2016年8月1日月曜日

7月書評の1





土日の1日は外に出て、主に書籍をあさる、のが週の恒例だが、この殺人的な暑さに辟易して家に籠る。2日で2冊。読書は進むが何もしない。なぜ夏はこんなに暑いのだろう。薬師寺とか行きたいところいっぱいあるのに足が向かない。学生時代、秋休みにヒマを持て余していたのがもったいなく思える。まあ、金も無かったし、九州は行くとこ限られてたんだけど、当時は。

朝井リョウ「世界地図の下書き」

うーん、子供の悲しい話は、胸に来てしまうな。

小学3年生の太輔は、児童養護施設「青葉おひさまの家」に来たばかり。同じ班には、同級生で関西弁の淳也、1つ下の美保子、淳也の妹で2つ下の麻利と、中学3年の佐緒里がいた。施設ではバザーで皆が作ったキルトを売ることになっていたが、当日誰かがキルトをめちゃくちゃにしてしまう。

それぞれが、親や親代りの親族に問題があって施設に入っている。親年代からしたらやはり痛々しくて、考えてしまう。

これは児童文学のジャンルに入るんだそうだ。最近多い。状況説明から入り、それぞれの事情が動いた後、それらが続き、絡みながら、クライマックスへ向かって突き進む。

仕掛けは面白いし、映像的で、パワフルだ。朝井リョウ独特の表現の妙もあり、時折クスッとなったりする。バックボーンが辛いだけに、逞しさと、必死さが目立つ。いやーなかなか。

組み立てはテクニカルで、読み込んでしまうし、ひとつに向かって分かりやすい。ただ、朝井リョウらしさが、今回は、おとなしい、かな。

ともあれ、また次作が楽しみだ。

川上哲治「遺言」

巨人最強時代の監督。厳しい。でも、それが心地よかったりする。

2001年の発行、川上氏81歳の時の書である。日々技術が進歩しているスポーツのとしては古いものだが、興味を覚えて読んでみた。

もちろん、その時代のプロ野球のことも書いておられるが、論の中心は、自分がジャイアンツV9の監督時代のことだ。選手に厳しい、コーチに厳しい。移動日でも練習をする、球団を家族だと考えることなどがつらつらと書き連ねてある。

古い野球観、と言うのは簡単だが、昨今のプロ野球の、伸びきれない選手、勝ちきれないチーム、プロ野球ブーム、などを見ていると、こんな厳しさとか哲学はむしろしっくり来るように思える。巨人を中心にした1リーグがいいのではないか、という主張も、この本を書いた頃と氏の活躍した時代を考えれば、今は許す気にもなって来る。

長嶋茂雄氏が現役を引退した時、時のオーナーは川上氏に、長嶋の好きにやらせたいから君は少年野球教室をしていろ、と命じたらしいが、私はその恩恵に預かり、福岡で野球教室に参加した。そこで教えてもらった、投げる時は、投げる手の甲が正面を向くように、というのはその後ずっと覚えていてその通りにやっていた。

東京に暮らしていた際、犬の散歩をしていて、たまたま氏の自宅を見つけたこともあった。熊本工出身だけに愛着もある。

残念ながら鬼籍に入られたが、このようにまっすぐな、思わず畏怖してしまうような野球人がまだまだいて欲しいと思う。

舞城王太郎「阿修羅ガール」

マシンガン文章と発想飛び飛びはまあ持ち味か。相変わらずそれなりに面白い。

アイコは合コンの帰りに佐野とラブホに立ち寄ったが、コトの後猛烈にムカつき、佐野の顔面にキックをかまして帰宅する。翌日、女子トイレに呼び出されたアイコは、佐野が行方不明で、切断された足の指と脅迫状が佐野の両親に届いた、と知る。

人は物事を考える時、かなり短い時間のうちに、ものすごく沢山のことを心に浮かべているものだ、と私は思っている。舞城王太郎を読んでいつも思うのは、それを全部言葉にしようとトライしているのでは?という事だ。

モノローグ形式で、マシンガンのような独白があり、バイオレンスもありで、今回は物語の真ん中に、心象風景や、不思議な現象のつなぎ編とでもいうべき章が入っていて、かなりテクニカルだ。発想があちこちに飛んで、また映画をインスパイアした設定の章もあり、ちょっとだけ洒落てもいる。 

舞城王太郎は覆面作家で、この作品で三島由紀夫賞を獲った時、授賞式を欠席した。また、たびたび芥川賞の候補に挙がっているが、審査員の作家さんにも推す人がいる一方で、石原慎太郎には「タイトルを見ただけでうんざりした」宮本輝には「面白くもなんともないただのこけおどし」などと言われた。周囲でも好きな人は好き、という感じである。

私はデビュー作「煙か土か食い物」、「世界は密室で出来ている」、「ビッチ・マグネット」と読んだが、たま〜になら読むから、そのハチャメチャさを続けてて欲しいな、てな感じだ。まあ、確かに純文学の香りもしないでもないのだが。

長野まゆみ「天然理科少年」

長らく探していた本。見つけた時はなかなか感動した。中身は、うーむ、軽いミステリーホラー?  

父と共に居所を転々とする生活を送っている男子中学生、岬は、新たな引越しの際、とある山間の中学校に転入する。駅で出会っていた白水(しろうず)と再会した岬は、学校を休んだ彼の見舞いに行こうとするが、クラスの中心的存在、西浦から、関わらない方がいい、と止められる。

いつも通り、もう少し少年同士の機微を丹念に描くかと思いきや、話は意外な方へ進んだ、という感じだな、今回は。まあでも好きな方向ではあるんだけど。

こちらの方は相変わらず、小難しい当て漢字を使ったり、自然の動植物を詳しく取り入れたり、中にはたぶんこれ実在しないよね、というテイストのものを混ぜたりするレトロな感じは独特で楽しく、くすぐるところはあった。

どこかで感動できる本、と読みかじり、ずっと一般書店でも探していたが、なかなか無かっただけに、ブックオフでいい状態で見つかった時はちょっと震えた。

感動したか、はともかくとして、長野まゆみはやはり読ませる。フツーじゃない感じがいい。また、次を目指そう。


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