目から熱意は消えていたと。まあもう地方の強盗を捕まえるだけなので推理も何も、ですよね。


広い食堂ではマントルピースのそばにメアリが縛りつけられていた椅子があり、赤い紐が交差して下の横木に結ばれていました。暖炉の前の獣皮の上に、ユースタス卿の死体がありました。仰向けの立派な体格、黒い髭の顔は歪んで、頭部にはひどい傷、そして部屋中に恐ろしい痕跡が飛び散っていました。そばには折れ曲がった火かき棒がありました。


ホプキンズは犯人逮捕に自信満々、すでに非常線など各種手配を進めているとのこと。ただ、警察は彼らをすでにマークしていたのに、なぜこんなことをしたのか、との意見にホームズは、確かに、顔を見られてるからレディ・ブラックンストールも始末するのが普通だな、とホームズ。


ワトスンの気絶してたから見てないと勘違いしたのかも、という意見はスルー。


「被害者に関してはどうなんだ?変な話が出てきてたが」


ホプキンズによれば酒がなければ気のいい男たが酔うと悪魔だと。夫人の犬に石油をかけて火をつけたり、デカンタをテリーザの顔に投げつけたり、警察の世話になりかけたこともあるとか。


話の途中で、ホームズは夫人が縛られていた赤い紐の結び目、切れ目を調べていました。切れ目は引き切ったようにほつれていました。


"When this was pulled down, the bell in the kitchen must have rung loudly."


「これを引っ張った時、台所のベルは大きな音で鳴ったはずだ」


台所は家屋の一番奥だから聞こえませんよ、というホプキンズにホームズはたたみかけます。


"How did the burglar know no one would hear it? How dared he pull at a bell-rope in that reckless fashion?"


「強盗が誰にも聞こえないとどうやって分かる?なんだってこんな無鉄砲なまねをわざわざやったんだ?」


するとポプキンズはその疑問を認めながらも内通者がいたに違いありません、と抗弁します。使用人はみな悪いことをするような者じゃないんですが、ともこぼしつつ。


ではデカンタを投げつけられた者が疑わしいかも、でもテリーザがそんなことをしたら女主人への裏切りになるな、the point is a minor one,まあ些細なことだ。君がランダルを捕まえれば共犯者は分かるだろう。


ホームズはフランス窓あたりを調べて足跡がないこと、夫人のロウソクの灯りがあったことなどを確かめます。盗られたのは銀食器6枚。夫人の話によれば、ユースタス卿を殺したことで強盗たちも慌てていたのでは、とのことでした。


サイドボードのには3分の2ほど残ったワインの瓶、3つのグラスが置いてありました。ワトスンは3つともにワインの色が残り、1つに澱が付いているのに気がつきます。


A change had come over Holmes's manner.

ホームズの態度が急に変わった。


コルクは家にあるコルク抜きではなく、携帯用のもので開けられている、犯人は持っているだろうとホームズ。Excellent!賛辞を送るホプキンズ。夫人は3人ともがワインを飲んでいるのを見たと言った。しかし・・注目に値する、とホームズは悩んでいる様子。


まあ、自分のようなものは単純な説明より複雑なものを探してしまうのだろう。単なる偶然だ。じゃ、失礼するよ、ホームズとワトスンは駅へと向かいます。


なんかこう、ホームズも若い優秀な警部の前で、自分は力みすぎてるかもと、どこか老いをも感じてるような雰囲気ですねー。しかし、です。


帰りの列車でホームズはこの事件は明白だ、という話をしながらもぼんやりと考え込んでいました。と、途中の停車駅のホームをゆっくりと動き出したタイミングで突然立ち上がって飛び降り、ワトスンをも引っ張り降ろします。ワトスンに謝りながら、


"Every instinct that I possess cries out against it. It's wrong – it's all wrong – I'll swear that it's wrong."


「ぼくの全ての直感が本能的に反駁しているんだ。おかしい、絶対におかしい、誓ってもいい、間違ってるんだ」


そうこなくっちゃ、ですねd(^_^o)


レディ・ブラックンストールの話は完璧、テリーザの裏付けも。きっかけは3つのワイングラス。しかしホームズは疑惑のある部分をワトスンに列挙します。


ランダル一家は2週間前に近くで荒稼ぎをした。顔写真も新聞に載った。すぐに動くのはおかしいし、強盗に一役買ってもらおうと話を作るのはいかにもありそうだ。危険を冒してすぐに別の犯行はしない、さらに強盗があんな早い時刻に押し入るのは普通じゃない。女性を殴るのも不自然だ、叫び声を上げると想像できそう なものなのに。殺人も不自然だ。数的には圧倒的優位なのに。あんな少ない戦利品で満足はしない。取るものは沢山目の前にあった。そして酒を飲み干さないのも不思議だ。


ここの段は、unusual、unusualと何度も重ねられてます。肝心なところでテンポの良い文章を使うのはドイルの特徴ですね。「ボヘミアのスキャンダル」を思い出します。


そしてワイングラス。澱おりは1つのグラスにしか残っていなかった。これは、2つのグラスだけが使われ、両方の中身が3つめに注がれたことを示している、わざと3人が使ったと見せかけようとした、とホームズ。


チズルハーストの屋敷の人々はホームズたちが舞い戻ってきたことに驚きました。それをよそに食堂に鍵をかけてホームズは前回と違い気の入った綿密な調査開始。壁、カーテン、敷物、夫人が縛られていた紐、そしてマントルピースの上に登り、さらに壁から張り出した棚に膝をのせ、切れたベルロープに手を伸ばしてみます。あと数インチというところまで行くと、満足して降りてきました。


It's all right.うまくいったぞワトスン、あやうく生涯の大失敗をするとこだった、とホームズ。


You have got your men? 犯人たちが分かったのかい。するとホームズはー


"Man, Watson, man. Only one, but a very formidable person. Strong as a lion – witness the blow that bent that poker! Six foot three in height, active as a squirrel, dexterous with his fingers, finally, remarkably quick-witted,for this whole ingenious story is of his concoction. Yes, Watson, we have come upon the handiwork of a very remarkable individual."


「犯人たちじゃない、ワトスン、たったひとり、単独犯だよ。ライオンのように強いーあの火かき棒がひん曲がったんだから。身長は6フィート3インチ、約190cm、リスのようにすばしこく手先が器用、最後に驚嘆すべき頭脳の切れ、この作り話はこの男がでっち上げたものだ。そうだ、ワトスン、僕たちは並外れた人間の、いわば作品を目の当たりにしてるんだよ」


ベルの紐ー引っ張って切ると、ふつうはワイヤーとのつなぎ目でちぎれるはずが、それより3インチ下で切れている。そこがほつれていたから切れたと見せかけるため、椅子の方の切れ端はナイフでわざとほつれさせた。本当はマントルピースから張り出し棚に膝をつき、切った。張り出し棚には痕が残っていた。そして上側の切れ端はほつれてない。紐が必要で、しかしベルが鳴るのを防ぐためわざわざそうした。


手が届いたということはホームズより3インチは背が高いということ。


またメアリが縛られていた椅子の座面には血がついていた。座らされていたなら付着しようがない。彼女はサー・ユースタスが死んだ後に座らされた。黒いドレスにはこれに対応する痕があるはず。


ホームズはテリーザと話をすることにしました。


無口で疑り深いテリーザをも愛想良くさせてしまうのがホームズの技。ちょっと時間はかかったようですが笑。テリーザはユースタス卿への憎悪を隠そうともしませんでした。


デカンタを投げられたのは本当です。あの男が奥様の悪口を言ったので反論してやったのです。奥様をほっといてくれるなら1ダース投げられてもかまいませんよ。


あいつは奥様を虐待していました。あなたが奥様の腕に見た赤い斑点、あれは帽子用のピンで刺されたものです。神もやつを悪魔と呼ぶのをお許しになるでしょう。18か月前、奥様にとっては初めての航海で、やつは最初はこびへつらい、地位と財産と小狡いやり方で奥様を射止めました。いつ会ったかですか?ロンドンに来たのがおととしの6月、それからすぐ、7月です。2人は去年の1月に結婚しました。


次はメアリでした。同じ長椅子に寄りかかり、少し元気が出たように思えました。ホームズは単刀直入に訊きます。


"What do you want me to do?"

「私に何をお望みなのですか?」


"To tell me the truth."

「本当のことを話していただきたい」


"Mr. Holmes!"「まあホームズさん!」


無駄です、私のささやかな評判をお聞きになったことがおありかも知れませんが、それを全部、あなたの話がうそ、でっち上げという事実であることに賭けますよ。


場の空気は一気に緊迫しました。ホームズは何度も促しますが、ためらいの色を見せつつ、メアリはなにも翻意しませんでした。


このへんはドイルの上手さを表しているかと思います。調査は続きます。


ホームズは白鳥が浮かぶ敷地内の池を見て、ホプキンズ宛に走り書きのメモをしたため、門番に託します。


屋敷を出たその足で船会社に出向き、マリアたちがロンドンに来た1895年6月のアデレードーサウサンプトン航路を調べます。するとその月に着いたのは1隻だけで乗客名簿にメアリとテリーザの名もありました。この船はいまスエズ運河の南を航行中、乗員は1名を除いて同じ、一等航海士のジャック・クロッカーが2日後に出港する別の船の船長に昇格していました。


クロッカーは、会社に並ぶ者がいないほど素晴らしい経歴でした。しかし正直で優しい反面、興奮しやすく、荒っぽい向こう見ずな所がある、という情報を得て、ホームズたちは船会社を後にします。


ホームズは帰路いったんスコットランド・ヤードに立ち寄りますが、何もせず、電報を1本打ってベイカー街へ。


ホームズはワトスンにこぼします。

どうしてもできない、令状が出たら彼を救うことは絶対にできないんだ、これまでのキャリアで、犯人を見つけることで、犯行の害以上の悪影響を与えてしまったと感じたことがある。法律より自分の良心を取りたい。


夕方にホプキンズが訪ねて来ました。


I believe that you are a wizard,Mr.Holmes.

I really do sometimes think that you have powers that are not human.


「あなた魔法使いですか、ホームズさん。私は時々本当にあなたは人外のものではないかと思います」


開口一番、魔法使い扱い笑。意訳してますので悪しからず。走り書きのメモは敷地の池を調べてみろ、ということで、捜索したところ銀食器が出てきたからですね。しかもホプキンズいわく、ランダル一家はニューヨークで捕まった、と。


ホプキンズは強盗団はランダルだけではない、銀食器は見咎められるのを恐れて一時的に隠したんだろうと予測してすぐ戻ろうとします。なにかヒントでもありませんかね?と訊く若い警部にホームズは、blind、目くらまし、の可能性を示唆したじゃないか、と。銀食器がなぜ池にあったか?それは欲しくもないものを取ったから早く手放したかったのかも、とホームズは彼に仄めかしていたのです、が、ホプキンズは考慮に入れず、帰って行きました。


"The time has come. You will now be present at the last scene of a remarkable little drama."


「いまがそのときだ。君はささやかな、驚くべきドラマのラストシーンに立ち会うんだよ」


夕食後、ワトスンに告げたこの言葉。1人の男がベイカー街を訪ねて来ました。


巨体、金髪、青い目、金の口髭、灼けた肌の青年。少々興奮しているようでした。


"Sit down, Captain Crocker."


船会社で調べたクロッカー船長。電報を見て、指定された時刻に来ました。あなたから逃れるすべはない。私をどうするのか、はっきりおっしゃってください。


ここ、難しいですね、訳文は、クロッカーがホームズに敬語を使わず、荒くれっぽく喋っているものと、懇願調に敬語で話しているものとあって、かなりニュアンスが変わってきます。船員だし、興奮しているはずだしで荒くれ調もハマっているのですが、普段は優しい正直者という評判なのでやはり敬語かと。年下、そして曲がりなりにも犯罪者、なのでホームズの話し方は敬語なしにします。


ホームズはかなり慎重に、ゆうべアビィ屋敷であったことを残らず話せ、と言います。付け足したり隠しごとをしたら窓から呼子を吹いて警官を呼ぶとまで脅しています。クロッカーは真実を話したらどうなるかしばし考え込み、

"I'll chance it"

いちかばちか、やってみよう、と説明を始めます。この言い方は劇中でホームズも使っています。


後悔することなど何もない、何度だってやるでしょう。ただメアリを困らせることになると思うと憂鬱だ、しかし他に何ができたか伺いたい、とクロッカー。


出逢いは航海でした。一等航海士の時、メアリと船で会ってから、クロッカーは心を奪われました。なんか、当直の時夜の闇の中でメアリが踏んだデッキにキスしてたとか、ちょっと恋狂いすぎて気持ち悪い😅


特段何もなく航海は終わり、やがてクロッカーはメアリの結婚を知ります。自分は船乗り、地位も財産もある相手と幸せでいるならそれでいい,と船長となる船の進水が長引き、待っている間に田舎道でテリーザとバタッと出会ってメアリの窮状を耳にし、怒りにわれを忘れます。あの人の靴を舐める値打ちもないくせに、厚かましくも手を上げたなんて、酔っ払いの犬め!


ユースタス卿はひどい、でもクロッカーも直情すぎてコワい。テリーザとはもう一度会うことにし、そしてメアリ本人にも再会します。が、一度きりでその後メアリはクラッカーと会おうとはしませんでした。


しかし出航が近くなり、決心して、テリーザと打ち合わせ、昨夜屋敷に忍んで行きました。遅くまでメアリが読書している食堂の窓をひっかきました。迷った末、メアリはクロッカーを凍てつく寒さの庭に立たせたままにはしませんでした。フランス窓から中に入って虐待された話を聞くと、また気持ちが昂ってきました。


そこへ、棍棒を持ったユースタス卿が激昂して飛び込んできました。悪魔と化していた准男爵は、女性に言うには最低の言葉でメアリをなじり、棍棒で殴りつけました。そしてクロッカーに殴りかかりました。


クロッカーは卿の攻撃を受けながらも火かき棒で反撃、力任せに脳天を打ちました・・後悔はしてない、と。


"Was I wrong? Well, then, what would either of you gentlemen have done, if you had been in my position?"


「間違っていたのでしょうか?お2人のどちらかが私と同じ立場にいたらどうしますか?」


殴られた時のメアリの悲鳴で、テリーザが降りてきた。泥棒のせいにしようと2人で考えた。気を失っていたメアリに、気付けのためにワインを呑ませた。自分もひと口呑んだ。メアリには繰り返し作り話を教え込んだ。マントルピースの上、さらに張り出し棚に膝をおいてベルロープを切り、片方の先をナイフで引きちぎったようにほつれさせた。銀の食器をかき集めて、出て行って15分後に騒ぐように言い置いて屋敷を出た。銀器は池に捨てた。


ホームズは身軽に上まで登れること、特有の結び目から船乗りではないかと考えていました。ホームズはまず、逃亡しろと言います。その後でことを表沙汰にすると。


するとクロッカーは、それではメアリが共犯とされるじゃないか。自分だけ逃げるわけにはいかない。断固拒否の姿勢を示した後、なんとか彼女はそっとしておいてもらえないか、と持ちかけます。


ホームズは、なにあなたを試してみたのですよと、ラブアフェアだからか、このへんまだるっこしい笑。ホームズが言うには、このまま事実通りに警察に持って行って、この事案でクロッカーが無罪になるかどうかは微妙です。シロートの見立てですが、ひどい状況ですし、過剰防衛となるやも知れません。また夜中に屋敷に忍び込んでの、人妻との逢引きです。動機は、このままのアオい話し方だと利己的と捉えられるかも知れません。


私としては同情的ではあるが、責任は重大だ。では裁判形式でやろう、とホームズ。裁判長はホームズ、陪審員はワトスン、クロッカーが被告です。


"Now, gentleman of the jury, you have heard the evidence. Do you find the prisoner guilty or not guilty?"


「陪審員の諸君、証言はお聞きになった通りです。被告は有罪でしょうか、それとも無罪ですか?」


"Not guilty, my lord"


「無罪とします。裁判長どの」


"Vox populi, vox Dei. You are acquitted,Captain Crocker. So long as the law does not find some other victim you are safe from me. Come back to this lady in a year, and may her future and yours justify us in the judgment which we have pronounced this night!"


「神の声は民の声、キャプテンクロッカー、君を無罪とする。法が新たな被害者を見出さない限りにおいて、汝は自由の身である。1年以内に彼女のところへ戻って、我々が今夜下した判決が正しかったことを2人の未来で証明するように!」


終わりです。ちょっとややこしい解決への道のりで、長くなりました。


恋愛、恋情が動機、もしくは重要な要素になっているホームズ譚はいくつもあります。「緑柱石の宝冠」「独身の貴族」「ボール箱」「マスグレープ家の儀式書」「ソア橋」「這う男」「高名な依頼人」「三破風館」・・長編の「緋色の研究」もそうですね。それだけ恋愛の情というのは犯罪の動機としてうなずけるものなんでしょう。


今回は、珍しくホームズが迷い諦めかけるところがポイントですね。なんか人間的です。推理小説にはなんでも揃いすぎている殺人事件はかえって不自然、という見方がありますが、それを地で行く感じです。


なお、原題のAbbeyには修道院や教会といった意味があり、またgrangeは豪農の屋敷、農場という意味があり、タイトルが「僧坊農園」となっているのもあり「アベイ農園」としてあるものもあります。


Abbeyに関連する修道院はまったく出てこないし、農園もまったく関係なさそう。で、発音は「アビィ」なのでこのタイトルがしっくり来ますね。


以上長々と・・この書評完読した方もしいらっしゃいましたら、読んでいただきありがとうございました。感謝です😊





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