2016年9月4日日曜日

8月書評の1





写真は、スコットランド人のちょっとかわいいウェイトレスさんがいる店のハンバーグ・五穀米ランチ。

さて、8月は11作品11冊。夏は例年数が多い。ミステリー&ホラー特集で7冊、それ以外4冊。過去を調べてみたら、ミステリーはけっこう7〜8冊で挫折、というかやめていて、毎年意識せずにこうなってるんだな、と思った。


乙一「銃とチョコレート」

8月は例年、個人的ミステリー・ホラー月間。7月新刊文庫でたまたま見かけて、乙一だったしミステリーらしいし、と買っちゃった1冊。読んでみたら、児童小説みたいでちょっとびっくりした。

さる国の地方の町に住むリンツは11才の、移民の少年。世間では怪盗ゴディバが華麗にお宝を盗み出し、名探偵ロイズが逮捕すべく捜査に乗り出している。リンツは父が生きていた頃、一緒に市場へ買い物に出て、古い聖書を手に入れるが、やがて聖書に挟まっている地図を見つける。

上を読んだだけで、ちょっと楽しい言葉遊びをしてあることがわかるだろう。ちなみにリンツの隣人はモロゾフさんである(笑)。

いくつかの漢字をわざとひらがなにしてあって、なんかそのやり方が、読む大人に味付けとしてアピールしているような気がしてくる。

内容は、貧困、移民差別、親の死など、乙一らしく灰色のベースがあった上で、冒険活劇が繰り広げられている。ちょっと性格破綻的な部分があって、腑に落ちなかったりもするのだが、まあ最後はやはり乙一らしく、それなりに微笑ましく、ちょい毒いりで、解決しておしまい、だ。

この本は、少し前の作品らしいが、これからのシリーズ化の臭いがしてこないでもない。

ちなみに乙一はあまり数読んでいないが、「暗いところで待ち合わせ」は名作だと思う。

島田荘司「暗闇坂の人喰いの木」

本格猟奇もの。怖いと聞いていたが、うーん、どちらかというと面白く読んだ。探偵御手洗潔(みたらいきよし)ものは玉木宏で、「占星術師殺人事件」が映画化されるんだね。

御手洗の手掛けた事件を小説化している石岡は、作品のファンだという女性森真利子と会った際、森が付き合っているという、妻持ちの藤並卓という男の話を聞かされる。やがて藤並が、暗闇坂にある、自宅の洋館の屋根に座った姿で変死しているのが発見される。

とっかかりはコミカルで、やがて魔性の木の怖さを感じさせ、さらにガーンと謎を突きつけ、猟奇的な事象を見せる。さらに絶世の美女も登場させ、物語はスコットランドに飛び、島田荘司の特徴というか、巨人幻想をも見せた上で一気に解決、となる。

上にも書いたが、確かに悲惨で猟奇的な事件を含むが、どれかというと本格ものとして、劇画を見るような気分で読んだ。

推理小説は、小出しにされる情報を楽しむのも趣きだが、今回はラストに至るまで、あれこれがかなり分からない。一部の犯人は分かるのだが、二段構えになっている。

うーん、正直を言うと、この動機は、難しい。これ以降の物語かどうかは忘れたが、どこかで読んだ気もするし、釈然としない感じもする。期待し過ぎた感もあるかな。

まあ、おどろおどろしい雰囲気も、突飛さも、島田荘司らしさも味わえたかな。

アントニイ・バークリー
「毒入りチョコレート事件」

1929年作の、名作と言われるもの、なんだが、こりゃなしだぜベイビー、てな作品だ。

ユーステス卿からもらったチョコレートを持って帰って妻と食べたベンディックスは昏倒し、妻は死に至る。ロジャー・シェリンガム主催の「犯罪研究会」の面々はこの謎を解き犯人を割り出すべく、それぞれ独自に調査し、見解をまとめて、皆の前で発表することにする。

まず、こうした欧米ものによくある、直喩、暗喩をふんだんに含んだユーモラスな?文章が前半大変まだるっこしい。一つ提案だが、訳も古そうなので、新訳版を出した方がと思う。さてともかく、2人目の発表から熱が入ってきて、読むのが進むようになる。

なかなか巧妙なのが、最初の方は、「この推理には、これが足りないな」と見ていられるのが、どんどん精度が上がって行くように見える後半の部分だ。

で、最後は密かに予想通りの展開になった、と思ったのだが・・読み終わった瞬間は・・当然計算されているのだろう。

解説によれば、この小説が書かれた1920〜30年代は、推理作家たちの黄金期で、様々な新趣向の作品が発表された時代だとのこと。そのジャンルの一環なのかな、と捉えるべき、なのだろう。1人の名探偵が断定的独善的に事件を斬るのではなく、別のスタイルを投げかけた、ということか。

日本人作家の作品にもたまに登場する「毒入りチョコレート事件」。私が知ったのは、米澤穂信の小説だっただろうか?「多重推理」というものの、ひとつの代名詞にはなっているようだ。

ふうむ、ミステリファンを気取って、解説に書いてある言葉で終わりにするなら、

「なるほど、これが毒入りチョコレート事件なのか。」

でもなあー。


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