春からの多忙で、しばらく連休というものを取ってなかったが、先の週末は3連休。久しぶりにのんびりした。
金曜日は妻とホームセンター、それから花のガーデンに行って、ブルーベリーの木を買ってきた。すでに我が家は屋上のテラスで各種野菜を栽培していて最近はサニーレタスが山ほど収穫出来ているが、ブルーベリーもたわわに実るという。妻の次の目標はレモンの木だそうだ。
気になっていた焼肉屋で昼定食を食べて、午後はずーっとソファで本を読んでいた。息子が帰って来てからちょっとサッカーをした。暑いが、山はそよ風が気持ちいい。夜は満月も出て、ゆっくり鑑賞、のんびり気分がいや増した。
ところで、毎夜息子が怖い話をその場で作ってしてくれ、という時に、坂田金時、金太郎、という名前、鬼の話を断片的に思い出し、どうだったっけと調べてみた。
金太郎はその強さを山の住まい近くで発揮していたが、きこりにみをやつした武士がその強さに驚き、都へ連れ帰る。ちなみに、金太郎の父親は坂田という元武士だった。いくつかの話には、山姥が雷神との間に設けた子ども、という伝承も見られる。個人的には、金太郎の母親は「やまんば」ではなく、山に住んでいた、年老いた女を山姥と表現したのではないかなあと思っている。
さて金太郎を連れて来た武士は碓井貞光という名で、藤原道長に仕えた源頼光の家来、頼光四天王の1人であり、命を受けて、強い者を探すために全国各地を旅していた。
金太郎は坂田金時という名を授かり、やがて四天王の1人として、頭領の酒呑童子が束ねている鬼たちを退治するため大江山へと出掛ける。四天王は碓井貞光に渡辺綱(わたなべのつな)、占部季武(うらべすえたけ)がいた。
渡辺綱には鬼絡みの話が残っている。京の都で困っていた女性を馬の後ろに乗せたところ、それは酒呑童子の一の家来、茨木童子で、背後から襲いかかって来たため名刀とされる髭切の太刀を抜いて応戦、片腕を斬り落とした。
渡辺綱はその腕を主君の頼光に見せ、頼光が陰陽師に相談したところ、「鬼は必ず取り返しに来る。7日の間閉じ籠っていなさい」とのお告げを受けて家にじっといた。
7日間の最後の1日に、渡辺綱の乳母だった伯母が訪ねて来た。渡辺綱はこの戸は開けることができない、と言ったが、叔母が恩着せがましく懇願するので中に入れ、鬼の腕を見せてしまった。途端、伯母は茨木童子となり、自らの腕を掴んで飛び去ったー。
いつ読んだか覚えたか忘れたが、私はずっとこのくだりを覚えていた。今回調べ直して、懐かしい想いだった。
土曜は夕方に、人の少ないポケモンセンターへお出掛けして、中華の晩御飯食べて帰って来た。日曜は、公園で息子とサッカー。さすがに暑かった。
買い物以外はあまり外出していないなあ。梅雨に真夏の陽射し、どちらも避けて遊びに行きたいな。
2013年5月29日水曜日
2013年5月20日月曜日
ビータ�
再び秋田。今度は泊まり。行った日はホントに寒くて、薄手のコートが欲しいくらいだったが、翌日はよく晴れて、暑かった。
泊まりの夜は、やはりここぞと新鮮な魚介に比内鶏にきりたんぽと食べ尽くした。ホテルも良くてぐーがー寝た。
朝、きれいな鳥海山が見えた。地元の人によると鳥海山が見えた翌日は雨なんだとか。
バタバタした仕事を終わり、秋田には準備の時間をかけたので、仕事終わりは心地いい疲労を味わいつつ帰った。
月曜はひさびさの平日休みで、屋上でママとランチ。昼間からワインを飲んで楽しい時間。でもこっから先はルーフがないと暑いねーと話していた。
次はまた、北紀行が待っている。ちょっと間が空くので束の間身体を休めよう。
泊まりの夜は、やはりここぞと新鮮な魚介に比内鶏にきりたんぽと食べ尽くした。ホテルも良くてぐーがー寝た。
朝、きれいな鳥海山が見えた。地元の人によると鳥海山が見えた翌日は雨なんだとか。
バタバタした仕事を終わり、秋田には準備の時間をかけたので、仕事終わりは心地いい疲労を味わいつつ帰った。
月曜はひさびさの平日休みで、屋上でママとランチ。昼間からワインを飲んで楽しい時間。でもこっから先はルーフがないと暑いねーと話していた。
次はまた、北紀行が待っている。ちょっと間が空くので束の間身体を休めよう。
2013年5月13日月曜日
ビータ
息子が猿の真似をすると、パパは「ルーサー発見、ルーサー発見、直ちに捕獲せよ」と言って逃げる息子を追いかけ回す・・我が家ではもはや、阿吽の遊びである。
「ビータ」というのは楽団用語で旅のことらしい。GW明けてすぐ名古屋へビータ。ここ関西から名古屋は新幹線で50分なので、泊りで行く機会は稀だ。ここぞとばかりに手羽先とひつまぶし食べて来た。どっちもとっても美味かった。写真は手羽先の店でのカクテル「デビルマン」である。
3月からこっち、多忙を極めていてあっちこっち行っている。今週も東京へ、週末はまた北へ、ビータ。
星空を見上げたら、春の強風と多忙でしばらく見てなかったうちに、だいぶ様相が変わっていた。まだまだ夏本番の配置ではないが、珍しい、晩春初夏の感じ。朝、川沿いの木陰を歩くのが気持ち良かった。
明日も暑いかな。
「ビータ」というのは楽団用語で旅のことらしい。GW明けてすぐ名古屋へビータ。ここ関西から名古屋は新幹線で50分なので、泊りで行く機会は稀だ。ここぞとばかりに手羽先とひつまぶし食べて来た。どっちもとっても美味かった。写真は手羽先の店でのカクテル「デビルマン」である。
3月からこっち、多忙を極めていてあっちこっち行っている。今週も東京へ、週末はまた北へ、ビータ。
星空を見上げたら、春の強風と多忙でしばらく見てなかったうちに、だいぶ様相が変わっていた。まだまだ夏本番の配置ではないが、珍しい、晩春初夏の感じ。朝、川沿いの木陰を歩くのが気持ち良かった。
明日も暑いかな。
2013年5月6日月曜日
GWとアニソン
GW中は、見事に1日ごとに仕事と休みの繰り返し。それでも去年よりは休みが多い。3日はまたまた寒の戻りで、薄手のコートを持って行く。山は寒いのと、とにかく風邪をひきたくないので厚着を心掛けている。5日は日中気温が上がって上着は無し、6日は三田のアウトレット。ここは山裾で涼しい風も吹き、半袖の上に薄いパーカーを着てちょうどくらいだった。
アニメチャンネルで「ハクション大魔王」の一挙放送をしているのだが、この
「アクビちゃんの歌」
は、いつ聴いても心に残る。歌い手がいいなあとクレジットを見ると、弱冠12歳の堀江美都子だった。
「キャンディキャンディ」
を代表作として、知ってるだけでも
「けろっこデメタン」
「やまねずみロッキーチャック」
「ジムボタンの歌」
「てんとう虫の歌」
「ボルテス�」
「名犬ジョリィ」
などの主題歌を歌った、アニメソング界の大御所である。「秘密戦隊ゴレンジャー」ではささきいさおとのデュエットで主題歌を歌っている。←調べました。
「アクビちゃんの歌」は、なにがどう、となかなか表現出来ないが、ともかくまずまっすぐで伸びやかな声と、歌の切れ目のところの技量が、幼いながら魅力的だ。人の持つ才能ってすごいなあ、と思う。キャンディキャンディではもうこの幼さがなくなっているから余計そう感じる。
ちなみにささきいさお、水木一郎、
「アタックNo.1」
「アルプスの少女ハイジ」
「ドラえもん」
の大杉久美子と並び「アニソン四天王」と称されているらしい(笑)。
はい、きょうはところで、のアニメ話でした。
アニメチャンネルで「ハクション大魔王」の一挙放送をしているのだが、この
「アクビちゃんの歌」
は、いつ聴いても心に残る。歌い手がいいなあとクレジットを見ると、弱冠12歳の堀江美都子だった。
「キャンディキャンディ」
を代表作として、知ってるだけでも
「けろっこデメタン」
「やまねずみロッキーチャック」
「ジムボタンの歌」
「てんとう虫の歌」
「ボルテス�」
「名犬ジョリィ」
などの主題歌を歌った、アニメソング界の大御所である。「秘密戦隊ゴレンジャー」ではささきいさおとのデュエットで主題歌を歌っている。←調べました。
「アクビちゃんの歌」は、なにがどう、となかなか表現出来ないが、ともかくまずまっすぐで伸びやかな声と、歌の切れ目のところの技量が、幼いながら魅力的だ。人の持つ才能ってすごいなあ、と思う。キャンディキャンディではもうこの幼さがなくなっているから余計そう感じる。
ちなみにささきいさお、水木一郎、
「アタックNo.1」
「アルプスの少女ハイジ」
「ドラえもん」
の大杉久美子と並び「アニソン四天王」と称されているらしい(笑)。
はい、きょうはところで、のアニメ話でした。
2013年5月1日水曜日
4月書評の2
おととい、息子と野球をずっとしてたら、おしりの筋肉が痛くなった。シートノック、上手く捕れなくても、ボールを追いかけて、走って、投げて、が楽しいようだ。いいことだ。公園で、暗くなるまでやっていた。
高田郁「心星ひとつ みおつくし料理帖」
シリーズ第6弾。いよいよクライマックス!大店を持たないか、という誘いが2つも同時に舞い込む!また、澪の秘かな想いは通じ、物語は怒涛の展開を見せる!
秋から冬に向かうからか、前巻と違い料理が旨そうだった。つみれ汁におだまき、お手軽弁当も食欲をそそる。次はいよいよ最終巻。テレビ朝日が単発でドラマ化したが、どこか連続で、原作に忠実にドラマ化してくれんかな。
村山由佳「星々の舟」
2003年上半期直木賞受賞作品。石田衣良「4TEEN フォーティーン」との同時受賞。ある家族の、連作短編集である。
ここのところ、ハードボイルドや探偵ものを読むことが多いせいか、「よろこびの歌」やこの作品を読むとまた別世界のような境地である。
ゆがんだ、昭和世代家族の物語である。短編とはいえ、連作は読みやすいし、シンパシーも湧きやすい。この作品では、物語それぞれが強烈なエピソードを扱っていて、飽きさせない。光はあるが、ハッピーエンドというわけではない。濃密で、確かに佳作の匂いを持っている。筆力も感じる。
だが、どうも読後感が重いのは気のせいか。どんな小説にもそれはあるものだが、少々計算と頑固さが見え隠れするからか、最終的に、好きにはなれなかった。
藤原伊織「手のひらの闇」
リストラ退職間際の、飲料会社広告宣伝部課長。彼のところに、会長から直々に、CMに関する依頼があった。それを断ると、その夜、会長は自殺遺体で見つかったー。
一般サラリーマン社会を母体とした、ハードボイルド・アクション・サスペンス。作者は作家生活に入ってからも、最大手の広告会社社員であり続けた。作品の設定は、まさに手慣れたフィールドだろう。
展開のテンポが速く、次々と読ませていく筆致は相変わらず面白い。主人公が切れる上にのんびり屋、というのもこれまでと同じ設定だ。正直ちとパターンづいているが、まずまず楽しく読めた。
綾辻行人「Another」(2)
私はアヤツジストである。デビュー作「十角館の殺人」に衝撃を受けて以来、殆どの著作を読んでいる。「館シリーズ」で新本格派に酔い、「殺人鬼」ではそのハチャメチャな残酷ぶりに惹きつけられた。「囁きシリーズ」も「殺人方程式」も楽しく読んだ。
今回は、ある地方都市の中学校を舞台にした、ファンタジックなホラーもの。舞台立ても内容も、恩田陸の学園ものを思い起こさせる。発表してからの反響が大きく、漫画化、アニメ化、実写映画化された。作者本人が「代表作との自負がある」と書いている。
あの、恩田陸「六番目の小夜子」も意識して書いたとの記述があるが、どちらかというと「球形の季節」に近いイメージがある。恩田を綾辻らしく、ホラーっぽく残酷に大きく膨らませた感じである。前にテンポの良い藤原伊織を読んだせいか、序盤の種明かしまでの部分が緩慢に思えたが、それでも本格推理ものっぽい雰囲気と、次は次はと読ませるのはさすが。オチはやや強引か。でも久々の綾辻行人、面白かった。
乙川優三郎「生きる」
2002年上半期の直木賞受賞作。時代劇もの、中編3つを収めた作品である。家老に追い腹を禁じられ、周りの厳しい白眼視に耐えて生きる男、困窮から娘を身売りし、街の無頼漢に金を与えて廓へ様子を見に行かせる元奉行、かつて出世のために身分違いの女を捨てた、隠居武士。
お家騒動、派閥の対立、意見の相違からの辞職、出世競争など、ネタはけっこう時代劇の定番である。ドラマ自体は平凡だ。しかし、主人公が追い詰められ、そこに一条の光が差すまでの過程を丁寧に描いていて、感情移入して読んでしまう。最後に、昔愛し合い別れた女を隠居武士が想う、という物語を持って来ているのは、男心をくすぐって小憎らしい。
時代劇には現代と違い、生活上の様々な制約があり、それがために人間らしいドラマも描ける、とやっと悟ったのは、今回の収穫だ。読後感がよく、また濃密な感じがした。心に来た佳作、だと思う。
三宅博「虎のスコアラーが教える『プロ』の野球観戦術」
普通にサラリーマンをやっていると、今の時代、必ずデータに突き当たる。そういった資料作成の仕事もしてたので、多くのデータを集積すると傾向が見えてくる、というのはよく分かる。データを利用しようとしない人がいるのも分かる。
この本が強いのは、根拠、裏付けがあるから。もちろん著者の野球に対する姿勢も垣間見えるが、なにせ、おそらく世界で最も野球を分析しているリーグの、待った無しの世界。勝負に賭ける気持ちが伝わって来て、面白かった。
小杉健治「父からの手紙」
濃厚な家族の情愛ミステリー、とでもいうものである。同時進行の2つの物語が出会うところには、驚くような真実があった。
ストーリーは短く書けるようなものではないので割愛する。ちょうど今、書店に平積みになっている文庫だ。
まず、半分までは、なかなか進まなかった。あまりにもストーリー展開が遅過ぎるような気がしたからだ。が、後半は転がり出す。オチに正直意表は衝かれた。まあその、アガサのABC殺人事件、のような感があるな。難を言えば、動機にはやはり違和感を覚える。前半と後半の落差も激しい。しかしながら、最後の手紙の情景には、心が動く。いつか、自分も。人生のラストシーンか。
高田郁「心星ひとつ みおつくし料理帖」
シリーズ第6弾。いよいよクライマックス!大店を持たないか、という誘いが2つも同時に舞い込む!また、澪の秘かな想いは通じ、物語は怒涛の展開を見せる!
秋から冬に向かうからか、前巻と違い料理が旨そうだった。つみれ汁におだまき、お手軽弁当も食欲をそそる。次はいよいよ最終巻。テレビ朝日が単発でドラマ化したが、どこか連続で、原作に忠実にドラマ化してくれんかな。
村山由佳「星々の舟」
2003年上半期直木賞受賞作品。石田衣良「4TEEN フォーティーン」との同時受賞。ある家族の、連作短編集である。
ここのところ、ハードボイルドや探偵ものを読むことが多いせいか、「よろこびの歌」やこの作品を読むとまた別世界のような境地である。
ゆがんだ、昭和世代家族の物語である。短編とはいえ、連作は読みやすいし、シンパシーも湧きやすい。この作品では、物語それぞれが強烈なエピソードを扱っていて、飽きさせない。光はあるが、ハッピーエンドというわけではない。濃密で、確かに佳作の匂いを持っている。筆力も感じる。
だが、どうも読後感が重いのは気のせいか。どんな小説にもそれはあるものだが、少々計算と頑固さが見え隠れするからか、最終的に、好きにはなれなかった。
藤原伊織「手のひらの闇」
リストラ退職間際の、飲料会社広告宣伝部課長。彼のところに、会長から直々に、CMに関する依頼があった。それを断ると、その夜、会長は自殺遺体で見つかったー。
一般サラリーマン社会を母体とした、ハードボイルド・アクション・サスペンス。作者は作家生活に入ってからも、最大手の広告会社社員であり続けた。作品の設定は、まさに手慣れたフィールドだろう。
展開のテンポが速く、次々と読ませていく筆致は相変わらず面白い。主人公が切れる上にのんびり屋、というのもこれまでと同じ設定だ。正直ちとパターンづいているが、まずまず楽しく読めた。
綾辻行人「Another」(2)
私はアヤツジストである。デビュー作「十角館の殺人」に衝撃を受けて以来、殆どの著作を読んでいる。「館シリーズ」で新本格派に酔い、「殺人鬼」ではそのハチャメチャな残酷ぶりに惹きつけられた。「囁きシリーズ」も「殺人方程式」も楽しく読んだ。
今回は、ある地方都市の中学校を舞台にした、ファンタジックなホラーもの。舞台立ても内容も、恩田陸の学園ものを思い起こさせる。発表してからの反響が大きく、漫画化、アニメ化、実写映画化された。作者本人が「代表作との自負がある」と書いている。
あの、恩田陸「六番目の小夜子」も意識して書いたとの記述があるが、どちらかというと「球形の季節」に近いイメージがある。恩田を綾辻らしく、ホラーっぽく残酷に大きく膨らませた感じである。前にテンポの良い藤原伊織を読んだせいか、序盤の種明かしまでの部分が緩慢に思えたが、それでも本格推理ものっぽい雰囲気と、次は次はと読ませるのはさすが。オチはやや強引か。でも久々の綾辻行人、面白かった。
乙川優三郎「生きる」
2002年上半期の直木賞受賞作。時代劇もの、中編3つを収めた作品である。家老に追い腹を禁じられ、周りの厳しい白眼視に耐えて生きる男、困窮から娘を身売りし、街の無頼漢に金を与えて廓へ様子を見に行かせる元奉行、かつて出世のために身分違いの女を捨てた、隠居武士。
お家騒動、派閥の対立、意見の相違からの辞職、出世競争など、ネタはけっこう時代劇の定番である。ドラマ自体は平凡だ。しかし、主人公が追い詰められ、そこに一条の光が差すまでの過程を丁寧に描いていて、感情移入して読んでしまう。最後に、昔愛し合い別れた女を隠居武士が想う、という物語を持って来ているのは、男心をくすぐって小憎らしい。
時代劇には現代と違い、生活上の様々な制約があり、それがために人間らしいドラマも描ける、とやっと悟ったのは、今回の収穫だ。読後感がよく、また濃密な感じがした。心に来た佳作、だと思う。
三宅博「虎のスコアラーが教える『プロ』の野球観戦術」
普通にサラリーマンをやっていると、今の時代、必ずデータに突き当たる。そういった資料作成の仕事もしてたので、多くのデータを集積すると傾向が見えてくる、というのはよく分かる。データを利用しようとしない人がいるのも分かる。
この本が強いのは、根拠、裏付けがあるから。もちろん著者の野球に対する姿勢も垣間見えるが、なにせ、おそらく世界で最も野球を分析しているリーグの、待った無しの世界。勝負に賭ける気持ちが伝わって来て、面白かった。
小杉健治「父からの手紙」
濃厚な家族の情愛ミステリー、とでもいうものである。同時進行の2つの物語が出会うところには、驚くような真実があった。
ストーリーは短く書けるようなものではないので割愛する。ちょうど今、書店に平積みになっている文庫だ。
まず、半分までは、なかなか進まなかった。あまりにもストーリー展開が遅過ぎるような気がしたからだ。が、後半は転がり出す。オチに正直意表は衝かれた。まあその、アガサのABC殺人事件、のような感があるな。難を言えば、動機にはやはり違和感を覚える。前半と後半の落差も激しい。しかしながら、最後の手紙の情景には、心が動く。いつか、自分も。人生のラストシーンか。
4月書評の1
4月は、12作品14冊。まずまずバラエティに富んではいた。ではSTART!
ヤン・マーテル「パイの物語」(2)
イギリスで権威があるというブッカー賞を受賞した作品。作者はカナダ人の両親を持つスペインの作家だとか。主人公の少年は、インドからカナダへの移住の途上、船が沈没、やはり移送途上で逃げ出したベンガルトラとともに救命ボートで漂流するという、特殊な状況下でのサバイバルもの。アン・リー監督で映画化された。
世に漂流、遭難ものは多い。「十五少年漂流記」とか、私の場合は「無人島の三少年」という物語を、幼少の頃読んで強い印象を受けた。長じてからは、「おろしや国粋夢譚」「エンデュアランス号漂流」、最近では「無人島に生きる十六人」という実話もしくは実話に近いものを読んだ。
「パイの物語」はまったくの創作である。動物学的な観点から異常な状況を描いている。それなりに興味深く、読んでいると漂流少年の極限状況に自分を同化させてしまう。おそらくそこが評価されたのだろうが、それ以上は、何をどう読み取ればいいのか、ちょっと判断がつきかねる。日本人の扱いについては、不快である。
西加奈子「円卓」
祖父母、両親、三つ子の姉に囲まれ公団住宅で暮らす、小学3年生の琴子は孤独になりたい。関西の大家族と小学校を舞台に、笑いと温かさで綴るハートフルな物語。
興味があった西加奈子、どれを読もうかと思っていると、人が最新刊を貸してくれた。これ自体は200Pもない作品である。
こっこ、こと琴子は、いつもなにかしらイライラしている。クラスで眼帯をしている子や、複雑な家庭環境に憧れたりする。また、大家族というのも、昔は普通にあり、読んでいる大人を、そうやったなーと、思わせる。ある意味、我々世代の物語で、うまく編み込んでいて、染み込むようなストーリーを、笑いながら、楽しく読めた。
山本兼一「利休にたずねよ」
2008年下半期直木賞受賞作。天童荒太「悼む人」とダブル受賞である。
茶人で千利休は秀吉に重用されるが、晩年にその怒りを買い、切腹に追い込まれる。他の誰とも違う、絶対的な美的感覚の裏には、激しい情熱が感じられた。そのルーツは何なのか。
解説で、時の直木賞選考委員である宮部みゆきが、「決して手抜きをしない、働き者の作家」と評しているが、いや濃密な物語である。「破格の構成」でもって、千利休の一生を振り返っている。言葉はさりげなく現代語を混ぜているが、時代考証、茶道具、用語、作法、専門的でない表現方法なども、息つく暇もないほど凝縮された作品だ。
1本の芯を通していながら、エンタテインメントであることを忘れていない。直木賞作品には濃密なものが多く、描きたいことが端的には表されて無いことも多いが、またも、その濃密さを味わえた感慨がある。
宮下奈都「よろこびの歌」
著名音楽家の娘でありながら音楽科の受験に失敗し、私立の普通校に通う御木元玲。彼女を中心とした、高校生女子たちそれぞれの物語を綴る連作短編である。読売新聞2009年の3冊に選ばれている。
この本の作者紹介を見ると『「スコーレNo.4」が話題となる』とある。スコーレは昨年の年間3位。興味深く読んだ。
今回の話は、きれい過ぎる気がする。しかし、やはり設定、表現に宮下奈都らしい丁寧さが見える。時として突飛なのも特徴だと思う。
例えば、恩田陸「六番目の小夜子」「球形の季節」、近くは柚木麻子「終点のあの子」など、形は違うが、高校生ものには、独自の魅力がある作品が多い。いつも自分に照らして、こんなに多感じゃなかったな、女子はこうだったのかな、などと思うが。
まあ、宮下奈都の場合は、解説の末尾にある、四の五の言う前にとっとと読みましょう、というのが最も正しいのだろう。
北村薫「ニッポン硬貨の謎」
来日したエラリー・クイーン。当然のように事件が降りかかる!
2003年の作品で、文庫は2009年が初版となっている。全編が、エラリー・クイーンへのオマージュと言っていい。思い切って言えば、お遊びの一冊だ。
ミステリ好きには例外無く、私も一時期はクイーンの国名シリーズ、傑作とされる「Yの悲劇」などにハマったものだ。しかしながら、さすがにいまそれらの本を横に起きながら読めるわけも無く、ちんぷんかんぷんで、ふむふむと雰囲気だけ読んでいた。まさにオマージュ、で、ふーむ、うーむ、という感じだった。そして、最後にネタを隠したまま終わる。ちょっと待ってー、だった。やれやれ。
神原一光「辻井伸行 奇跡の音色 恩師との12年間」
上の、ニッポン硬貨を新幹線で読み終えてしまい、品川駅の本屋で買った本。タイトル通り、全盲のピアニスト、辻井伸行に小学校から高校卒業まで12年間ピアノを教えたピアノ教師について描くと同時に、ヴァン・クライヴァーンコンクール優勝の軌跡をなぞってある。ドキュメンタリーを作った、NHKのディレクターが書いた本である。
一番興味深く読んだのは、ウィーンで30歳前まで世に出ようともがいていたピアノ教師の姿である。いつも思うが、オーケストラに所属しないピアニストで食べて行けるようになるのは大変難しいと思う。世界的ピアニストとなれは尚更だ。故・岩城晃一氏は、日本で本当に国際的ピアニストと言えるのは内田光子だけ、と著書で述べている。
構成立ては、うーむ、あまり面白いとは思わなかった。
ヤン・マーテル「パイの物語」(2)
イギリスで権威があるというブッカー賞を受賞した作品。作者はカナダ人の両親を持つスペインの作家だとか。主人公の少年は、インドからカナダへの移住の途上、船が沈没、やはり移送途上で逃げ出したベンガルトラとともに救命ボートで漂流するという、特殊な状況下でのサバイバルもの。アン・リー監督で映画化された。
世に漂流、遭難ものは多い。「十五少年漂流記」とか、私の場合は「無人島の三少年」という物語を、幼少の頃読んで強い印象を受けた。長じてからは、「おろしや国粋夢譚」「エンデュアランス号漂流」、最近では「無人島に生きる十六人」という実話もしくは実話に近いものを読んだ。
「パイの物語」はまったくの創作である。動物学的な観点から異常な状況を描いている。それなりに興味深く、読んでいると漂流少年の極限状況に自分を同化させてしまう。おそらくそこが評価されたのだろうが、それ以上は、何をどう読み取ればいいのか、ちょっと判断がつきかねる。日本人の扱いについては、不快である。
西加奈子「円卓」
祖父母、両親、三つ子の姉に囲まれ公団住宅で暮らす、小学3年生の琴子は孤独になりたい。関西の大家族と小学校を舞台に、笑いと温かさで綴るハートフルな物語。
興味があった西加奈子、どれを読もうかと思っていると、人が最新刊を貸してくれた。これ自体は200Pもない作品である。
こっこ、こと琴子は、いつもなにかしらイライラしている。クラスで眼帯をしている子や、複雑な家庭環境に憧れたりする。また、大家族というのも、昔は普通にあり、読んでいる大人を、そうやったなーと、思わせる。ある意味、我々世代の物語で、うまく編み込んでいて、染み込むようなストーリーを、笑いながら、楽しく読めた。
山本兼一「利休にたずねよ」
2008年下半期直木賞受賞作。天童荒太「悼む人」とダブル受賞である。
茶人で千利休は秀吉に重用されるが、晩年にその怒りを買い、切腹に追い込まれる。他の誰とも違う、絶対的な美的感覚の裏には、激しい情熱が感じられた。そのルーツは何なのか。
解説で、時の直木賞選考委員である宮部みゆきが、「決して手抜きをしない、働き者の作家」と評しているが、いや濃密な物語である。「破格の構成」でもって、千利休の一生を振り返っている。言葉はさりげなく現代語を混ぜているが、時代考証、茶道具、用語、作法、専門的でない表現方法なども、息つく暇もないほど凝縮された作品だ。
1本の芯を通していながら、エンタテインメントであることを忘れていない。直木賞作品には濃密なものが多く、描きたいことが端的には表されて無いことも多いが、またも、その濃密さを味わえた感慨がある。
宮下奈都「よろこびの歌」
著名音楽家の娘でありながら音楽科の受験に失敗し、私立の普通校に通う御木元玲。彼女を中心とした、高校生女子たちそれぞれの物語を綴る連作短編である。読売新聞2009年の3冊に選ばれている。
この本の作者紹介を見ると『「スコーレNo.4」が話題となる』とある。スコーレは昨年の年間3位。興味深く読んだ。
今回の話は、きれい過ぎる気がする。しかし、やはり設定、表現に宮下奈都らしい丁寧さが見える。時として突飛なのも特徴だと思う。
例えば、恩田陸「六番目の小夜子」「球形の季節」、近くは柚木麻子「終点のあの子」など、形は違うが、高校生ものには、独自の魅力がある作品が多い。いつも自分に照らして、こんなに多感じゃなかったな、女子はこうだったのかな、などと思うが。
まあ、宮下奈都の場合は、解説の末尾にある、四の五の言う前にとっとと読みましょう、というのが最も正しいのだろう。
北村薫「ニッポン硬貨の謎」
来日したエラリー・クイーン。当然のように事件が降りかかる!
2003年の作品で、文庫は2009年が初版となっている。全編が、エラリー・クイーンへのオマージュと言っていい。思い切って言えば、お遊びの一冊だ。
ミステリ好きには例外無く、私も一時期はクイーンの国名シリーズ、傑作とされる「Yの悲劇」などにハマったものだ。しかしながら、さすがにいまそれらの本を横に起きながら読めるわけも無く、ちんぷんかんぷんで、ふむふむと雰囲気だけ読んでいた。まさにオマージュ、で、ふーむ、うーむ、という感じだった。そして、最後にネタを隠したまま終わる。ちょっと待ってー、だった。やれやれ。
神原一光「辻井伸行 奇跡の音色 恩師との12年間」
上の、ニッポン硬貨を新幹線で読み終えてしまい、品川駅の本屋で買った本。タイトル通り、全盲のピアニスト、辻井伸行に小学校から高校卒業まで12年間ピアノを教えたピアノ教師について描くと同時に、ヴァン・クライヴァーンコンクール優勝の軌跡をなぞってある。ドキュメンタリーを作った、NHKのディレクターが書いた本である。
一番興味深く読んだのは、ウィーンで30歳前まで世に出ようともがいていたピアノ教師の姿である。いつも思うが、オーケストラに所属しないピアニストで食べて行けるようになるのは大変難しいと思う。世界的ピアニストとなれは尚更だ。故・岩城晃一氏は、日本で本当に国際的ピアニストと言えるのは内田光子だけ、と著書で述べている。
構成立ては、うーむ、あまり面白いとは思わなかった。
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