◼️「茶席の菓子」
茶菓子って、美しい。
「日日是好日」にカラーの写真が掲載されていて俄然興味を持った。ビジュアルで楽しむ本。
2ヶ月ごとに章が区切ってあり、ひと月ごとの季節の菓子が紹介されている。生菓子、干菓子。だいぶ前の本ではあるが、お店をwebで調べたりすると、全然まだあったりして嬉しい。老舗の菓子屋に詳しくなるのも楽しい。やっぱり京都の店が多い。妻にはそんな有名なのも知らなかったの的なことを言われるが、知らないから楽しいのさ~と気にしないダンナ。
スケジュール的にもう4月は買いに行けないから5月のものを見る。章頭の言葉もシンプルで爽やか。
「青空と青葉の皐月は初風炉のとき
潔さ、すがすがしさが身上の月」
京都・末富の「落とし文」
練り切りの緑の若葉が、中の紫のこしあんを包み込んでいる、と思う。いかにも的で目に鮮やか。秋には色づいた紅葉色になる。
同じく末富の「唐衣」
こちらは杜若を模したもの。しっとりしたういろう皮を花の形にたたみ、中にあん。品が良くて美味しそう!
虎屋の「菖蒲(あやめ)饅頭」。蒸菓子で緑に菖蒲の絵柄、頂点にあん?の紫のが配色してある、爽やかなおまんじゅう。
東京・ささまの「深見草」
ふかみくさ、は牡丹のこと。牡丹の大輪の花びらを濃いピンクの練り切りでかたどっている。中には小豆のこしあん。華麗。ささまは神保町の近くで、月替わりで菓子を出しているそう。行きたい!食べたい!でも私の出張っていまは昼日中に街をうろつく仕事じゃないんだよねー。
5月だけでこんなに楽しめる。すっかりマイブーム。京都の川端道喜も気になるし、この本には載ってないけど大徳寺のとこの松屋藤兵衛で松風買いたい。調べ始めて、完全予約注文の名店が多いのも分かった。
最後は愛知・美濃忠の「初かつお」。ういろうと葛を合わせて薄紅に染めた、羊羹のようなもので、小口切りにすると鰹の切り身のような縞目が現れる。色鮮やか。
先日名古屋出張があって、駅の高島屋に見に行った。ふつうの羊羹サイズのものはすでに売り切れ。ハーフのもので約1300円。正直たったこれだけで?という思いもあり、時間もなかったから見送った。webで見ると2~5月の限定販売で、都市圏は名古屋でしか手に入らない。めったに出張するとこでなし、購入しなかったからよけいに、あー買っときゃよかった~と後悔したのでした。
茶菓子はもちろんお茶席のもの。その取り合わせの美味しさも知っているつもりだけれど、苦ーいコーヒーでもいただいてみたいな、と思っちゃうのでした。叱られるかな。
詳しい方居ましたらぜひ美味しい茶菓子をお教えください。。
◼️「芭蕉紀行文集」
「笈の小文」がいい。芭蕉の紀行文は面白みと交友の豊かさと、わび、が盛り込まれている。
「野ざらし紀行」「鹿島詣」「笈の小文」「更科紀行」「嵯峨日記」が収録されている。旅の細々した出来事や多くの門人たちとの触れ合い、土地の風情を描き、芸術論もある。決めどころで俳句、というのはずるいくらい恰好いい形になっている。
「おくの細道」はひとつの出来上がった芸術品。こちらは小品の集まりで有名な句も少ない。しかしやはりものすごく歩き回っているし、底流に流れるものはよく似ている。
この本は、探した。日本画家千住明氏の著書で、「笈の小文」に「風雅におけるもの、造化にしたがひて四時を友とす」とある、というのを見たから、芭蕉の芸術観を読んでみたくなった。自然の造形に従って、四季を友とする、という意味合いだろうか。
この後、「見る處花にあらずといふ事なし。おもふ所月にあらずといふ事なし。像(かたち)花にあらざる時は夷狄にひとし。心花にあらざる時は鳥獣に類ス。夷狄を出、鳥獣を離れて、造化にしたがひ、造化にかへれとなり。」と続く。訳がついてない本、でもなんか分かる気がする、でしょ?
今回もう一つ目を止めた文章があった。「きみ井寺」の最初の方。
「山谷海浜の美景に造化の功を見、あるは無依の道者の跡をしたひ、風情の人の實をうかがふ。猶栖をさりて器物のねがひなし。空手なれば途中の愁もなし。寛歩駕にかへ、晩食肉よりも甘し。とまるべき道にかぎりなく、立つべき朝に時なし。只一日のねがひ二つのみ。こよひ能き宿からん、草鞋のわが足によろしきを求んと斗は、いささかのおもひなり。時々気を転じ、日々に情をあたらむ。もしわづかに風雅ある人に出合ひたる、悦びかぎりなし。」
芭蕉は、由来ある跡地、史跡などに往時と現在を思い感動する場面もよくあるのだが、身軽に、自由で、自然な感性の旅を楽しんでるように見える。ピュアで感受性が強く、鋭い。それともちょっと演出した上から目線?・・そうは思えないな。
俳句を2つ。「笈の小文」、いまの愛知の鳴海に泊まったときの句。
星崎の闇を見よとや啼く千鳥
鳴海に近い星崎は千鳥の名所だった。
その後南下し、渥美半島の根元、吉田に泊まり、朝出発の際、冷たい海風に吹かれて。
冬の日や馬上に氷る影法師
一見して寒さが伝わってくるな、と感じる。
いくつか余談を。千住氏の著書で読んだことを、ものすごく本を読んでいる後輩に話すと、やはり「笈の小文」は面白いです、と言っていた。確かに、東海地方から、和歌山、奈良、須磨、明石、淡路島というルートは関西に住むものには親近感が湧く。上に挙げた芸術論も心にしっくりと来る書きっぷりだった。読んでよかった。