芥川賞。小説らしい作品だな、と。読みやすく展開は、把握しやすい。
たまたまではあるけど、最近芥川賞を読むことが多い。中には、博多弁で言うといっちょん分からんやったり、やたら理屈が多かもんもあるとばい。しかしながら、この作品は平易な言葉で、設定も展開もオチも分かりやすい。ただ、そこに含まれている意味を言葉でうまく表現できない。
長瀬由起子29歳は、工場でベルトコンベアの乳液のキャップをチェックする仕事をし、夕方からは友人のヨシカが経営するカフェで働き、夜は入力の内職をしている上、土曜日はパソコン教室でお年寄り相手にメールの送り方などを教えている。ある日、工場に貼ってあるポスターの163万円で世界一周、というふれ込みに、この金額は自分の工場の年収と同じ、と気づき、節約を始める。そんな折、母親と住む4LDKの古い持ち家に大学の同級生・りつ子が幼い娘を連れて、ほぼ無一文で家出してくるー。
「ポトスライムの舟」自体は100ページくらいの作品。主人公ナガセの前日譚「十二月の窓辺」も収録されている。
離婚した母に、離婚協議をしているりつ子、離婚を考え始めた、工場でともに働く岡田さん。回りがいろいろと動く中、目標である貯金に向けて働く、細かくカネの計算をしては心を痛めるナガセ。止まらず働く女に、束の間の休息が訪れる。そして心境の変化が・・?
最近意図せず関西ものに当たる気がしている。ポトスライムの舟」は奈良が舞台で関西弁も多い。そしてそちこちに奈良の細かいあるある、が散りばめられる。さて、この作品はお金の算段を中心にストーリーが進む。周囲に影響されて、働いて、エアポケットが生じて、というわかりやすい展開だと思う。
では、何を掴み、どう変わっのか。成長したり、自信を取り戻したり、というのはわかる気がする。ただそれを、えも言われぬグネグネしたような感情、変化の度合いと瞬間をどう表現していいのが、ホントにむずかしい。分かる気はするけど、この胸の中のもの、これがこの作品を読んだ時残るものでは、という気もした。
タトゥー、百科事典が好きなりつ子の娘・恵奈との触れ合い、自転車で走る、など印象的で計算されてそうな要素が織り込まれていていて非常にテクニカルだなと思えてしまう。
等身大の物語、平易な文章とあまり波のない展開。しかし何かある、という確信、あまり言葉にしたくないような気もすふ。様々な知識。小説らしい作品だな、と思ったりした。