いま数え直したら、1月は18冊だった。久々に外書の長編読んでいい感じ。んじょラスト!
中山七里「いつまでもショパン」
1月はシャーロック・ホームズの月、と決めたものの、10作品12冊読んでもういいだろうと・・楽しいのだが、パスティーシュ、パロディはやはり贋作であって、数を読んでいると聖典=原作からどんどん離れて行ってしまう感もある。そんなタイミングで、シリーズ読んでて文庫化を待ってたこの作品が出たので、ここらで逸脱することにした。たまに楽しむから面白いのかもね。
さて、「いつまでもショパン」舞台がガラッと変わり、それなりに楽しめた。このミス大賞を受賞し映画化もされた「さよならドビュッシー」、そして「おやすみラフマニノフ」に続く第3弾。探偵役のピアニスト、岬洋介は、今回、なんと5年に一度のピアノコンクール最高峰、ショパン・コンクールに出場する。時あたかもアメリカを中心とするイラク・アフガニスタンへの攻撃に参加したポーランドでは、爆破テロが頻発、コンクールは中止の危機に追い込まれるが・・。
私はクラシック好きで、同じくショパン・コンクールもののマンガ「ピアノの森」も全巻読んでいるが、ポーランドのショパン論、また不明朗と捉えられがちな審査基準は、そちらでも主題のひとつとなっている。ショパンの像がある公園も同じで、正直かなりかぶる。
岬はもちろん謎の解決に絡むが、それは今回も副次的なものと言えるくらいで、やはり主題は音楽。ショパン・コンクールという、音楽を表現するには広過ぎるほどのフィールドがあり、存分に楽しめる。岬もまた、今回はピアニストとして、超人的な能力を発揮する。
これまでは、家庭内の殺人、大学内の事件だったので、国際的爆破テロ、ショパン・コンクールという設定にはかなり壮大になったなあ、と思ったものだが、本来の、音楽を大いに取り上げるシリーズのパワーは数も内容も増幅されていて、まずまず面白い。
ショパン・コンクールを続行する姿勢は懐疑ものだし、どこかミステリーとしては不備が有るような謎解きも相変わらずだったが音楽ものとして楽しめた。
ちなみにあまちゃん出演の橋本愛主演の「さよならドビュッシー」の映画は、もうひとつ、もうふたつ、だった。
桜木紫乃「氷平線」
前作も、ホームズも色気らしい表現はゼロなので、ナマな描写にギャップを感じて始まった。「ホテルローヤル」で直木賞を受賞した作者のデビュー本。短編集で、冒頭作品の「雪虫」でオール讀物新人賞を取って注目された。
北海道在住で、各短編の舞台は全て道内である。職人技を追求するのがひとつの特徴にも見えるが、冒頭「雪虫」のルーズさもまた持ち味で、ナマな人間の姿を描き出している、という感じだろうか。基本は女の、本質と窮屈な環境からの脱却を訴えたいようにも見える。
短編は苦手だ、と以前書いたが、短いだけに、展開がとんとん表紙で劇的だ。ラストの表題作はあまりにも展開とブレイクが極端でちょっと気後れしたが、なぜか心に残る。
私に、「短編は余韻がポイント。うまい!という作品もある。」と語った人が居たが、今回は納得できない部分がありながらも、やられた感があった。やはり直木賞受賞作の前作には注目、といったところか。
朱川湊人「花まんま」
食い込むなあ・・という感じだ。「ノスタルジック・ホラー」というジャンルは、初めて知った。2005年上半期の直木賞受賞作。短編集である。
いずれも昭和40年代が舞台で、男女の子供が主人公。さりげない懐かしさと世情を漂わせて、不思議なこと、そして悲しい出来事が起きる。
物語の色も同一ではなくて、呑気な結末のものもあれば、不幸で、女性的な終了もある。最初は軽さも感じたが、ハートにシクシクとくる感じだ。
前作の「氷平線」とこの短編集が2つ続いた。それぞれに織り込まれたものがあり、また、やられた感を味わった。
カーレド・ホッセイニ
「君のためなら千回でも」上下
読了すぐの感想は、「くはー、大きな物語だった。」泣くというよりは深い感動を呼ぶ人生の大河ドラマ。アフガニスタンが舞台の話である。
王政のアフガニスタン・カブールに生まれたアミールには、召使いの息子、ハッサンという遊び仲間がいた。身分と人種の違いが横たわっていたものの、2人はいつも一緒だった。しかし、凧合戦で優勝した日、アミールはハッサンが悪童たちに酷い仕打ちを受けているのを見て見ぬふりをしてしまう。革命、そしてソ連の侵攻、北部同盟、タリバン・・アミールたちにも容赦無く、アフガニスタンの困難な運命が降りかかる。
作者のホッセイニはアフガニスタン出身で、少年の頃起きたソ連軍侵攻の際、アメリカに亡命したそうだ。アフガニスタンの文化、習俗、平和な時代についての愛情が文章に溢れている。子供の無垢さ、残酷さ、そして正直な後悔と苦しみ、下巻ではさらに数奇な運命が、彩り豊かに表現されている。
アメリカで「HERO」などを製作し、また北京オリンピック開会式の演出を指揮した映画監督チャン・イーモウは、中国時代に「活きる」という大河ドラマ的作品を作っている。清の時代の金持ちの放蕩息子が賭け事で財産を剥ぎ取られて庶民となり、国共内戦、共産党独裁、文化大革命、という、時代の変遷に運命を翻弄される物語だった。監督自身、父親が文化大革命時に農村へ追放されたという過去を持っている。ちなみに、製作から8年の間、少なくとも日本での公開の許可は降りなかったらしい。
「君のためなら千回でも」には、「活きる」に似た感覚がある。時代の運命に左右される人生。加えて子供の頃の後悔に永く苦しむアミールと彼の困難には同情さえしてしまうが、彼が支えられているものもまた、大変にみずみずしい。
最初は友情だけの物語かと思っていて、こんな大河だとは予想してなかった。アメリカのベストセラーで、映画化もされ、全世界で800万部を売り上げたという触れ込みだ。とても貴重な、なかなか知られていない文化的側面をも覗けた一冊だった。こういうの、好みである。
三上延「ビブリア古書堂の事件手帖5〜栞子さんと繋がりの時〜」
たまには背表紙を撮ってみた。
長く待っていた人気シリーズの最新刊。ラノベだ、男性の望む(あり得ない)女性像を描いた主人公だ、などという一部の声を浴びつつ(笑)やはり面白いと思う。
今回は手塚治虫「ブラックジャック」が題材のひとつ、ということもあり、さらに楽しめた。寺山修司も出て来るが、私の知る限り最も書を愛する友人が「書を捨てよ、町へ出よう」の話をしていたし、それなりに興味深かった。
古書ミステリー以外の恥ずかしい部分はどうでもいい、なんて見栄を張るつもりは無く、作中の親友いわく「おっぱいメガネ」の栞子さんをはじめ、魅力に狂気をもまぶした、まるでモリアーティ教授のような母の智恵子も知的で妖しく、登場人物たちのキャラを楽しみつつ、昔風の初歩的恋愛劇も面映く好んで眺めている。
さすがに5巻ともなると少々パターンづいて来るし、予備知識が勝負の、いわゆるフェアの推理小説ではない。それでも、かなり真剣な古書ミステリーであり、その謎の解説もふくめ、新たな形を生み出した、と言ってもいいんじゃないかな、も思える。

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