2023年7月31日月曜日

7月書評の13

7月は13作品。まあまず興味深かった。

小腹がすく部活少年のために母がよく買ってきてた焼きリンゴパン。たまに食べたくなる。

みずがめ座δ流星群ピーク周りなので、深夜2時まで粘って2つゲット。夜空を見つめて15分くらいで暗さに目がなじみ、星がよく見えるようになる。冬はオリオン座はじめ1等星に有名な星座がさんざめく。夏は夏で、ベガ、デネブにアルタイルの大三角形などにぎやかな空。ペガスス座の大正方形やカシオペアなど目立つ星座を観る。耳はラフマニノフピアノコンチェルト3番。上を向きっぱなしなのがツラい。まあいつものことで、宇宙と向き合う、楽しい観測。夜風も涼しい。

しかし一夜明け、生活のリズムが崩れたダメージを感じて外出予定をキャンセル。無理しすぎたかな😅暑いしいっかと家に籠城。

インターハイバスケ決勝、女子は1強の京都精華が名門桜花学園を下し連覇。男子は留学生ジェラマイアが躍動した日本航空が山梨県勢としても初優勝。いやー楽しかった高校生🏀バスケ。ウィンターカップも注目だ。

いちごシロップを使い、レッドチェリーソーダ。
缶のあんみつ買ってきてアイスプリンとともに。ちおっと不恰好かな😅

2023年7月29日土曜日

7月書評の12

暑いったらない。でもこの高気圧のおかげで台風が近づいてこない。どっちをとるかと言われたら、私は暑さを取るかな。夏だし。いちごシロップとさくらんぼ、透明なソーダ水に大きめ氷でレッドチェリーソーダ。毒々しく蠱惑的な赤・・笑

◼️ マイケル・ハードウィック
「新シャーロック・ホームズ 魔犬の復讐」

バスカヴィル家の魔犬がロンドンに?ボヘミアの醜聞よろしく新国王の手紙が問題に?姫の失踪事件捜査の帰りに謎の殺人が?バリバリのシャーロッキアンものです。

見出しに書いただけでも雑多な要素がある。ちなみに姫の失踪、とは第4短編集「シャーロック・ホームズ最後の挨拶」に収録の「フランシス・カーファクス姫の失踪」事件のこと。劇中、ワトスンは原作通り、ホームズの命によりローザンヌへ単独捜査へ出かける。時は1902年のボーア戦争終結直後。ワトスンはシャーロッキアンの間で定番のネタとして取り沙汰されている3回めの結婚に臨もうとし、ホームズはもう引退する、と口にしている。ワトスンが結婚して共同生活じゃなくなることを嫌がっている。

ホームズは1903年発生の「白面の兵士」で

The good Watson had at that time deserted me for a wife, the only selfish action which I can recall in our association. I was alone.

「わが友ワトスンはこの時結婚して、私を捨て去っていた。彼との付き合いの中で唯一の自分本位な行動だった。私は独りぼっちだった」

と少々恨みがましく述懐している。この話は全短編中2つある、ホームズが自分で執筆した話のうちの1つである。たぶん、ここを踏まえていて、シャーロッキアン心をくすぐりに来ているのだろう笑。

さて、物語は複雑な様相を見せる。「三人ガリデブ」事件の直後、傷が癒えたワトスンは叔母を訪ね、3人ての妻となるコーラルに出逢う。ワトスンの結婚を快く思わないホームズは、ローザンヌにでも行ってよく考えろと、フランシス・カーファクス姫失踪事件の捜査をワトスンに申しつける。その夜中に、かつてバスカヴィルの犬にともに立ち向かったレストレード警部が訪ねてきて、ハムステッド・ヒースで浮浪者が野獣に襲われ、近くには大きな犬の足跡があったと告げるー。

世間は大騒ぎ。そんな中ホームズは知り合いの警部からの情報で遺跡発掘の現場へ出かけ、なんとワトスンはクロムウェル処刑時の遺骨らしきものと貴重な剣を見つけるー。

さらにホームズの兄で政府の高官、マイクロフトの手引きで、ホームズはヴィクトリア女王の後継で、皇太子時代多くの浮名を流したプリンス・エドワード7世直々に、その昔ある女性に出した手紙を取り戻して欲しいと頼まれる。
・・ということをワトスンに話したのは、姫失踪事件でフランスにまで行った2人が帰路船に乗っている時。そしてその船でボーイが殺されるー。

たくさんの事件がごたまぜになり、ラストで全ての解決をつける、という成り行き。

ホームズのパロディ、パスティーシュでは、実はこのような、ばらばらに見えるいくつもの謎を後で繋ぎ合わせる、という展開はたまにある。謎を多く、関わるキャストも多く。ホームズとワトスンの会話にはケンカが多く、とにかくドタバタと騒がしい、のもよくあること。

シャーロッキアン的要素が多く、なかなか楽しい。さすがハードウィックというか、求めているものをうまく差し出されている感じもある。ただまあ、総花的、分散的で、犯罪の底にあるものもうーんまあねえ、という感じ。魔犬の正体も早々に分かっちゃうし。魔犬に特化してほしかった気がする。

ホームズシリーズは、短編第一作「ボヘミアの醜聞」で人気が爆発する。結婚を控えたボヘミア王がオペラのプリマドンナ、アイリーン・アドラーと一緒に撮った写真のため窮地に追い込まれる、といった話。おもしろい話、これは後のエドワード7世が皇太子だった頃のアバンチュールが大ヒットの背景にあるという説を読んだことがある。

読みたかったがなかなか入手できず、出張時、神保町のミステリ専門古書で買えた時はめっちゃ嬉しかった。しかし長年追いかけていた本のトータル評価はもひとつ、というのもよくある。これもまた真理なのです。

まあ楽しかったかな。

7月書評の11

凍らせプッチンプリンを使ってきょうも自家製デザート。ソーダにいちご味のシロップ、ホイップクリームにチェリー🍒とパイン🍍で、

氷プリンア・ラ・モードソーダ

できました。大暑だし少しでも涼を。

集英社のマンガ単行本を買ったらおまけでステッカーついてきた。たくさんの種類から選択できたけど分かるのがワンピースとSPYFAMILYだけでした😄どこもセミの大合唱、手に届くところにいてます。

先週土曜は午前に買い物と図書館、14時過ぎから
🏀 男子バスケ強化試合日本🇯🇵vs韓国🇰🇷
🏉男子ラグビー🇯🇵vsサモア🇦🇸、 
⚽️ 女子サッカーワールドカップ🇯🇵vsザンビア🇿🇲
🏀女子U-19ワールドカップ5-8位決定戦
🇯🇵vsチェコ🇨🇿
⚾️プロ野球埼玉西武ライオンズvs東北楽天ゴールデンイーグルス
🏐バレーボール男子ネーションズリーグ準決勝
🇯🇵vsポーランド🇵🇱

とスポーツデーでした。その合間にマンガ「ブルーピリオド」と「キャプテン2」の新刊を読みました。

⚽️なでしこの初戦は力の差があったからまだよく分からない。しかしここ数年の代表に比べるとフィジカルも強く攻撃的に思える。まさにこれから。早くも決勝トーナメントを決めたし、上位進出を期待。

🏐バレー男子は国際大会?46年ぶりの銅メダル。乗り越えた。世界は上位の4、5チームくらいがかなり強力。ポーランド、イタリア、アメリカ、ブラジルにフランス。日本はセカンドグループだった。この牙城を崩さないとメダルは取れない、今回世界チャンピオンのポーランドに1セットは取ったし、大会トータルで見てもかなり攻撃パターンやブロックなどよくなってきた。もう1歩、が大変、と思っていたらやってくれました。宮浦すばらしい!石川、高橋藍、セッターは関田、リベロは山本と、キャラが揃ってきた。そこへ宮浦が加わった。不調の西田の復活を期待。ミドル陣も奮闘した。ああ嬉しい。息子が深夜に寝室に飛び込んできたわのよ😆

日曜は午前は髪チョキチョキ✂︎🏀vs韓国🇰🇷第2戦の勝利を見届ける。韓国はワールドカップには出ないがなかなか強力でよきライバル。今後定期戦をしてもいいかも。

◼️ 植松三十里「帝国ホテル建築物語」

世界的建築家フランク・ロイド・ライトに思い入れがあるから、最近ライト設計の自由学園明日館を見たから、だと思う。久しぶりに深く感動した。

ある東京出張の際、ライトの自由学園明日館を観に行こうと決めていた。すると、行きの新大阪駅の書店でこの本が目に入り、明日館を見て帰ってくると関西で「名建築で昼食を」の東京編、自由学園明日館の再放送を知るという、不思議な巡り合わせがあった。出張の前には、西の帝国ホテルと言われた甲子園ホテルの製菓長が興した店に当時のザッハトルテを買いに行き、もうアタマはライト一色。そんな時に読んで、何回も泣き入っちゃいました。

ライトの建築は、日本人には西洋的に、西洋人には東洋的に見えるー。

もとは美術商の会社に勤めていた林愛作の来し方や帝国ホテルの支配人になった経緯、上客のライトへの依頼の流れ、また遠藤新の生い立ち、林からライトを紹介してもらったこと、帰国するライトに同行し、地元のウィスコンシンで自宅のあるタリアセンや、最初に世に認められたウィンズロー邸を巡ったエピソードなどなど、前半から個人的楽しみ満載。webで写真や解説を見ながら読み進む。やばい、めっちゃいい^_^。ニヤけてるのが自分でも分かる。

そして建設、職人とぶつかるライト。いやー予想通りすぎる。大谷石、凝った作りと、もうこれ以上造り込めるのか、というデザイン。明治村HPで「光の籠柱」見てるけれども、すごすぎる。現代では芸術以外にありえないくらい手を入れている。こんなに創作できてしまう建築家さんて・・舌を巻く。やっぱりライトは天才だ。

帝国ホテルは予算や工期を大幅にオーバー、帝国ホテルの重役たちの声は日増しに厳しくなる。追い討ちをかけるように大火事に見舞われ林は辞任、庇ってくれる後見人をなくしたライトは孤立、建設途中で帰国してしまう。日本の顔を背負い、ライトのプライドを負わされ並々ならぬ苦労をする遠藤新。

そして開業の日、なんと日本の歴史に大書される大災害が東京を襲うー。火事も、この場面も迫力ある描写にうならされる。

今回はライト本人や関係者がどういう人たちで、設計、建築の流れの中で何があったのか、どのようにしてライトや林が解任され、新かどんな苦労をしたのか、ということに対して系統だったの知識を得るのが目的だった。でも人間味あふれる筆致にウルっときて、泣いていいんだろか、なんてミョーにアンビバレントな心情に襲われた。盛り上がるドラマはどこが真実でどこが創作か分からないからだ。

でも最後にはどうでもいいやと思えた。

帝国ホテルライト館は閉館の際、保存運動は激しかったようだ。しかし今とは違うと思う。現在は建築ブームで情報はインターネットで行き渡り、ファンも多い。ライト館が幕を閉じた1967年当時は次々と高層ビルが建っていた時期で、40数年前の石造りの建物では古くさく見えても無理がなかったかもしれない。需要も激増してたし。

多くの人を振り回し、数々の災厄に見舞われた帝国ホテル。これもライトのパワーだろうか。林愛作はやがて甲子園ホテルの支配人となり、遠藤新は師のライトが造った帝国ホテルとよく似たホテルを造ることになるー。こちらはいまも目にできるのが嬉しい。

自由学園明日館の設計の話も盛り込んであってとても良かった。こちらの記憶は生々しい。あのモダンな食堂で、少女たちは楽しくおしゃべりしながらランチを食べてたんだろうか。ちょっとだけホグワーツっぽいかな。

読書ズレ、というのはあると思う。なかなか没入してしまえない。最近の自分はまさしくそんな感じ。冷静に引いてみてしまう。でも、この作品は、読了の瞬間、ひさびさに少しふるえるような満足感があった。

やっぱ犬山の明治村行って様式保存された帝国ホテル、見てこなきゃね。いやー建築は、おもしろい、ライトは素晴らしい。

2023年7月28日金曜日

7月書評の10

◼️ Authur  Conan  Doyle

"The Resident Patient"(入院患者)


ホームズ短編原文読み36作め。残るは20だー。第2短編集「The Memoirs of Sherlock Holmes シャーロック・ホームズの回想」より。


さて、前期の作品にしては、実はあまり要領を得ないような事件かなと受け止めてます。早め短めに進めます。


ホームズとワトスンが10月のある夜、嵐が収まったのを見てホームズとワトスンは散歩に出かけます。挿絵では、腕を組んで歩いています。仲良いですね。この当時男性の友人同士でもこのようにすることはふつうだったようです。私も学生時代韓国に行った時、やはり女性、男性同士も手をつないだりしてるのを見てびっくりした覚えがあり、当地の学生に「おかしいですか?」と逆に訊かれました。親愛の情を表すのにもさまざまだということですね。


さて、帰ってきてみると立派な馬車broughamが待っていました。ホームズは繁盛している医者だな、と見当をつけます。


訪ねてきたのはパーシー・トレヴェリアンという若い医師でした。神経質そうで、やつれているのが分かります。ワトスンはトレヴェリアンが神経障害について書いた論文を読んだことがありました。指摘すると、トレヴェリアンは、神経の病気にずっと関心を持ってきたとのことでした。


"The fact is that a very singular train of events has occurred recently at my house in Brook Street, and to-night they came to such a head that I felt it was quite impossible for me to wait another hour before asking for your advice and assistance."


「最近とても奇妙な出来事が、ブルック街の自宅で立て続けに起こったのです。そして今夜、そのピークともいえる事態となって、これはあなたにぜひとも助けをお願いしないと、と思いました」


歓迎ですよ、というホームズの返事のあと、トレヴェリアンの説明が始まります。トレヴェリアンは優秀な医学生で、ワトスンが読んだ論文などで名を上げましたが、開業するほどの金がなく10年間がまんしてお金を貯めようかと思っていた矢先、ブレッシントンという紳士に出会いました。初の対面でブレッシントンはブルック街で開業させてあげよう、と持ちかけました。トレヴェリアンは奇妙な提案だとは思ったものの、結局はその話に乗りました。


トレヴェリアンは優秀な医師で、病院は当初から繁盛しました。心臓が弱いらしいブレッシントンは入院患者resident patientとして、一緒に住むことになりました。


ブレッシントンはthe first floor2階の一番いい部屋を居間兼寝室として使っていました。生活は不規則、めったに外出せず人に会うこともない、しかし毎晩帳簿を調べて稼ぎから1ギニーあたり5シリング3ペンスの割合で差し引き、残りを自室の金庫に入れる、といったことだけには規則的でした。


それが、数週間前、ブレッシントンは動揺した様子でトレヴェリアンの部屋に来ました。ウエスト・エンドで起きた強盗事件を過度に気にして、窓と扉の鍵をもっと頑丈にしなければ、などと口にし、何かに怯えて暮らしていました。理由を問うても、逆ギレされる始末。やがてその恐怖が薄れてきたか、と思った頃、またブレッシントンが意気消沈する出来事が起こりました。発端は2日前に受け取った差出人の名もない手紙でした。


"A Russian nobleman who is now resident in England [it runs], would be glad to avail himself of the professional assistance of Dr. Percy Trevelyan. He has been for some years a victim to cataleptic attacks, on which, as is well known, Dr. Trevelyan is an authority. He proposes to call at about a quarter-past six to-morrow evening, if Dr. Trevelyan will make it convenient to be at home."


「イギリスに住んでいるさるロシアの貴族が、ぜひドクター・パーシー・トレヴェリアンの専門的な診察を受けたいと言っています。彼は長年カタレプシー、強硬症の発作に悩まされており、ドクター・トレヴェリアンがその分野の権威であると承知しています。明日の晩615分にご訪問しますので、ご都合がよろしければぜひ在宅くださいますよう」


さて、そもそもカタレプシーの症例は少ないとのことで、トレヴェリアンはいたく興味を惹かれます。次の日の夜、つまり昨日の夜、年配の、物静かな紳士と浅黒くりりしい若者が現れました。2人は親子で、息子の方は待合室にいることになりました。医師は患者に問診をしました。


"Suddenly, however, as I sat writing, he ceased to give any answer at all to my inquiries, and on my turning towards him I was shocked to see that he was sitting bolt upright in his chair, staring at me with a perfectly blank and rigid face. He was again in the grip of his mysterious malady."


「しかし問診しながらメモを取っていた時、突然、質問に対する返答がなくなりました。彼を見ると、椅子で棒のように硬直し、私の方を表情のないこわばった顔で見つめていて、私はびっくりしました。謎めいた病気の発作が起きていました」


トレヴェリアンは心のうちでまたとない機会だと思い、効果のある亜硝酸アルミを取りに地下室へと急ぎました。ところが帰ってきてみるとー、患者の姿はありませんでした。待合室にいたはずの息子もいませんでした。キツネにつままれなような心地、そこへ夕方の散歩からブレッシントンが帰ってきました。最近の常で会話を避けていたため、トレヴェリアンは彼になにも話しませんでした。


と、なんと翌日、つまり今夜、昨夜と同じ時刻にまたその親子は現れたのでした。


2人はトレヴェリアンに対して丁寧に謝罪しました。父親は、発作がおさまると、いつもその前の記憶はなくなっている。目が覚めると見知らぬ部屋で、朦朧として表へ出たのです、と説明しました。息子は父を見つけて、診察が終わったと思いそのまま連れ帰ったとのこと。今回も息子は待合室で、トレヴェリアンは父親の診察を済ませ、親子で帰って行くのを見送りました。


またブレッシントンが散歩から帰ってきて、自分の部屋へ上がっていきました。しかしきょうはすぐに駆け降りてきたので。すごい剣幕で。


"Who has been in my room?"

「誰がおれの部屋に入ったんだ?」


誰も入りませんよ、うそだ!来てみろ!


とトレヴェリアンが2階の部屋へと行くと、ブレッシントンのよりも大きな足跡が絨毯についていました。ブレッシントンはえらい取り乱しようです。すすり泣いたり、訳のわからないことをわめいたり。ホームズに依頼するのもブレッシントンが言い出したことでした。ついては今から一緒に来て欲しい、とのこと。ホームズはしばしの黙考の後さっと立ち上がりワトスンとともにブルック街へ向かいます。トレヴェリアンの医院は、いかにもウェスト・エンドの開業医、という、陰鬱な建物でした。一行は2階の部屋の方へかけ上がります。


ところが、


"I have a pistol,"

"I give you my word that I'll fire if you come any nearer."


「ピストルで狙ってるぞ。言っておくがそれ以上近づいたら撃つぞ」


いきなり暗がりから脅されました。ブレッシントンは病的な肌の色をした、太った男でした。以前はもっと太っていたと見え、目の下の皮膚が弛んでいました。薄くなった髪の毛が、興奮で逆立っているように見えました。


トレヴェリアンのとりなしでようやく会話が始まります。ホームズは率直に質問します。


"Who are these two men, Mr. Blessington, and why do they wish to molest you?"


「くだんの2人は誰なんですか。ブレッシントンさん、どうしてあなたをつけ狙うんですか?」


ブレッシントンは知らない、といった態度を取ります。そして寝室の金庫を見せ、わずかばかりの全財産がこの中に入ってるから不安なんだと説明します、が・・


"I cannot possibly advise you if you try to deceive me,"

「私をごまかそうというなら力にはなれませんね」


"My advice to you, sir, is to speak the truth.".

「私のアドバイスは、ほんとうのことを話しなさいということです」


ホームズはさっさと辞去します。ここでワトスンと定番の捜査会議。


何らかの理由でブレッシントンを狙っている人物がる2人以上いるのは間違いない。最初も2度目も、片方がトレヴェリアンを引き留めている間に若い方がブレッシントンの部屋に行っている。


"And the catalepsy?"

「では、カタレプシーは?」


"A fraudulent imitation,Watson,"

「仮病だよ、ワトスン」


しかしブレッシントンは本当にたまたま、2回とも散歩でいなかった。


診察の時間を遅めにしたのも、他に待合室に人が来て目撃されるのを避けるためだろう、物色の形跡はない。なによりブレッシントンの態度が身の危険に怯えている。だから敵が誰か知らないはずがない。何者であるかを知っていて隠している。


"But we may sleep on it now, for I shall be surprised if we do not hear something further from Brook Street in the morning."


「まあいまはこのままにしておこうよ。明日の朝ブルック街から何も言ってこなかったらこれこそ驚きだよ」


Sherlock Holmes's prophecy was soon fulfilled,

果たしてホームズの予言は的中します。


'For God's sake come at once. P. T.,'

「お願いですからすぐに来てください」


走り書きのメモとともにブルーアム馬車が朝早くベイカー街に来ました。


"Blessington has committed suicide!"

「ブレッシントンさんが自殺を図ったんです」


ブルック街に着いてみると、トレヴェリアンが叫びました。入院患者は、部屋の真ん中で首を吊った形でぶら下がっていました。警察も到着しています。担当は若いラナー警部でした。この人は初めて、かつこれっきりですね。レストレイドでもグレグスンでもない。まあたまにあります。ホームズは知り合いのようです。


ラナーは恐怖のあまり、頭が変になっちまったんでしょ、と自殺の動機を述べます。遺留品は洗面台の上にscrew-driver and some screws ねじ回しとねじ、暖炉からは4本の葉巻の吸いさし。ホームズはそれが、ブレッシントンが持っている葉巻とは違うもの、ということを指摘します。また葉巻用のパイプを使って吸っているもの、ナイフで切っているもの、口で噛み切っているもの、という違いを確認していきます。


"This is no suicide, Mr. Lanner. It is a very deeply planned and cold-blooded murder."


「これは自殺なんかじゃない、ラナーくん、極めて周到に計画された、血も涙もない殺人だよ」


ホームズはさらに室内を綿密に調べます。そして出て行こうとするので、ちょっとホームズさん、まだ何も説明してもらってませんよ、と呼び止めます。


犯人は3人、若い男と老人、それともう1人の人物であること、ボーイの少年は共犯者であること、鍵が針金でこじ開けられていること、いきなり縛り上げて猿ぐつわをかましたであろうこと。一味は裁判のまねごとのようなことをして長いこと話し合い、絞首刑にすることにした。ドライバーとネジはそのために用意しておいたものだったが、天井にフックがあったから使わなかった。3人が立ち去った後、共犯のボーイが玄関のかんぬきをかけた。


ホームズはこれだけのことを説明して、捜査に出かけます。


ベイカー街に警部とトレヴェリアンを呼んだホームズは約束の時間をずいぶん過ぎて帰ってきました。そして、正体が分かった、と告げます。


ブレッシントンを襲った者たちの名前は、ビドル、ヘイワード、モファットだ、というとラナーくん、


"The Worthingdon bank gang,"

「ワージントン銀行の強盗か!」


と叫びます。ホームズ、


"Precisely"「そのとおり」


"Then Blessington must have been Sutton."


「ということは、ブレッシントンはサットンに違いない」


"Exactly"「まさしく」


"Why, that makes it as clear as crystal,"


「よし、これではっきりしました」


なんかホンマ、先生と生徒ですね。


1875年、ワージントン銀行から7000ポンドが強奪され、管理人が殺されました。そして、この4人とカートライト、という男が逮捕されました。ブレッシントン、つまりサットンは主犯格でしたが、保身のために情報を提供、カートライトは絞首刑、今回サットンを襲った3人は懲役15年となりました。刑期を3年残して出所した3人はすぐにサットンの行方をつきとめ、2回失敗したもののついに復讐を果たした、のでした。サットンが最初ひどく動揺した日は、新聞でかつての仲間の出所を知ったのだろうと考えられました。


逃げた3人は捕まらず、消息不明でした。スコットランドヤードでは沈んだ蒸気船に乗っていたのではと推測しているとか。共犯のボーイは逮捕されましたが、証拠不十分で無罪となりました、でENDです。



さて、私がかなり端折ったのも事実ですが、興味深い点はあるものの、もうひとつ面白みに欠けますね。結局ホームズはギャングたちとはまみえないし、依頼人はあっさり亡くなるし、同情心も湧かない。いくら依頼人が正直でなかったとしても、命にかかわる襲撃をある程度予測していながら何もしない、というのはいささか後味も悪い気がしますし、2回同じ失敗をしたのはなんで?という疑問にも答えは提示されていません。


ホームズが劇的に立ち回らず、現場に残されたもので魔法のように推理していく、という話は珍しくはなく、ワトスンも実はこの物語の冒頭に似たような断りを入れています。


ドイルは医学を学んでいたので珍しい症例も知っていたであろうことは知的好奇心を惹き、事件に関する読者の推理を少し遠回りさせます。各所に見られる医者の開業に関する知識もそうですね。


短編の中では地味な部類に入ります。でもよくよく考えてみると、この復讐劇を物語本文に入れるのもおぞましいし、ならばオフにして想像の中に委ねるのも手法かもしれないな、と思ったりしました。




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2023年7月20日木曜日

7月書評の9

暑いっすねー。というわけで今年も自家製クリームソーダ。やっぱチェリー🍒入っただけで雰囲気が出る。青は上手くできて、緑は去年メロンソーダを使ったら日本茶色になってしまったグリーン、鮮やかめのソーダ水を買ってきていい感じになりました。ちなみに熱いコーヒーないと腹が冷えすぎる。また苦さとバニラの甘さのハーモニーも同時2つの楽しみだという。ごたまぜですね😎

世が怪物とか、シークレットな演出の君たちはどう生きるか、とかいってる時期にも私が行くのは、単館系、各国映画をずっとかけ続けている、十三の第七芸術劇場、通称ナナゲイだったりする。タジキスタン出身、フドイナザーロフ監督の「ルナ・パパ」(ポスター写真の作品)のリマスター版を見ました。

内戦の戦時下、広々とした大地の中央アジア。村で巻き起こるドタバタ喜劇。やはりコメディの中に厳しい環境や愛情をマッチさせていくのは1つの形だなと、とにかく最初から最後までドタバタで、役者さん大変そうな作品でした。

本屋でエリック・カール「はらぺこあおむし」のハンカチ発見してつい買ってしまった。ウィンブルドン決勝、20歳の世界ランキング1位アルカラスとジョコビッチの死闘に唸る。途中でオチましたが引き込まれました。芝が夏の光に映える季節。

彩りだけは多い3連休だった・・かな?


◼️ ラドヤード・キプリング
  「ジャングル・ブック」

イギリス領だった頃のインド、そのジャングル。オオカミに育てられた人間の子は、やがて動物たちのリーダーとなるー。19世紀末、ワクワクが止まらない名作。

インドで幼少期を過ごし、イギリスへ帰国、10代後半から再びインド方面へ居を移し執筆活動をしたキプリングは1894年、アメリカで「ジャングル・ブック」を書いた。この本は「続ジャングル・ブック」と合わせた15編のうち、狼に育てられた少年モウグリの物語8編を収録している。

オオカミの父母が、やっと立てるようになったくらいの幼子を育てるようになるエピソード、教師役のクマのバルー、後見役の黒ヒョウ・バギーラや大蛇カー、オオカミの老いたリーダー・アケイラ、オオカミの兄弟たちとの交流と冒険の日々が描かれる。

モウグリがサル族にさらわれる「カーの狩り」。村の実家に帰ったモウグリが水牛の群れを暴走させて宿敵、トラのシア・カーンを倒したことから村を追われる「トラよ、トラよ!」さらにモウグリが原因で囚われ、処刑されそうになった両親を救出しその復讐をする「ジャングルを呼び寄せる」、いにしえの王の財宝を守る白コブラの話「王のアンカス」、凶悪なドールの群れとの死闘「赤い犬」など、ワクワクする話が詰まっている。

なにせモウグリは人間だが、行動はオオカミ。独特のジャングルの掟など人間社会とはかけ離れた、想像力を刺激する物語世界。痛快でもあり、哀しくもあり、月日を感じさせるナラティブたちには引き込まれる。

同年代のシャーロック・ホームズにもインド、アフガニスタン、オーストラリアなどかつてのイギリス領の話が多い。読む人は、未知のオリエンタル世界、ジャングルで活き活きと活動する動物たち、共感を抱くモウグリ、そして筆致を貫く悠久さ、無常の理に強い魅力を感じたのではないだろうか。

おもしろい要素を発見。シャーロック・ホームズ短編の人気作「まだらのひも」は蛇を、実際には飲むわけもないミルクで手なづけていることでいまも批判されることがある。

この「ジャングル・ブック」にも神聖なコブラに皿に注いだミルクを与える、という描写が2度ほど出てくる。「まだらのひも」は1892年、「ジャングル・ブック」は続編も入れて1894〜1895年。果たしてキプリングは実際にインドで聞いた話を物語に活かしたのだろうか。この合致は偶然なのか、興味深い。


最終話で、モウグリはどうしようもなく心が重くなる。あらゆる動物たちがモウグリに告げる、いつか人間に戻る、という言葉、予感。そしてモウグリは・・さらに続編ないかな、と考えてしまう。終わり方だった。

2023年7月16日日曜日

7月書評の8

キンキンのアイスコーヒーに氷砂糖なんて、ちょっと長野まゆみっぽいかな。ヒグラシも聞こえる夏の夕べ。

◼️ 白川紺子「後宮の烏 5」

人気の中華風宮廷ファンタジーはいよいよクライマックスへ。宮門の結界がついに破れる!

宮廷に住まう烏妃は代々特別な立場を与えられている。烏妃に選ばれた者は身中に烏漣娘娘(うれんにゃんにゃん)という女神を宿し、不思議な術を使う。また皇帝である夏の王に対して烏妃は祭祀を司る冬の王となる可能性を秘めている。昔日、夏の王と冬の王が争い、国は荒廃した。

時の若き皇帝、高峻(こうしゅん)は、ともすればやっかいな存在の烏妃・寿雪(じゅせつ)を大事に扱い、できるならば烏妃のくびきから解放してやりたいと思っている。

宮門には結界が張られており、烏妃は宮城の外には出られない。寿雪を含む3人の巫術師が同時に結界を破り、さらに東の海に沈んだという烏漣娘娘の半身を探し出すー。そして、ついに結界は破れた、が・・

高峻や他の妃たち、そして護衛の温螢、淡海、お付きの女官九九(ジウジウ)、そして宮廷内の巫術師や文官などここまで積み上げて来た関係性、その中で大きく事が動いていく。もともと寿雪は招魂など不思議な術を使う。しかしここへ来て、ファンタジーアニメの魔導士のような技を披露する。

この関係性、がシリーズものにはとても大事。重ね方、は物語の世界観にもつながるもので、この作品は微妙・精緻に丁寧に書き連ねて来たと思う。しかしここまであくまで宮中の出来上がった制度、しきたりの中で、また宮廷というものが持つ黒さをまぶしたフィールドで進んできた。それだけに、どんな冒険になるのか、確かめてみたくなる。

結界は破れたが、その先は?寿雪は宮城の外へと出られるのか、護衛や九九はついていくのか、高峻はどう出るのか、最終2巻の展開が楽しみだ。

2023年7月15日土曜日

7月書評の7

金曜の夜は・・バレーボールネーションズリーグ女子準々決勝日本vsアメリカ。夏のジブリ特集コクリコ坂はブッチして、NHKのYMOスペシャルは録画して。きのうウインブルドン女子準決勝観るの忘れてた。

最近ホンマにテレビっ子。

◼️ ウィリアム・シェイクスピア
「タイタス・アンドロニカス」

シェイクスピア最初期のローマ劇。重なる残酷な描写から生まれるものとは。

これは内容紹介を見て避けていたけども、全部読むからいずれはと買った。やっぱり残虐でおまけに肌の色を扱っていて、現代でそのまま演じるのは難しいかも。

ローマ帝国に侵入するゴート人の戦争に勝った将軍タイタス・アンドロニカスはゴートの女王タモーラたちを連れて凱旋する。タイタスは生贄としてタモーラの息子の1人を惨殺する。皇帝サターナイナスはタモーラの色香に迷い、自分の后としてしまう。タイタスに強い怨みを持つタモーラは高い地位を利用して情夫らと陰謀を企てる。タイタスの娘婿、皇帝の弟を殺してその罪をタイタスの息子たちになすりつけ、己が右腕を切り落とし差し出したタイタスの懇願も入れず処刑、さらにタモーラの息子たちはタイタスの娘ラヴィニアを強姦した上、両腕と舌を切り落としてしまうー。

ひどいでしょう。解説によれば、時代背景として公開処刑や流血劇など過激で残酷な見世物が流行っていたとか。

怒りに震えるタイタスは息子をゴート側に派遣、息子ルーシアスは大軍を得てローマへと進軍する。危地を脱そうとタモーラは策略を立てタイタスのもとへ向かうー。

陰謀とクライマックス。シェイクスピア劇の特徴として、なにか騒ぎが持ち上がり、あれあれと思わせて、観ている方の気持ちがスカッとするような展開をして問題が解決する、というのがよくある。でもこれは、確かに陰謀を逆手には取るけども、スカッと、なんてほど遠いですねー。

最初期の、ということで読み手もフィルターが入る。序盤から、唐突に怒り仲が悪くなったり、あろうことか敵の女王を皇妃にしてしまったりとなんか不自然なご都合主義。どうも細かいところが書き足りず、かゆいところに手が届かない。

しかしながら・・例えば近しい者を殺して殺して、という物語「リチャード三世」は殺戮、処刑の果てに、亡霊、因果応報といったものが浮き立つ。「タイタス・アンドロニカス」にも少し似たような感覚を持つ。

また解説にもあるように、ポイントとなるタモーラの情夫がムーア人で「オセロー」を想像させたり、味方、身内同士が欲のために突然袂を分つところ、セリフに詰め込んだギリシャ・ローマ神話からの引用などなど後の作品の萌芽ともいえる要素が散らしてある。

悪を放つ、悪をせずにはいられない、自分の悪賢さを露呈せずにいられない、という提示もあり、さまざま考えさせられる話ではあった。

2023年7月13日木曜日

7月書評の6

NHKの坂本龍一追悼スペシャルが素晴らしすぎる。映画「怪物」の挿入曲「aqua」から老いて病気で痩せた姿で「Merry Christmas Mr.Lawrence」。哀しく美しく、でも弾き手は、どこか満足している、その表情がモノクロでさりげなく映る。月日と人生。以前、年配の芸能人の人生を映像で振り返られても、わっかんないなーと思ってたけども、坂本龍一は真ん中。駆け抜けた人生の分岐点では確実に出会っている。

浸りながら、なんども繰り返し観て、聴いた。

◼️小川哲「君のクイズ」

クイズ道。なんかスポーツですなやっぱり。研究して、分析して、判断する。クイズのスカウティング。

友人がクイズのツワモノで、断片的な言葉から研究・分析していることが伺えたりして、クイズには親近感を持っていた。

賞金1000万円がかかったテレビのクイズ番組決勝戦、僕、三島玲央とテレビタレントで東大出のクイズ王、本庄絆のスコアは6-6、次のクイズを正解したほうが優勝、運命の問題、本庄絆は、問い読みが問題を読み出す前にボタンを押し、解答した。結果は正解、優勝は本庄となる。ヤラセなのか、超人技なのか、翌日からSNSは大変な騒ぎになった。

真相を知りたい三島は人に話を聞いたり、本庄の過去の出演番組を調べたりする。そして当の決勝戦の映像を見ながら、三島は本庄の押し方、勝負の流れを確認。その作業の中で、その日の問題にまつわる自分自身の記憶を辿っていく。

クイズプレイヤーが何を考えて解答ボタンを押しているのか、のセオリーが大変興味深い。ふむふむ、なるほど、だ。決勝を振り返りながらそれを紹介していく流れは上手、というより必然だと思える。

クイズに臨むのは人であって、両者の過去には悲哀が滲む部分もある。僕、は生粋のクイズプレイヤーで、この競技に没頭している。しかしどこか距離を置いて眺めているようにも見える。クライマックスに告白され、比較されるクイズ愛。うそか本当か?

謎と種明かし。題材がそれなりに魅力的ですぐ読めてしまう。おもしろくて楽しめる作品だと思う。ただオチはさほどでもなかったかな〜。

はい、集中できた読書でした。