2015年10月26日月曜日

急寒




東京に着いた時は、関西より一段寒いな、時は思ったものだったが、その後は結構暑かった。ホテル3泊4日暮らしも部屋がちょっと暑いな、と感じていた。

さて、着いて最初は東京ドーム近辺。終わって品川で野球好きの男3人で、日本シリーズには投手1人打者1人の補強選手制度を、とか野球版の天皇杯開催を、とか焼き鳥食いながらガーガー話す。

翌朝は人に勧められていたロイホのパンケーキの朝食。また3人揃う。そこから長い仕事開始。屋内ひと場所、タバコも吸えるからいいのだが、私の1年間のうち、最も大きなイベント、あれこれと気を遣う。終わった時にはとりあえず安堵。22時ぐらいからまた酒盛り。

ぐったりでホテルでシャワー浴びたら力尽きる。翌日は出張休日、のはずだが忙しい秋、午前中から電話の嵐、休めるはずもなくずっとiPhone片手に仕事をしていた。

翌朝チェックアウトして、昼間は仕事、夜はご接待。お店が谷中で、下町の観光地。皆が坂の上から三丁目の夕日を撮影していた。東京6年間いたけどさっぱり知らなんだ。終わりで20時30分の新幹線で帰る。疲れた×3くらい。金曜も飲みながら食べたから4連戦。身体バテバテ。久しぶりの深夜の関西は何と雨が降っていて、えらい寒い。

ここ数日天気予報なんて気にしたことなかったけど、気温えらく低くなりそう。日曜日外出したが、風が冷たくて厚着。街にはダウンジャケット着てる人もいる。息子のゲームとコロコロコミック買って帰る。

今年は残暑が無かったぶん、秋冬が来るのがかなり早い気がする。いつもは11月後半から寒くなるものだ。もう来週には最低気温が10度を切り、最高も15度くらいとか。急に来た寒さ。早くも冬を感じる多忙の日々なのだった。

2015年10月20日火曜日

捜索





週明けから忙しく、バタバタバタ・・。もう時期的に来るとこまで来ている。

そんな中、我が家の愛読書「ダイヤのA」が佳境を迎えている。主人公・沢村栄純たちの青道高校が秋の東京大会決勝戦、怪物スラッガー・轟雷市(とどろき・らいち)のいる新鋭・薬師高校に1点ビハインドで最終回の攻撃を迎えているクライマックスの場面、勝てば春の選抜甲子園当確、負ければ当然当確は無し(実際は東京以外の関東枠の選考に組み入れられる。チャンスが無いわけではないが冬を越すまで結果待ち)。

息子は、本当に楽しみにしていた。「どっちが勝つのかなあ!?僕は青道が負けると思うなあ!」と嬉しそうにのたまい、毎日次の巻を買ってきたかどうかを訊いてくる。

パパは、知らんぷりで「きょうは買ってきてないよ。」と答えるのだが、実は陰で苦労をしていることは誰も知らなかった。

この「ダイヤのA」46巻、会社帰りに立ち寄るいつもの本屋に無いのを皮切りに、どこに行ってもなぜか無い。最新の47巻が出たばかりだから引っ込めちゃったのかもと思うが、あんまり無いので不自然極まりない。クライマックスだから人気なのだろうか?

先の日帰り出張でも、新大阪の本屋も品川の本屋にも見事に無い。帰ってきてグランフロントの紀伊国屋にも無い、最後の望みで阪急との連絡橋近くのbookstudioに行ってみたら、ようやく1冊見つけた。この時の喜びはいかばかりか、世の中で誰も分かんないだろう(笑)。帰りの電車で一気読み。感動した。実は結末はwikiを引いて知っているのだが、それでも、良かった。

お勉強前の息子にまた訊かれたが、ここでバラしては机に向かわないので、無いと言っておいた。最近朝はなかなか起きてこないから、起こす時に使おう。

それにしても夏に1巻から買い始めて10月で46巻。漫画読みのパパ的にはこんなもんか、だがドカ買いは久しぶり。ハマると買っちゃうからなるべく興味を持たないようにしているし(笑)。たまにはいいか。

チームのキャラそれぞれ、関係者まで愛せるし、相手チームも好ましい。主人公の成長は感無量だったりする。パパは轟雷市が好きである。身体は大きく無いが、怪物クラスの天才強打者。目が光る表情がナイスだと思う。

翌朝寝ぼけまなこの息子に言うと、

「パパの言い方で、買って来てるって分かってた。」うそつけ。走って読みに行ったくせに。

47巻も買って来て、ついに完読。次の巻待ち。読み直しも、楽しみだ。

土曜は三宮のブックオフへ。高橋克彦「火怨」上下とルイス・キャロル「鏡の国のアリス」、桜木紫乃「ホテルローヤル」、長野まゆみ「鳩の栖(すみか)」を購入。これで1000円いかない。ブックオフは偉大だ。長野まゆみは「天然理科少年」というのの評判がいいみたいだが、普通の書店にも無い。まあこれから。「火怨」は古代東北、蝦夷と大和朝廷との争いの話で北の英雄アテルイを描いたもの。テレビドラマ化もされ、前から読みたかった。

日曜日は、高校の同窓会の、関西支部総会。今回幹事学年で、午前中から行って、まずはハッピ来てのぼりを組み立てて、道案内。量販店の特価セールみたいである。こんなもんまであったのか。(笑)もちろん出席の方は声をかけてくれるが、中には普通に界隈の道を聞いてくる方もいらっしゃる。皆そうだったと言っていた。たまにはいいか。

一言では言えないが、とても楽しい会だった。

私は、縁もゆかりも無い関西に1人でやってきて、ここまで20数年過ごしてきた。当日の友人でたまに会う者はいたけれど、言ってみれば高校、もっと言えば福岡とは無縁だった。ここへ来て、突然同窓生と大量に会ったわけだが、なんか壁がなくなっいて、素直に男女とも話せる。高校の頃話したことがなかった人も少なくないんだけどね。

もひとつは面白いのだが、地元や首都圏から来た同級生たちが、良くも悪しくも「違和感」を感じていたこと。ふだんの同級生関西支部は、10人くらいの集まりで、でも雰囲気は良くてという感じである。小ぢんまりとしているぶん、おそらくこちらの雰囲気は伝わりにくかったのではと思う。また、どうしたって関西弁が出てしまい、独特のノリがある土地柄に、我々が何年も前に直面した違和感に出会ったんじゃないかと思う。興味深い。

1年前から続いた幹事学年イヤーも終了。今後は同期でまた小ぢんまりと・・次も愉しみだね。

2015年10月12日月曜日

暑寒い





先週の月曜日からぐっと寒くなった。長袖シャツで出たのだが、風が寒いこと。翌日から薄い上衣を着て行っている。朝はもう最低気温14度なんかで、布団がないと安心しない。

昼間は暑くなる。高くて25度ほど。長袖シャツでは汗をかく。こりゃきょうは上衣いらんかったかなーと思っても帰りの山道はジッパーをしめないと寒いくらい。息子と布団掛けないと寒い、掛けると暑い、という状況を「暑寒い」と言ったりしてるが、まさにいまの気候はそんな感じだ。

火曜日、朝から「あー小鳥ぃー」と妻の声が響くので飛び起きてベランダを見てみると、スズメより小さそうな緑色の小鳥が。すぐにケイタイで写真撮る。なかなか逃げない。で首をかしげたりふるえたりしている。

「メジロかな?」と妻。確かに妻の実家の餌台で見たメジロに色は似てるが、目の周りが白くない。調べると・・「あーウグイスだね。目のところの白い線、間違いない。」と私。

ウグイスは、鳴き声は誰しも聞いたことがあろう。春告鳥とも呼ばれるが、姿はなかなか見かけない。木の上ではなく、藪をガサガサ動いていることが多いかららしく、英名は「藪でさえずる鳥」というような名前とか。親は写真を撮り終わって、息子が観てたら、間も無く「飛んでいっちゃったー。」でもなんかラッキー。吉兆であればいいのだが。見る前に買ってきてたのだが、梨木香歩「渡りの足跡」を読み始める。

なんかこの週は昼がバラエティに富んでいて、月曜日が「やまもと」のとん平定食、火曜が寿司定食、水曜日は誘われて20分くらい並ぶ中華で食べた。なんか忙しい時ほど食事は外で、美味しいもの食べたくなるんだよね。ちなみに木曜はコンビニ弁当で金曜はつけ麺でした。

広島が最終戦で負け、阪神にクライマックスシリーズ出場権が転がり込んだ。広島の打たれた投手は号泣。この終盤驚異的な勝率で望みを繋いで来ただけに、ショックも大きいし、誤審騒動もまた再燃しそう。阪神にとってはまさにたなぼた。さあ、CSどうなるかな?

帰ってきたら息子が寝ていた。珍しい。風邪かとも思ったが熱はない。1人で本を読む。外はけっこう厳しめの風がびゅうびゅう吹いている。台風風かな。

久しぶりに外飲み。最近お呼ばれが多いが、この日は仕事の帰りに立ち寄り。自分も相手も、がーがー喋ってストレス解消。

金曜土曜はカタいお仕事。うーん、うーん、うーむ。CS1stステージ第1戦、阪神サヨナラ負け。

日曜は軽く外出。ブックオフで100円本を買い込む。他の店は100円コーナーは古くて装丁もボロいものが多いが、いつも行くところは、売れなかったり数が多かったりするのだろう。本が綺麗でもどんどん100円コーナー日曜は下ろしてくれるから嬉しい。

熊谷達也「相克の森」
下川裕治「世界最悪の鉄道旅行 ユーラシア横断2万キロ」
千早茜「あやかし草子」
野村克也「野村ノート」

という感じ。熊谷達也の「マタギ3部作」最初の一冊入手。「邂逅の森」「氷結の森」は既読で楽しみ。なんか紀行ものも読みたくなった。千早茜はかねて作家に興味ありで、内容が面白そうで購入。「野村ノート」はハードカバーで出た時買いたかったもの。しめて432円。やはりあの店の100円コーナーは買いである。

帰ってCS。なんとゴメスマートンが連続ホームランで勝った。明日が決戦。どうだかな?眠気と戦いながら麻耶雄嵩「隻眼の少女」完読。ダメでした。やはり日本推理作家協会賞はダメだな。決定的に合わない。一時期このミスが面白かったが、どうも最近国内ミステリーは良くないな。私もそりゃ実際ありえないような設定も好きだが、今回は、オチも認められない。

ピエール・ルメートルのような斬新な手法を求む。なんとかしてちょーだい。

網戸にしていると、半袖短パンでは寒い。薄い長い部屋着と薄めのトレーナー。息子とキャッチボールした公園で、おおぶりのどんぐり拾う。クヌギかアベマキかな。なんか夕方ごろからお腹が痛くなり寒気もして毛布かぶってソファから動けず暗くなるころまでぐったり。晩ご飯には復活するところが頑丈なパパらしい。

CS1stステージ最終決戦は、負けてしまった。最後の最後、チャンスを作ったのだが・・。
まあ順位通りだということか。

今季通して見ていたが、打線が活発に打つ、取られても取り返す、が少なく、特に終盤はロースコアのゲームがとても多かった。投手はある程度整備されていて、中継ぎ、抑えも強いため、大きく崩れはしない。ただ、同じ人だけが登板している、という感じで。これではひとシーズン持たないだろう。小技も下手で、広島には再三やられてしまうという脆さも露呈した。守りも決して固くなかった。

ああ、これで本格的に秋かな。

2015年10月5日月曜日

不思議な世界





久しぶりにハルキを読んでいる。「世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド」。巻末の宣伝ページに、恩田陸のデビュー作「六番めの小夜子」があったりするから、だいぶ古い本。表紙もくたびれ、ページも茶色がかっている。

ただこの本の持ち主は、おそらく長い間本棚に置いてて、繰り返し読んだのだろうと思う。なんか女子に人気のある作品なんだよね。

中身は、いやー好きに展開してますハルキワールド。相変わらず趣味が小粋で、突然感のある会話がどこかウィットに満ちていて、よく分からんが作り上げられたファンタジー、SF。妙なリアル感もあって不思議面白い。

過去に読んだ、「タイタンの妖女」とか、「高い城の男」とかアメリカのSFファンタジーは意味分からなくてホントに理解に苦しむ場合もあるが、おさらくハルキはおおいに影響を受けているのではないか。そして日本人風に味付けをした、独自のファンタジー小説を打ち立てた作家だと思う。他の誰にも書けない。読むと思考が詩的かつハードボイルドになる。(笑)

木曜の夜、嵐がうなっている。爆弾低気圧だそうだ。風も雨も台風みたいだ。風はびゅうびゅうとひっきりなしに大きな音を立て、横殴りの雨とともにガラス戸に吹き付ける。雨が降る前に帰って来て良かった。30分遅かったら私は傘もさせずにずぶ濡れだったろう。それにしてもものすごい嵐の音。耳を塞いで寝たくなる。

先日、東京に転勤になる夢を見た。異動の季節が近づいてるから、ちょっとだけ過敏になってるのかな。

そして東京へ日帰り出張。爆弾低気圧の後の富士山は中腹に厚い雲をまとって、ライオンみたい。こんなんは初めてだ。

マンガ「ダイヤのA」は順調に買い進めていて、もうすぐ、ついに追い付く。本当に面白く、主人公の成長が楽しみなストーリーで何回も読み返してしまう。会話も今風だ。ただいくつか考えるところがある。

打球の描き方にもひとつリアル感がない。特に外野を抜けていく打球がそうだ。フライ、ライナーが、生きた打球の気がしない。もうひとつ、これも球筋だが、変化球の描き方。いずれも速い、稲妻のような感じか、ミットの位置で変化を表しているものもある。もう少し、スピーディでなくてもいいので、「曲がり方」「速度の落ち方」に意識を置いた描き方は出来ないかと思う。

私の基準はちばあきおの「キャプテン」であり「プレイボール」であり、さらには「ドカベン」だ。ちばあきおは、兄のちばてつやが、「他愛のない1カットにこだわり、悶々と悩んでいた」と制作工程を明かしていて、おそらく見せ方は相当考えられていると思う。安心感があるのだ。

感覚が古いんだろう。それは認める(笑)。おまけに基準が出来上がっているから始末も悪い。だけどさ、バリエーションは欲しいな、とよく思う。まあこれもどうでもいいんだが。

土曜運動会。暑い!毎年朝は涼しくて昼暑いが今年は特に、陽を浴びたジーンズの太もものところがジリジリ灼けるような感じがする。日陰は涼しいけれど運動場はやっぱ暑いわー。おまけに敷物をしいた地面に座るか、立つかで腰掛けるところがほぼ皆無。

ところで今年はトラック1周リレー。最終コーナーに陣取りビデオを構える。息子バトンを受けてダッシュ!走り方が綺麗になって腕も足もよく動いている。一瞬ほんまにあの子かと思ったくらい。しかし女の子に抜かれてしまう。目の前を走る際は多少バテていたが、走りきった。

昼休み弁当広げて、最初はなんしかムッとしていた息子、妻が女の子に抜かれたことを言ってやると逆に表情を和らげた。いつもよりよく喋って、たくさん食べた。で、まだ残り時間あるが、遊びに行く。まあ去年くらいからそんなもんだ。

昼ご飯食べて敷物を片付けちゃったので、もう出場する競技以外は校外の日陰へ避難、また幼稚園に比べれば少ないが、パパ友とも旧交を温める貴重な機会。会社の人間も見かけて、話をする。年に一度の1日フル稼働。ああ暑疲れた。

帰って、わーっとシャワー浴びてぐったり。風が気持ちいい。「世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド」読み込む。ついにクライマックス。なんかアニメみたいな感じもあるなあ。でも面白い。ハルキ評を書くと長くなりそうだしやめておくが、唯一無二であることは確かかも知れない。わからない。そうかもしれない。息子帰り遅い。5、6年生は片付けがあるのだ。

いつもながら晩御飯は弁当の余り定食。食べて、本読んで、寝る。さすがの夜更かし息子もあっという間にいびきをかいて寝てしまい、翌朝9時まで起きてこなかった。好きなアニメを見逃したとか。パパもラグビーワールドカップサモア戦を観逃した。今回一度も観ていないな。世間は盛り上がってるのに。

翌日は仕事。前夜に「世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド」読了。次の本は決まっているのだが、頭の中でまだ満腹感が有るので取りかかれない。よくあることだ。夜まで仕事してくたびれた。息子が起きていて、寝かしつけるのにお話をねだられたので、世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド」の短縮アレンジ版を話してやった。すぐ寝るかと思ったらずっと起きて聴いていた。「やみくろ」なんて、やっぱり面白いのかな。明日は午前休みにしよう。

2015年10月2日金曜日

9月書評の2




本読みは、自分の好みの作家ばかりぐるぐる読むから、幅が広がらないのが悩みだったりする。だからって死にゃしないのだが。(笑)

私も一時そうだったが、いまはけっこうお初の作家さんも普通に読むのでさして気にしていない。本を借りる先が出来ると、打破できるものだ。やはり本読み友達は必要だ。

中島要「しのぶ梅 着物始末暦」

最近の流行を感じる時代もの。こなれてない感じも受ける。

日本橋通町にある呉服問屋、大隅屋の若旦那綾太郎は正月に浅草寺前でスリに遭い、高価な着物を汚される。嘆く綾太郎に、居合わせた余一という男は、自分に預けてくれれば、きれいに汚れを落としてみせる、と言うのだった。(めぐり咲き)

着物始末、いわば着物のなんでも屋、余一を中心とした連作短編集である。流行と言ったのは、例えば高田郁「みおつくし料理帖」の料理であったり、朝井まかて「すかたん」の青物であったり、なにか専門分野に焦点を当てた連作もの、という意味である。

江戸市井の人々の、着物が絡んだ悩みを余一が次々に解決していく。主人公は、苦み走ったいい男だが、どこか暗い影をまとっている。余一に惚れてしまった娘あり、綾太郎や露天商の六助などおなじみも出て、また余一の生い立ちも語られているが、正直この巻だけでは、まだこなれていないし、つかみに来る部分もまだちょっとという気がする。続編も出ているようだが、余一と、取り巻く人々を作者がどう育てていくのか楽しみだ。これから、というシリーズだろう。

着物の基本的な柄の解説もついていて、ふむふむ、と思う。高田郁も賞賛した作品の中らしいし、もうちょっと読んでみよう。

早見和真「ひゃくはち」

名門野球部のリアル、なのか?(笑)面白く、若いパワーを感じる作品。

恋人の佐知子と行ったホテルで着けたテレビ。雅人は映し出された高校野球夏の神奈川大会を見て、高校球児だった当時の事を思い出す。卒業してから8年、当時の仲間には会っていなかった。そして翌日、雅人は佐知子とともに横浜スタジアムへ向かった。

作者は神奈川の名門、桐蔭学園高の野球部だった人。ストーリーは「京浜高校」という野球名門校が舞台で、野球の専門的な部分も絡めつつ、脱線もする元気な野球部員たちの姿を描いている。

登録枠当落線上のの気持ちや、厳しさについていけない部分もじっくりと書き込んでいて、ホロリとする場面もある。ラストのクライマックスはいわばタブーに直球で切り込んでいて、ちょっと、その詰めに違和感も感じるが、全体のパワーでカバーしきれていると思う。

作者のデビュー作で、映画化、マンガ化もされたヒット作。愛読中の「ダイヤのA」もそうだが、名門校を舞台とした高校野球作品の、一連の流れの中にあるものだろう。

ドカベンもまあ、もともと強かった高校だけど、昔は弱小校を長いスパンでなんとかして強くしていく物語が多かったけどな・・なんて思ったりもする。

でも、この作品の力は、素直に認めるものはあるだろう。

ジョージ・マン編
「シャーロック・ホームズとヴィクトリア朝の怪人たち」

最新の、パスティーシュ集となっているが、まあこれはパロディですな。

原題は「ENCOUNTER  OF  SHERLOCK HOLMES」でシャーロック・ホームズとの出遭いとか、邂逅とかいう感じで、平凡なのでこのタイトルにしたのだろうが、あんまりイケてない。

シャーロッキアンの大きな愉しみである、ホームズの贋作は、実に多岐に渡り数え切れないくらい生産されていて、海外、国内を問わず年に数冊くらいこうした作品が出るので退屈しない。

生産されすぎたからなのか、もういわゆる普通の設定はほとんどなく、いかにも人目を引きそうなネタと展開が目立つため、純粋なパスティーシュを望む人には歓迎されない向きもある。私がこれの前に読んだもののタイトルなんて「恐怖!獣人モロー軍団」だし(笑)。

しかし、私は決して嫌いではない。突飛な発想でも、他には無いシャーロッキアン的な味付けがあったり、意外な発見があったり、知識が深まったりする場合があるからだ。「シャーロック・ホームズ対ドラキュラ」「シャーロック・ホームズの宇宙戦争」はひそかに名作だと思っているし。(笑)もちろん駄作もあるけれど。

まあ、今回は小粒という印象か。ホームズとワトスンの下宿屋の女主人、ハドソンさんの冒険譚は設定として楽しいが、中身はもひとつ。こうやって、ひとつひとつ批評していくのも、愉しみだ。

もともと一冊の本を2巻に割って出版するらしく、第2集も読もうっと。

ひとつ、文章の乱れがちょっと多すぎる。明らかな単純ミスや、日本語になっていない部分があったり。今回は出版社の怠慢である、と言い切れるくらい多かった。

岩城けい「さようなら、オレンジ」

異色作であることは間違いない。迫るものがあることもまた間違いない。

160ページ程度だけど、表現の意味を捉えるのに少し時間がかかる一冊。太宰治賞受賞、本屋大賞4位にして芥川賞候補作。2013年の作品。

故郷の戦火を逃れて外国に来たサリマは、2人の子供を食べさせるため、スーパーで魚や肉を捌き商品の形にする仕事を始める。サリマはまた、英語クラスにも通い始めるが、そこで出会ったイタリア老婦人「オリーブ」、また赤ん坊を連れた若い日本人ママの「ハリネズミ」と交流するようになる。

なかなかびっくり。舞台は某南半球の国なののだが、作者が現地在住20年という紹介文を見て納得した。普通に考えたら、アフリカ系の若い母親が言葉も通じない白人の国で暮らすストレスなんて突飛すぎて推し量りようもないからだ。

表現は、なかなか文学的、それからなんというか、頭で考えたものを肌感覚日本人の書き直しているような感じである。安達千夏の「モルヒネ」を思い起こさせる。

内容は、純文学風でもありながら、難民の実情、言葉も通じない異国でのサリマの生活感覚的ストレスと、おそらく自分の経験であろう日本人女性の姿と現地での苦労を重ねている。なかなか複雑な感情を扱った物語である。

興味深いのは、日本人の妻が経済的に困窮したり、家を買った日本人に、サリマが私より早く買って、とライバル心を燃やしたりするところである。国内の作品では、こんな設定はまず無い。うーん、説明しにくいが。

サリマや「ハリネズミ」の言動には、女の本音も見えて旦那族としては、なるほどな、と思うところもある。孤独な中苦難に見舞われる女性たち。本屋大賞上位に入った時から気になっていたが、違う何か、が胸に迫ること請け合い。まずは読みましょう、の作品だ。

万城目学「プリンセス・トヨトミ」

人から聞いていた評は決して良くなかった。にしては、けっこう夢中で読めたが、読後感としては、うーん、ふふ、という感じである。

会計検査院の調査官、松平、鳥居、フランス人とのハーフの女性、ゲーンズブールの3人は、大阪へと実地調査へ向かう。リストに入っていた、大阪城近くの「社団法人OJO」という組織を調べようとするが、そこには大きな秘密が隠されていた。

万城目学は、京都を舞台にしたデビュー作「鴨川ホルモー」、奈良を舞台にした「鹿男あをによし」、琵琶湖を舞台にした「偉大なる、しゅららぼん」と、関西を舞台に不可思議なファンタジーを展開している。これらと比べると、やや異色である。

タイトル通り、秀吉亡き後の豊臣家の滅亡に連なる話で、信じられない設定なのだけれども、どこか現実感が支配し、これまでの不可思議な感じが、うーん、人世離れしたところがさほど無いのである。

また、それぞれの登場人物はこれまで通り愛せるのだが、訥々という文調にこだわっているせいか、ためてためて、ためすぎやろ、という感じである。核心も、なあんか、なあ?と思っちゃってしまう内容で、実は、に来た時、はあ、という感触しかない。

でもまあ、ふふ、と思うのは、私は大阪人ではないが、大阪に勤め、また主要な舞台である大阪府庁にも2年ほど出勤していたから、というのも大きいだろう。あの頃が懐かしいし、いま普通に生活していても大阪城近辺へは仕事私用で何かと行くものだから親近感がある。数多い大阪ならではの描写もクスリと笑ってしまう。

はあまた大きな、アホみたいな物語書きよってからに、てな感じです。

2015年10月1日木曜日

9月書評の1




9月は季節の移り変わりを感じる季節。今年は目立った残暑もなく穏やかだった。

読書は、なんか夏不調だったけど、それを抜け出した感じで10作品10冊。今月でトータル100に到達するけど、毎年11月は読めないので、まあ、年末で合計120くらいかなあ。ではどうぞ!


上橋菜穂子「闇の守り人」

皆ハマる、「守り人」シリーズ。今後も借りる人には不自由しない。(笑)今回は大人っぽい話で、面白い。

「精霊の守り人」に続くシリーズ第2巻。幼い頃、王位継承に絡む陰謀に巻き込まれ、父の親友の武人、ジグロとともに隣国に逃げのびたバルサ。武術をジグロに習い、短槍を操る女用心棒として生計を立てるようになったバルサは、過去を清算しようと25年ぶりに故郷のカンバル王国へ帰ってきた。しかし、ジグロの弟ユグロの命により、バルサは捕縛されてしまう。

今回もファンタジー絶好調である。また、前回と違い、主人公のバルサが自分の過去と正面から向き合い解決がなされる。さらに、闇の守り人、洞窟、宝石、妖精のような牧童、35年ぶりの謎の儀式、王国の成り立ち、謎の核心、などなど、まるでジブリの映画を、うめく小説にしたようだ。完成度が高いと思う。

前回も書いたが、文化人類学者の上橋菜穂子が中央アジアを意識して書いたというファンタジー。作者自身のあとがきによると、第1作の「精霊の守り人」は子供に、そしてこの「闇の守り人」は大人の方に人気なんだそうだ。

「鹿の王」で本屋大賞、「守り人」シリーズなどで国際アンデルセン賞を受賞した際に興味を持ち、「精霊の守り人」を読んで、2人の本好き仲間、年上男子と年下女子に貸したところ、両方ともあっという間に最終10巻まで読み尽くしたという。女子は「獣の奏者」シリーズも読んでいるという。びっくりした。これと次の「夢の守り人」は年上の方にお借りしたものだ。

上橋菜穂子の魔力か?ハマりたい方は試してみましょう。

上橋菜穂子「夢の守り人」

続けて読むとやっぱり早い。今回はけっこう高度なお話かと思う。

カンバルから新ヨゴ皇国へ帰る途中、バルサはユグノという男がガルシンバ(奴隷狩人)に追われているところを助けてやる。ユグノは木霊(リー)たちに美しい歌声を見初められた、木霊の想い人(リー・トゥ・ルエン)だった。

人が夢に求める願望をファンタジックに描いており、今回はトロガイ師の過去が明らかになる。タンダ、チャグム、シュガといった第1作の登場人物も出てきて、このタイミングの良さに、上橋菜穂子のセンスを感じたりした。

相変わらず美しく、不思議な説得力を持った構成になっているが、花の仕掛けが霊的に過ぎて、理解しかねる感じもある。児童文学としては高度かな、と思った。

西加奈子「ふくわらい」

パワーは理屈に勝る、そんな感じかな。

西加奈子は定期的に読んでいて、うーむとなる事もあれば、大笑いすることもある。胸が温かくなることもある。今回は、けっこう初めての感触で、破壊的だった。

少女の頃ふくわらいが好きだった鳴木戸定は、対面する人の顔のパーツを動かす空想が癖になっている。出版社の有能な編集ウーマンである彼女は、幼少の頃紀行作家の父に異境を連れ歩かれた影響か、人間らしい感情が分からないところがあったが、クセのある作家や同僚の女性との交流の中で変わっていく。

特異な環境の、特殊な主人公。周囲の人も変わっている。しかしそれぞれパワフルな登場人物のパワーに西加奈子独特のキレ方が加わり、結果面白い作品になってるな、という印象だ。そこに理屈は必要だろうか、と久々に思った。プロレスラー守口廃尊(ばいそん)の告白の部分は、人間味を持って、心に迫る気もする。直木賞選考の各委員の評も読んだが、概ね好意的、また直木賞というよりは(純文学中心の)芥川賞かも、といった言にもなんか納得できた。

変わった設定、変わった主人公に変わった展開は都合が良すぎると、私なぞは思ってしまう方だ。しかし今回ばかりは、ハチャメチャな面をも見せながら、根源的な感情について考える、というプリミティブな仕掛けもいい味を出しているようにも見える。全体としてまあよし、の一作だった。

本屋には行っても、最近はどうも買う気が起きる作品が無かった。読書する気も減退ぎみだった。そんな中、積ん読本が無くなって、出張の新幹線で読む本を買わねばで書店に行って、あっ良さそうだなでポンと買った一冊。次の日新大阪の書店を見たら、なんかやたらとまた読書欲が出て来た。あるスパイラルは越えたようだ。

須賀しのぶ「雲は湧き、光あふれて」

高校野球もの。実は「ふくわらい」のついで買いだったが、最後妙にグッと来た。

解説するまでもないかも知れないが、タイトルは、夏の甲子園の大会歌「栄冠は君に輝く」の出だしの歌詞である。

70ページくらいの、高校野球もの中編が3つ。県内そこそこ強豪校の、代打&代走専門の、特殊な2人を描いた「ピンチランナー」、スポーツ新聞駆け出しの女性記者が主人公の「甲子園への道」、そして戦前戦中の高校野球もの、表題作「雲は湧き、光あふれて」。

1つめはそこまで言うか、そんなのありか?2つめはほのぼの。どこかに新たな感覚を感じつつも、ライトノベルかな、という感じだった。3つめも、やや突飛で、どこかで聞いた話っぽい感じもしたが、最後はハマってしまい、グスッとなった。

けっこうどこの書店に行っても推してある。作者は、変わった少女小説や軍事ものを描いてきたという女性の方。上に書いたように、いつもの書店で「ふくわらい」の左斜め上に置いてあったので、ついでにひょいっと買った本。意外な人気を呼んで、増刷かかったのが売り文句みたいである。

読後にさわやかさを残す2編、やり切れなさを感じる表題作。良い買い物をした気分だ。

朱川湊人「サクラ秘密基地」

ノスタルジックホラーというジャンル。いい味は出してるが、今回はもひとつかな。

50ページくらいの短編が6つ。いずれも昭和40年代くらいが舞台で、子供から少年少女の体験が出てくる。悲惨、ホラー色、破滅的、実はいいヤツものと様ざま。

マナブ、ミツヒロ、ヨシヒロ、ショースケの小学生仲良しグループは、塀に囲われた空き地の廃棄軽トラックを「サクラ秘密基地」と名付け、遊ぶようになる。しかし、ショースケの家庭に変化が起きて・・(サクラ秘密基地)

朱川湊人は、ホラーの絡んだ懐かしい昭和の子供時代の話を集めた「花まんま」で直木賞を受賞した。今回はよく似たテイストである。短編集は、たぶん話のテイストと並ぶ順番が大事なんだろうと思う。

今回は「サクラ秘密基地」と「スズメ鈴松」、最初と最後にインパクトがあった。他はこのジャンルの一短編、という感じだが、朱川湊人が書くものは、すべてあの頃に子供時代を過ごした人の描写がしっかりしてて、読みながら、自分もああいうことがあった、こういうことがあった、と思い出してしまう。そこが、普通に読める中での最も秀逸な特徴だろう。ホラーも、生活の中で、確かに不可解な怖い体験を誰しもしているから、余計にその効果が増すんじゃないかと感じる。

またそのうち別作品も読もう。