今週は、エアコンの必要はなかったが、まだうちわは必須アイテムである。バス停から帰りの坂道を登って汗ばむことが無くなったらやっと秋深まる、というところなんだろう。でも大体毎年、少し暑い、からいきなり寒くなるからなあ。さて、今月は11作品。行ってみましょう!
長友佑都「日本男児」
熱い、あまりにも熱い、ナガトモの本。2011年春の発行で、生い立ちと、北京オリンピック出場、南アフリカワールドカップ、チェゼーナ移籍、アジアカップ2011優勝、インテルへの電撃移籍、東日本大震災の時のこと、インテルでの日々等々が記されている。
彼がハングリーな理由、どのように物事を考え、困難に向かって行くか、が繰り返し本人の言葉で語られている。他のサッカー選手の本には、日本代表で仲の良い選手のことや、プライベートのことも出てくるものだが、そのような副産物はまったくない。ミーハーな読者としては、期待するところではある。ただ、ブログなどでは、必ずしも雄弁ではないナガトモがまっすぐに語りかけた書であることには疑いがない。楽しく読めた。
涙腺が緩いのか、震災の時の話を読んで、あの時のことを思い出し、涙してしまった。
高橋克彦「白妖鬼」
少し前に読んだ、同作者「鬼」の続編と言っていい。陰陽師である弓削是雄は赴任先の陸奥で、突如罷免される。その直後、烏天狗姿の暗殺者が!
時は坂上田村麻呂に制圧された蝦夷がまだ朝廷=内裏に対し怨みを抱いている頃の話。さまざまな術を使い、鬼を退治する陰陽師の活躍を描く。「鬼」は主人公の違う、連作短編集だったが、今回は「鬼」にも登場した、主人公の弓削是雄が、前作をベースに活躍する。
今回は、お色気あり、立ち回りありの時代活劇で、司馬遼太郎の「梟の城」を思い出した。オチも大きく、エンタメとして、面白かった。いやー鬼好きのミニな楽しみである。誰か分かってくれるだろうか(笑)。
高橋克彦「長人鬼」
陰陽師・弓削是雄とその仲間たちの冒険活劇第2弾。凶事相次ぐ都。是雄は関白太政大臣の命で淡路に踏査に出掛ける。一方、是雄不在の都では、人の背丈をはるかに越す大きさの鬼が現れた。
上の「白妖鬼」に続く陰陽師シリーズとしては3つめの作品。一気に読める。半日で読んでしまった。前回も最後は大物だったが、今回も意外な形で大物が登場する。もうシリーズ作は出てないのだろうかと調べてみると、まだ「空中鬼」、是雄ものではないが「紅蓮鬼」とあるらしい。楽しみにとっておこう。この時代の描写も、なかなか好きである。ああ、面白かった。
吉村昭「吉村昭の平家物語」
平家物語の訳出である。ところどころ削ったところもあるらしい。良くある事で、ブックオフでこの本を見つけた折り、呼ばれているような気がして買ってしまった。
なんというか、描写が、あまりにも詳しいので、伝承にプラスして創り話がそこかしこに入っている感じだ。平家、というよりは平清盛をひたすら悪役にしようとしていて、鎌倉時代の成立というのも分かる気がする。
那須与一の話や鵯越の話もありと、さすが800年も長らえて来た物語、読み出すと夢中になった。平家のプライドの高さ、源頼朝の、異常なほどの疑い深さも描かれ、全体に無常観が漂っている。
やはり名作である。
東野圭吾「夜明けの街で」
不倫する奴なんて馬鹿だと思っていた、妻子持ちの渡部は、会社に来ていた派遣社員、仲西秋葉と深い仲になった。彼女には、15年前に起きた殺人事件の犯人では、との容疑がかかっていた。
不倫について、男の生々しい感情を、素敵な横浜デートとともに描きながら、サスペンスを絡めて行く。最後は、これでおしまいか、という軽さー。お手軽に楽しめる、東野圭吾の本懐の一つだと思う。
まあ特殊な状況だし、グダグダにならないのがまた現実離れしているが、楽しめた。男の本音が垣間見れる。なんか、「モンスター」に似てるかな。あんなにえぐくないけれど。
三崎亜紀「となり町戦争」
三崎亜紀のデビュー作にしてすばる文学新人賞受賞作、直木賞候補作。映画化もされたらしい。
「僕」は、住んでいる町の広報紙で、となり町と戦争状態に入る事を知る。しかし、日常はまったく変わらず、戦いの匂いすらしない。そのうちに、町役場のとなり町戦争推進係から、特別任務を依頼される。
最後までネタはバラされないが、この小説自体が現代社会への、大きな隠喩となっているところは誰もが気付くと思う。筆者は熊本市職員だったそうだが、その経験を土台に、見事にまとめている。
文章は純文学風。またも村上春樹チックというと「なんでもそう思うか?」と言われそうだが、似ているのだから仕方がない。表現を考え抜いて、効果まで計算しているのは素晴らしい。
難を言えば教科書的か。もちろん起きている事それ自体はコケティッシュなのだが、淡々とし過ぎずに、あえて踏み込むことも必要かも知れないな、と思った。直木賞候補時の審査員の評に負けず、これを超える作品を描けるか。楽しみである。

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